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「簡易水冷キット」カスタマイズで冷却強化と静音向上を実現せよイマドキのイタモノ(1/3 ページ)

最近の空冷は、ヒートシンクとファンの大型化、そしてダイレクトタッチヒートパイプで性能が向上している。しかし、水冷も“だいぶ”扱いが容易になってきた。

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組立不要でコンパクトな簡易水冷キットを試してみようぜ

簡易水冷キットでは比較的大型の「Water 2.0 Extreme」

 今回は、扱いやすく信頼性も高くなった簡易水冷キットのメリットやデメリット、そして、性能や選択のポイントをThermaltakeの「Water 2.0 Extreme」を題材に解説していこう。

 CPUやGPUなど発熱するパーツの冷却方法には、主に空冷と水冷がある。空冷は、パーツの発熱する部分、多くの場合はヒートシンクに風を当てることで冷却する方法で、ヒートシンク、あるいは、ヒートパイプを通じて熱を移動する。水冷は、発熱する部分から熱を金属などの熱伝導体に移動するまでは空冷と同じだが、そこから熱をPCの外部に移動する手段として液体を用い、最終的にはヒートシンクに相当するラジエターで熱交換を行う。

 PCで水冷キットが求められるきっかけとなったのがPentium 4やPentium Dの登場だ。CPUの消費電力と発熱が増大し、当時の空冷クーラーユニットの多くは、ファンの回転数を引き上げた。このことが、PCから発生する騒音が問題になり、自作PCユーザーは水冷に注目するようになった。ただし、当時の自作PC向け水冷キットは、“本格的”な製品が大半で、組立済みの簡易水冷キットは少数だった。“

 “本格的”と“簡易”の大きな違いは、組み立ての手間だ。本格的な水冷キットは、冷却液やチューブはもちろん、CPUヒートスプレッダに接触する「ヘッド」、冷却液を循環する「ポンプ」、冷却液を貯める「タンク」、熱交換を行う「ラジエータ」で構成する。これらを個別、あるいは、セットで購入し、組み立てて完成するが、チューブやジョイントの太さなどの組み合わせが複雑なことや、液体を扱うために液漏れや冷却液の蒸発に対する補充などメンテナンスも必要であったことが水冷導入のハードルを上げていた。

 こうした大掛かりな水冷キットに対し、簡易水冷キットは、冷却液を詰めた完成状態で販売している。現在の製品では、長期使用保証やメンテナンスフリーを訴求する製品も多い。簡易水冷キットはヘッドとポンプ、タンクなどが一体化しており、これ以外はラジエータだけという2つのパーツで構成するため、本格的な水冷キットと比べて設置サイズは少なくて済み、PCケース内に組み込む手間も少ない。コンパクトなPCケースでもラジエータの設置スペースさえ確保できれば組み込めるメリットもある(このあたりは、イマイタレビューでもShuttleのキューブベアボーンキットに水冷キットを組み込んでいる)。

 水冷化のメリットに静音性能も挙げられる。もちろん単体で比較すれば、ハイエンド向けの空冷クーラーユニットが静かな場合も多い。ただ、簡易水冷キットは一般的にPCケースのリアファンをラジエータの冷却に共用することから、ケース内のファンを1基削減できる。ただ、ポンプや水流という副次的なノイズが発生するため、まったくの無音にすることはできない。

冷却性能は簡易水冷キットで最高レベル「Water 2.0 Extreme」

 今回の簡易水冷キット検証で用いるWater 2.0 Extreme(W2 Extreme)は、最近の簡易水冷キットの大半がそうであるように、AsetekのOEMとみられる。Asetek製簡易水冷キットの特徴は、ポンプ一体型の丸いヘッドと、ツメを用いたヘッドの固定方法だ。ヘッド面は銅製で購入した状態ですでにグリスを塗布している。厚みはあるが、ヘッド自体はリテールのクーラーユニットより径が小さく、取り付けるマザーボードの周辺部材との干渉はほとんど気にしなくて済む。一方で、発熱が多くヒートシンクを取り付けるモデルも多いVRMなどには、空冷で当たっていたエアフローがなくなってしまうので注意したい。

 W2 Extremeのラジエータは12センチ径ファン2基分の面積を持つ。水冷キットにおいて、ラジエータはヒートシンクの代わりになり、目の細かいフィンにエアフローを当てることで冷却液の熱交換を行う。ラジエータのサイズは、冷却性能を左右する決定的な要素だ。Water 2.0シリーズのラインアップには、下位モデルとして「Performer」「Pro」がある。こちらの2製品はラジエータが12センチ径ファン1基分に過ぎない。また、PerformerとProではラジエータの厚みが異なり、上位モデルのProが厚い。ラジエータのサイズが水冷キットのグレードを分けているというのがよく分かる。

 なお、ラジエータの厚みは、PCケースやマザーボードとのフィッティングとトレードオフの関係にある。空冷でも、巨大なヒートシンクを持つ製品がシステムメモリやグラフィックスカードと干渉するのと同じだ。12センチ径1基分のラジエータならそこまで問題にならないが、W2 Extremeのように12センチ径2基分もあると、まずPCケース側に12センチ径ファン2基分のファン取り付けスペースが必要となる。

右がWater 2.0 Extremeで、12センチ径ファン2基分のラジエータ面積を有する。左は12センチ径ファン1基分の面積を持つラジエータで、同じ厚みで計算しても体積で2倍の差があることになる(写真=左)。W2 Extremeは、12センチ径ファン2基分で簡易水冷キットでは最厚クラスとなる厚さ38.3ミリのラジエータを装備する。手前は厚さ27ミリのラジエータだ(写真=右)

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