「Touch Bar」は予想以上に使いやすい 新MacBook Proレビュー:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)
賛否両論の「Touch Bar」は実際に使ってみたら予想以上に使いやすかった? 新MacBook ProのTouch Bar搭載モデルをレビューする。
13インチモデル、15インチモデル――どちらを選ぶべきか
最後に13インチモデル、15インチモデルの双方を使ってみての総合的なインプレッションを簡潔にまとめたい。
両モデルとも液晶ディスプレイのサイズや解像度といった基本スペックは、従来のモデルと変わっていない。しかし実際には、かなり見栄えがよくなっている。P3に対応した広色域であることもそうだが、単純に鮮やかなディスプレイを装備するだけでなく、カラーマッチングや工場出荷時の調整などをしっかり行い、正しい色再現+広色域表示を行っているからだろう。Apple自身の製品紹介ページでは、広色域表示がきちんと体感できるような仕掛けになっているので、店頭などでいろいろ見てみるといい。
また、パッと見て色ムラが少なくなっていることを感じるが、液晶の開口率が高まっているのか、画面表示の質感も初代のRetinaディスプレイ搭載モデルよりもよくなった。MacBookの12インチディスプレイも出た当初は本当に美しかったが、新しいMacBook Proはそれを超える品質だ。恐らくコントラストも高くなっており、黒沈みは同等だが、高輝度部が伸びてダイナミックレンジが広がった。
15インチMacBook Proの新旧比較。左が旧モデル、右が新モデル。ディスプレイの画面サイズや解像度は変わっていないが、狭額縁になり、色域やコントラストの向上が感じられる。トラックパッドも大きくなった
少しばかり驚いたのはスピーカーの音質だ。13インチモデルでも旧MacBook Proの15インチモデルより低域側のレンジが広い。音楽もそこそこ聴けるが、レンジが広がったことで高域寄りのシャカシャカとした音ではなくなり、ちょっとしたWeb上のショートムービーを楽しんだり、動画でニュースをチェックしたりする際などにも肉声が落ち着いて聞こえ、心地よく感じられる。
音楽表現としての高音質というよりも、実用的な使い方の中で心地よさを損なわない音質と言えばいいだろうか。13インチでも低域がないなりに上手にまとめているが、15インチになると低域のレンジがさらに広がる。
日本では「MacBook Air」の13インチモデルとほぼ同じ重さでコンパクトな13インチモデルが人気となるだろうが、15インチモデルが存外に軽量に感じた。テスト機の実測値では1.81キロで、画面の大きさとともにパフォーマンスの高さも考慮すると、(あえてコンパクトさへの要求と予算を無視するなら)ベストなMacBook Proは15インチモデルだろう。特に買い換えサイクルが長いユーザーが、どちらのサイズか迷っているならば15インチモデルをおすすめする。
旧世代の初代機を使ってきたが、4年半も使い続けてこられたのは、当時初めてのRetinaディスプレイ搭載Macだったことに加えて、クアッドコアのプロセッサ、外部GPU、当時最大容量の内蔵メモリ、フラッシュストレージを選択したからだと思う。実際に使い比べてみても、動画編集や写真編集、いや普段の作業の中でもそれらの恩恵を感じる場面は少なくない。
筆者の場合、常に動きまわりながら仕事をする必要があるため、13インチモデルを選択する可能性が高いが、持ち歩きの頻度がもう少し低かったり、車での移動が多いのであれば15インチモデルを選び、プロセッサはそのまま、フラッシュストレージとGPUをアップグレードする。
今はIntel Coreプロセッサの世代交代期で、通常電圧版のプロセッサは第6世代、低電圧版以下のプロセッサは第7世代に移行している。しかし、この間の差はさほど大きくないので、パフォーマンス面ではあまり気にする必要はない。ただし、第7世代Coreプロセッサは、メインメモリとして省電力のLPDDR4が利用可能となる。
Appleの幹部は、MacBook Proの最大メモリ容量が16GBにとどまったことに関して、メモリの消費電力が大きくなりすぎることへの懸念を話している。さらに新型MacBook Proに搭載されるバッテリーが先代モデルよりも容量の小さなものに置き換わっている(が、バッテリー駆動時間が延びているのはシステムトータルでの消費電力を抑えているため)ことと合わせて考えると、次のモデルでは最大メモリ容量の増加も見込める。
筆者の用途では16GBでも十分だが、32GBメモリがどうしても欲しいというクリエイターなどデザインツールを操るユーザーは、あと1世代を待ってもいいのかもしれない。
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