「iPhone 7」日本特別モデルは必然の進化:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)
マリオにポケモン、FeliCa、Suicaと日本向けのアップデートが目立った「iPhone 7」と「Apple Watch Series 2」の発表会。この進化の意味するところは?
新しいiPhoneの始まり
こうした例を含め、さらに製品全体の整え方をあらためて俯瞰(ふかん)して感じるのは、「“iPhoneが変えた10年”に合わせて再調整された新しいiPhoneの始まり」ということだ。
筆者はiPhone 7発表前のタイミングで、「iOS 10はiPhone自身が変えてしまった世の中に合わせ、基本ソフトであるiOSを再設計、再調整したものだ」というインプレッションを書いたことがある。
この再調整の範囲はmacOSにも及んでいる。iPhoneがコンピューティングの在り方を変えたがゆえに、あらゆるパーソナルなコンピュータの在り方に微調整が必要な時期になっているということなのかもしれない。
例えば、iOS 10の写真管理では顔識別による人物写真の管理が用意されている。これまでもパソコン側の顔識別機能やクラウド側の顔識別機能と連動させることで管理する機能は一般的だったが、iOS 10はデバイス単体で顔識別を行うようになった。
こうした写真の自動分類は撮影場所でも可能だ。Siriで「ビーチ」と言えば砂浜が写った写真を、バースデーケーキと言えばそれらしき写真を探し出す。「山」と言えば山の風景が出てくる。これまで思い出せなかった写真まで見つける再発見をもたらす機能だ。
しかし、見方を変えれば携帯電話のカメラが進歩し、補助的な使い方から思い出を記録する、ライフスタイルを演出する重要なツールになったうえ、ユーザーが以前よりもカジュアルに大量の写真を撮影するようになったことで、デバイスそのものに写真の自動分類や顔識別機能を求めるようになった……ともいえるだろう。
写真の分類だけならば、「たまたま今回搭載された」といえるだろうが、上記のような視点でiOS 10を俯瞰すると、iPhone自身がもたらした時代の変化に合わせ、iOSの設計や思想が古くなりつつあった部分を再調整、再設計して作り直したという印象を持った。
メッセージアプリの改良も、さまざまなメッセージ交換ソフトが持つ機能を取り入れただけにも見える一方、スマートフォンの普及によってアニメーションスタンプなど、リッチなメッセージ交換を誰もが使うようになり、結果的にiOS標準のメッセージに取り込まれたともいえる。
それは必然の進化か
スマートフォンの発展はiPhoneがリードしてきたが、Appleが必ずしも全てのジャンルを先導してきたわけではない。いろいろなアプリ開発者や周辺デバイスの発明者のアイデアなどが、繰り返し次のiPhoneが進む方向を示し、それに応じてきたことで今のiPhoneがある。
全てが計画的ではないぶん、世の中の変化、ユーザーの社会における行動の変化への追従、あるいは社会インフラとの密接な連携などが、2017年で10年を迎えるiPhoneにも求められるようになったのだと思う。
このようにして見ると、かつて世界中で1つのモデルしか用意されていなかったiPhoneが、日本市場向けの特別なモデルを提供したり、Apple Payに限らず社会インフラと密接につながる製品やサービス、ソフトウェアの枠組みを目指すというのは必然だろう。
そこにはジョブズ時代のような革新者としての魅力は薄いかもしれないが、一方で完成度を高めるという意味では必要なことでもある。Apple自身が「熟成を重ねた」結果が、今のスマートフォン時代であるのなら、徹底して完成度を高め、今の時代に合わせて再調整を図った新しいiPhoneとiOSは、最も買い時といえるのかもしれない。
もちろん、従来の使い方の範囲を逸脱するほどの大手術が行われているという意味ではない。しかし、どんなに新しい先進的な提案も、時代が変化し、ユーザーを取り巻く環境が変われば、いつしか古さを感じるようになるものだ。Appleの場合、自身が生み出した商品や技術によって世の中を変えたのだが、それが結果的に自らの提案を過去のものにしている。
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