とあるiPhoneアクセサリが開発中止に追い込まれた事情:牧ノブユキの「ワークアラウンド」(2/2 ページ)
資金調達に成功しながら、開発中止となったCerevoの巻き尺付きiPhoneケース。この一件は、国内サードパーティ各社が悩んでいる「ある問題」と共通項がみられる。
「早く量産品になりた〜い」
Lightningコネクタにまつわる2012年暮れからの状況を振り返ってみたが、2013年に入ってからは国内大手サードパーティからも互換品のケーブルが発売されるなど、需要に対してある程度の供給はできるようになりつつある(今やAmazonベーシックでもMFi互換品が発売されているくらいである)。
互換品はコネクタを覆う樹脂がどれも厚みがあり、保護ケースを取り付けた状態では差し込みにくい場合があるといったうわさも聞くが、この辺りのサイズがApple提供のサンプルコネクタの形状に依存するのか、そうでないのかは不明だ。
ただし、シンプルな「Lightning - USBケーブル」の供給は改善されたとはいえ、Lightningコネクタに対応した周辺機器がかつてのDockコネクタ対応機器のように、よりどりみどりという状況には至っていない。今回の件をきっかけに、iPhoneのコネクタを介してデータをやりとりする周辺機器の開発に各サードパーティが及び腰になっているのは、紛れもない事実である。
試作品はきちんと動いているのに認証待ちで量産できず、しかもそうこうしているうちにモデルチェンジが発生するかもしれない、というリスキーな条件下で、原価のかかる新規ハードウェアを率先して作る酔狂なメーカーはまずないからだ(2012年暮れにMFiの新しいライセンス体系が発表され、いくぶん改善されたとのうわさもあるが、現時点で市場に反映されているようにはみえない)。今回のCerevoの巻き尺付きケースは、これに近いものがあったのではないかと推測できる。
「それなら今回の巻き尺付きケースだけMFiを通さず、模倣品のDockコネクタのまま出せばよかったのではないか。もともとiPhone 4/4S向けとして出資を募ったわけだし」という指摘があるかもしれないが、メーカーとしてMFiを通過していない模倣コネクタを使ったという事実が残ると、将来的に別のビジネスを展開しようとした際に足かせになるのは否めないし、今回の製品をモデルチェンジしてLightningコネクタ版を出すこともかなわなくなってしまう。
ここまでの仮説が正しければ、Dock版にしてもLightning版にしてもそれぞれリスクが大きく、こうした状況を総合的に判断しての中止だったと考えれば、確かに合点もいく(あくまで推測だが)。
ただ、今回のCerevoの巻き尺付きケースはクラウドファンディングによって開発プロセスが公開されていたが故にたまたま公になっただけであって、MFi認証および量産待ちのまま塩漬けになっているLightning対応の周辺機器は、あちこちのサードパーティで山のように存在すると考えられる。
図面の段階で終わったか、それとも試作品まで作られていたか、その進展はメーカーによってさまざまだろうが、日の目を見ないまま現在も妖怪人間のごとく闇でうごめいているこれら周辺機器のことを思うと、Cerevoの巻き尺付きケースは支援者に末路を見届けてもらえただけ幸せだったのではないか、そう思えてならないのである。
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