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2024年のWindows、AI時代を迎えた2つの方向性 “Windows 12”はハードウェアで進化するWindowsフロントライン(3/3 ページ)

Windows 10 EOSが迫ってくる中で、Windows 11の次期バージョンはどうなるのだろうか。“Windows 12”となるのか、Copilotがどのように絡んでくるのか。考察してみた。

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「Windows 12」はハードウェアで進化する

 機能強化の方向性の2つめだが、“AIに対応”したハードウェアの性能次第で提供される機能が変化するというものだ。より具体的には、PCが搭載するGPU性能や「NPU」の有無により、“Windows 12”の“ふるまい”が変化する。

 高性能なPCであれば、Windowsで提供されるハードウェア・アクセラレーションを存分に活用できる。Windows 11が導入されたときは、対応するTPMのバージョンやCPUの世代によって利用可能なPCの“足切り”が行われていたが、Windows 12の世代では「性能が高いPCであれば、より豊富な機能を利用できる」という逆向きの“ゲタを履かせる”方向性となる。

Ryzen AIとしてNPUが搭載されたRyzen 8040シリーズ
Ryzen AIとしてNPUが搭載されたRyzen 8040シリーズ

 実際にどういった機能拡張が行われるのだろうか。

 ボーデン氏が関係者の話としてサンプルに出しているのは、動画再生やゲームプレイにおいて、自動的にアップスケーリングが行われる「Super Resolution」のようなものだ。また、ライブでのキャプショニングや通訳機能など、前述のCopilotとは違った形での機能拡張を考えているようだ。

 前者はアクセラレーターに近いものだが、学習済みのAIモデルを最適化されたハードウェア上で実行することで、より低消費電力で効率的に実行が可能となる。後者のキャプショニングや通訳機能は、クラウド上に存在する巨大なLLMを通した方がより正確な回答を得られるとも考えられるが、レスポンス時間やネットワーク通信の必要性などを考えれば、よりカジュアルで即応性が求められる用途ではローカルで実行できる仕組みの方が望ましいケースも多い。

 このあたりは、スマートフォンで同種の機能を利用して実感している人も多いだろう。

IntelのCore Ultraでは、CPUコア/GPUコアに加えて、独立したNPUを搭載している
IntelのCore Ultraでは、CPUコア/GPUコアに加えて、独立したNPUを搭載している

 とはいえ、現状で高性能なGPUや、NPUのような最適化された専用のハードウェアを搭載しているPCは決して多くない。PC USERで笠原一輝氏が2023年のプロセッサ事情をまとめているが、IntelプロセッサでもNPU(かつてVPUと呼ばれた「Movidius」の名称を変更してプロセッサのパッケージに統合したもの)を標準装備したCore Ultraシリーズが市場に本格投入されるのは2024年以降であり、スマートフォンで先行する形でNPU強化を進めてきたQualcommが2024年に製品を投入する「Snapdragon X Elite」など、ごく限られているのが現状だ。

 メインストリームのPC製品群でGPUが大幅強化され、NPUが標準採用となるのはまだ数年先の話であり、“足切り”よりも「魅力的な機能群を見せてユーザーを次の世代のハードウェアに誘導していく」ことの方が重要だろう。

 NPUで強化される機能もまだ限られており、ソフトウェア方面での整備も必要となる。ハードとソフトのどちらが先に拡充されるか、鶏と卵論争のようなものだが、両方が順次拡充される環境を整備するのが“Windows 12”の役目だといえる。

Qualcomm「Snapdragon X Elite」の概要
Qualcomm「Snapdragon X Elite」の概要
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