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過激なWindows 10アップグレード推進策でMicrosoftが失うもの鈴木淳也の「Windowsフロントライン」(2/2 ページ)

タダだからといって、ユーザーが望まない新OSへの移行を強引に進めてもいいのか。MicrosoftのWindows 10無料アップグレード推進策は、同社の信頼性を損ねる危険もはらんでいる。

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全ての旧OSユーザーがWindows 10を望むわけではない

 誤解のないように断っておくと、筆者は基本的にWindows 7/8.1ユーザーへWindows 10の導入をおすすめしている(ハードウェア、ソフトウェアの互換性などで不都合がない限りは……だが)。

 幸い、筆者は業務に使用するPCであっても特定のOSバージョンに依存したアプリケーションやサービスは利用していないため、移行のハードルが低いという理由もある。また、筆者はWindows 10の正式提供が行われる以前から開発プレビュー版の「Windows 10 Insider Preview」を不具合の多い「Fast Ring」設定で利用し続けているため、一般的なユーザーと感覚のズレがあるかもしれない。

 しかし、全てのユーザーがそうした最新のOS環境を望まないのは当然だ。問題なく動作しているPCならば、あえてリスクを冒してアップグレードしたくないというユーザーの選択も理解できる。あるいは、アップグレードしたくてもWindows 10では動作しなくなってしまうハードウェアやソフトウェアを抱えているケースもあるだろう。

 実際、筆者の実家にあるPCのうちの1台は、Windows Vistaのままで動作させている。新しいWindows OSで操作体系が大きく変化したアプリケーションがあり、親には新しい環境での利用が難しいと判断したこと、そして新OSでの動作が望めないアプリケーションが幾つかインストールされていることが理由に挙げられる。

Windows 10
Windows 10はさまざまな新機能が追加され、使い勝手の改善も図られているが、使い慣れた旧OSで不便はなく、アップグレードの必要性を感じないというユーザーも少なくないだろう

Microsoftのアップグレード手法に対する疑問

 このようにさまざまなユーザーが利用し、それぞれの思惑がある中、全てを一律に巻き取るMicrosoftの一連のアップグレード手法は疑問に思う部分も多い。

 GWXアプリの最初の狙いは「幅広いWindows 7/8.1ユーザーにWindows 10へ無料で移行できることを告知し、新しい環境へのアップグレードを促すこと」だったが、いつの間にか「ユーザーが拒否しにくくなるような仕様変更を重ね、いかにWindows 10へと誘導するか」という、悪く言えば、だまし討ち的な手法へと変化してしまったのは残念だ。

 もちろん、Windows 10は最新OSとして導入メリットもあり、それを必死にすすめるMicrosoft側の事情も理解できるのだが(過去のWindows XPサポート問題で苦労した経緯を思い出してほしい)、Windowsユーザーは旧バージョンを含めてMicrosoftの大事な顧客であり、その心象を損ねてまで一連の施策を強引に進めるのは大きなマイナスではないだろうか。

 また、GWXアプリのアップグレード通知を受け取るのが嫌で「Windows Updateの自動アップデートを無効化した」というケースも少なからず報告されており、Windows 10のアップグレードで本来期待していた「セキュリティ強化」の考えが裏目に出てしまう可能性すらある。

 Microsoftがこれ以上悪い方向にGWXアプリを強化することは考えにくいが、同社はユーザーとの関係についてあらためて考えてみてほしいところだ。


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