第13世代Core/Intel Arc/大規模投資でリーダーシップへの復権を目指すインテルの取り組みを鈴木国正社長に聞く:IT産業のトレンドリーダーに聞く!(インテル 前編)(2/2 ページ)
コロナ禍以降も、経済環境や社会情勢が激変する昨今。さらに急激な円安が進む中でIT企業はどのような手を打っていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載の第3回はインテルだ。
IDM 2.0からIntel Arcまで新たな一歩に取り組んだ
―― IDM(Integrated Device Manufacturer)2.0では、社内ファウンドリー事業モデルを導入するなど、ここでも進化が見られています。
鈴木氏 IDM 2.0は製造規模と長期的な成長を回復させる戦略であり、2022年はその戦略が次の段階に進みました。第1段階は、これまでお話したプロセス技術の新たなロードマップの推進と、生産能力の大幅な拡大に向けた投資です。
IntelのIDMモデルは、IDM 2.0へと進化した。従来型のIDMを発展させながらも、外部ファウンドリーを活用したIntel製品の半導体生産も強化し、Intel自身がファウンドリーとなる他社製品の半導体生産にも乗り出している
Intelはこの4年間に5つのプロセスノードを生み出し、同時に産業界の旺盛な半導体需要に応えるために、必要な生産能力への投資を継続することで、世界全体のサプライチェーンに必要なバランスをもたらします。その上で、2022年にIDM 2.0の第2段階として打ち出したのが、社外の顧客企業とIntelの製品ラインの両方に適用する「社内ファウンドリー事業モデル」です。
これは企業としての考え方と、運用の仕組みを大きく進化させるものになります。また、この取り組みを円滑に進めていくために「IDM 2.0アクセラレーション・オフィス」を設立しました。
基本姿勢は、Intel社内の組織であっても当該部門から見れば顧客の1つに過ぎないということです。Intelのクライアントコンピューティングチームにとっては、調達価格などは他社と交渉するのと同じになりますから、そこでIntelを選択するだけでなく、他社のテクノロジーを選択するといったことが発生する可能性があります。これまでのIntelの概念を覆すビジネスモデルがスタートすることになります。
パットは最近になって、「システムファウンドリー」という言葉を使い始めています。システムファウンドリーは、ウェハ製造とパッケージング技術、ソフトウェア、チップレットのエコシステムを組み合わせたもので、チップレット方式によって、さまざまなシリコンがパッケージ上でシステムのようにつながる世界がやってきます。
Intelは蓄積したノウハウを活用し、パッケージの上にシステムを組み上げることができますし、新たな仕組みを使って最先端のIntel製シリコンの他、さまざまなファウンドリーが製造したシリコンを活用できます。2023年は、システムファウンドリーの詳細や目指す方向性がより詳細に語られることになるかもしれません。
―― ユーザーの立場から見ると、2022年の最大のトピックスは、やはり第13世代Coreプロセッサの登場と、久々のディスクリートGPUとなるArcの発表ということになりそうです。
鈴木氏 第13世代Coreプロセッサは、Intelが掲げている「リーダーシップ製品の提供」という戦略を具体化したものになります。振り返れば、2021年10月に発表した第12世代Coreプロセッサでは、処理性能を重視する「パフォーマンスコア(Pコア)」と省電力性を重視する「高効率コア(Eコア)」というハイブリッド・アーキテクチャを初めて採用し、世界最高レベルのゲーム向けプロセッサであることを示しました。
同時にコンテンツ制作での大きな飛躍を実現したこと、最良のオーバークロック体験ができるようにした点がポイントです。2022年9月に発表した第13世代Coreプロセッサでは、コアの高速化と驚異的なゲームプレイ、ストリーミング、録画の同時実行による世界最高峰のゲーム体験を提供しています。
さらにコア数やスレッド数、キャッシュ容量の拡大により、ユーザーのクリエイティブな作業フローを、途切れることなく継続することによって実現するコンテンツ制作時のパフォーマンスの継続的な向上を実現しました。
そして、eスポーツのプロからビギナーまであらゆるユーザーに最適な体験が提供することができる比類のないオーバークロック体験の3点を特徴としています。これらは第12世代Coreプロセッサで打ち出していた特徴を、さらに進化させたといえます。
例えば、1つめの特徴である「世界最高峰のゲーム体験」では、シングルスレッドでは前世代から最大15%のパフォーマンス向上を実現し、高いフレームレートで人気タイトルのゲームを思いのままに楽しむことができます。
2つめの「コンテンツ制作時のパフォーマンスの継続的な向上」においては、より多くのEコアを搭載するとともに、マルチスレッドのパフォーマンスを最大41%向上させ、複数の高負荷なワークロードにも対応できるため、クリエイティブな作業もよどみなく遂行できるようにしています。
そして、3つめの「比類のないオーバークロック体験」では、Pコア/Eコア/DDR5メモリ全体で、オーバークロック時のスピードを向上しています。また、ワンクリックで簡単にオーバークロックを行える「インテル スピード・オプティマイザー」を使えば、ユーザーは最小限の労力でオーバークロックを体験できるようになります。
一方でGPUのArc製品は、2022年3月にノートPC向け、9月にはデスクトップPC向けを発表しました。
かつて、Intel 740(1998年にリリース)という製品があったため、第2世代と表現する人もいますが、Intelでは今回のArcを最初のディスクリートGPUと位置づけています。特に、デスクトップPC向けのIntel Arc A770 GPUは、圧倒的なコンテンツ制作性能と、1440p解像度のゲーミングパフォーマンスを提供することができます。競合製品と比べてピーク性能は65%向上し、レイトレーシングの性能も強化しています。AIを使ったアップスケーリング・テクノロジー(Xe Super Sampling)も採用しています。非常に評判が高く、IntelのGPUに対する期待が高いことを感じます。
2023年もArc製品の機能強化や、ラインアップの広がりを期待してほしいですね。
※後編に続く
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