「簡易水冷キット」カスタマイズで冷却強化と静音向上を実現せよ:イマドキのイタモノ(3/3 ページ)
最近の空冷は、ヒートシンクとファンの大型化、そしてダイレクトタッチヒートパイプで性能が向上している。しかし、水冷も“だいぶ”扱いが容易になってきた。
実をいうと静かなのは空冷だったりする
ファン | ラジエータ | ファン制御 | 動作音(アイドル時) | 動作音(高負荷時) |
---|---|---|---|---|
1基 | 1面 | 標準 | 36.3デシベル | 47.5デシベル |
2基(標準) | 2面(Silent) | 標準 | 39.5デシベル | 40.0デシベル |
2基(標準) | 2面(Extreme) | 標準 | 51.1デシベル | 51.9デシベル |
1基 | リテールクーラーユニット | 標準 | 33.6デシベル | 41.4デシベル |
動作音の検証において、アイドル時ではリテールクーラーユニットが最も静かで、RTS2011LCが36.3デシベルと続く。RTS2011LCのアイドル時に関しては、少し離れたところであれば気にならないくらいのレベルだ。一方、高負荷時で最も静かだったのはW2 ExtremeのSilent設定だった。結果は40デシベルで、リテールクーラーユニットの高負荷時よりわずかに静かだ。アイドル時で好成績だったRTS2011LCは、高負荷時では47.5デシベルと、あきらかに“うるさい”レベルになってしまった。もっとも、W2 ExtremeのExtreme設定も50デシベルを超えている。
W2 Extremeで用意する2つのプリセットは、どちらもアイドル時と高負荷時で動作音がほとんど変化しなかった。USBとソフトウェアで制御できるという点からすると、もう少し違いがあってもいい。また、W2 ExtremeのPWMファンがやや高回転よりであることも、発生する音量に影響している。ただ、W2 Extremeがオーバークロック向けモデルなので、高回転よりの設定であるのはやむを得ない。なお、専用ツールを導入する前のW2 Extremeは、Extreme設定と同じ状況になっている。
ファンの換装で思いっきり静かに
ここまでの検証作業で、W2 ExtremeをCore i7-3770Kの定格設定で運用する場合、オーバースペックともいえる冷却性能があることが分かった。CPUを60度まで冷やせるのであれば、ラジエータに組み込んだファンの回転数を抑えて静かにできるのではないだろうか。ここでは、W2 Extremeをベースに、水冷キットの静音化を試みた。
W2 Extreme単体でより静かにできる手段にはいくつかの方法が考えられる。第1は、ラジエータに組み込んだ2つのファンをマザーボード上の「CPUFAN」「SYSFAN」に接続し、マザーボード側にPWM制御させる方法だ。第2はファンの交換だ。そこで、サイズの「Gentle Typhoon」(1850rpmモデル)にファンコントローラを加え、ファンの回転数を制御する。検証では、500rpmと800rpmに設定して、それぞれの騒音を測定する。
ファン | ラジエータ | ファン制御 | CPU温度(アイドル時) | CPU温度(高負荷時) | 動作音(アイドル時) | 動作音(高負荷時) |
---|---|---|---|---|---|---|
2基(標準) | 2面 | CPUFAN+SYS2FAN | 28度 | 60度 | 41.3デシベル | 45.6デシベル |
2基(Gentle Typhoon) | 2面 | ファンコン500rpm | 30度 | 64度 | 34.3デシベル | 34.5デシベル |
2基(Gentle Typhoon) | 2面 | ファンコン800rpm | 28度 | 62度 | 34.4デシベル | 35.0デシベル |
マザーボードのPWMにファン回転数の制御を委ねる方法は、CPU温度は変わらないのに、ツールのSilent設定よりも動作音が大きくなってしまった。ファンをGentle Typhoonに換装して、回転数を500rpmに調節した場合は、動作音が34デシベル台まで下がって、静音化では大きな効果が見られたものの、CPU温度はわずかながら上昇した。回転数を800rpmに調節した場合は、動作音はわずかに上昇したものの、CPU温度は標準状態に近いところまで冷やせた。この結果を見るとGentle Typhoonでは、1000rpm前後に落としても標準状態と同じ冷却性能が得られ、一方で静音性能は高めることができそうだ。
簡易水冷キット導入のハードルは下がっている
簡易水冷キットの冷却性能は十分に高い。そして、カスタム次第では、ラジエータの大きなモデルほど静音性能を改善できる。
ただ、簡易水冷キットの実売価格は、12センチ径ファン×1基分のサイズで5000円台から、2基分のサイズともなると1万円超と、空冷のCPUクーラーユニットでいうところのミドルレンジからハイエンドを超える価格帯に相当する。装着の容易さ、冷却性能、静音性能におけるメリットとコストのトレードオフを把握して検討する必要はあるだろう。
価格面を除けば、簡易水冷キット導入のハードルは下がってきている。フィッティングでいえば、12センチ径ファン×2基分のスペースを天板に用意したケースが増えている。特に、Lian-Liの最新PCケースでは、12センチ径ファン×1基分のサイズで簡易水冷キットラジエータを外付けできる構造を採用している。「ちょっと面倒で何かあったら怖い」と敬遠してきたユーザーにも、簡易水冷キットのアップデートで“気軽に”遊んでほしい。
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