HPの成長エンジン それは「AI PC」と「ハイブリッドワーク」:HP Amplify Partner Conference 2024(1/2 ページ)
HPが、世界中のパートナー企業を集めたリアルイベント「HP Amplify Partner Conference 2024」を開催している。イベントの最初に行われる基調講演では、HPの幹部や主要なパートナー企業のCEOが登壇し、将来の展望を語った。
HPは3月6日から7日まで(米国太平洋時間)、米ネバダ州ラスベガスにおいてパートナー企業向けの年次イベント「HP Amplify Partner Conference 2024」を開催している。
初日となる3月6日に行われた基調講演ではエンリケ・ロレスCEOが登壇し、HPの戦略やビジョンを説明した。また、同社の半導体サプライヤーでもあるIntelのパット・ゲルシンガーCEOとQualcommのクリスチアーノ・アモンCEOなどもゲストとして参加し、それぞれ「AI PC」に関するビジョンなどを説明した。
「AI PC」と「ハイブリッドワーク」が成長の後押しに
HP Amplify Partner Conferenceは、HPに半導体を供給するサプライヤー(AMD、Intel、NVIDIA、Qualcommなど)、ソフトウェアを提供するパートナー(Microsoft、Googleなど)、同社製品を販売する販売パートナーなど、同社に関わるさまざまなパートナーが参加するイベントだ。いわゆるカンファレンスの基調講演に相当する「ジェネラルセッション」も用意されているが、基本的にはHPの担当者とパートナーが同じ場所に集い、親睦を深め、より具体的な戦略を説明する場として機能している。
3月6日午前に開催されたジェネラルセッションには、ロレスCEOを始めとする同社幹部が登壇し、2024年のHPの販売戦略などが説明された。
ロレスCEOは「HPにとって、HP Amplify Partner Conferenceは最も重要なイベントの1つだ。このイベントは単にセールスカンファレンスというだけでなく、皆さんがここに集うことに大きな意味がある」と述べ、サプライヤーや販売パートナーなどが集まる場の重要性を強調した。
同氏は加えて「HPにとって、2024年は非常に重要な年になる。その要因は2つあり、1つは『AI PC』という大きなトレンドがPCに来ることであり、もう1つが『ハイブリッドワーク』の進展だ」と述べ、AI PCとハイブリッドワークというトレンドに技術の進化が相まって、HPに次なる成長へのチャンスが訪れていること指摘した。
市場別に見ると、特にインドやインドネシアなどの「成長市場」は大きく伸びると見ているようだ。成長市場でしっかりと市場シェアを取っていくことで、HPの「非常に大きな成長」につなげていくという考え方だ。同社はTAM(Total Addressable Market:リーチできる潜在市場規模)は7250億ドル(約108兆円)としている。ロレスCEOは、「このTAMを達成するには、パートナーの協力が必要だ」と訴える。
販売パートナーへの取り組みも強化
ロレスCEOに続いて登壇したデーブ・マククワリーCCO(最高コマーシャル責任者)は、販売チャンネル(パートナー)向けの取り組みを説明した。
そもそも、本イベントの名前の一部「Amplify Partner」は、「HP Amplify Partner Program」のことを指す。これは同社のグローバル販売パートナープログラムで、普段は専用Webサイト「HP Partner Portal」を通して製品の発注を行ったり、価格情報や製品のロードマップ情報を受け取っている。
ある意味で、今回のイベントはAmplify Partner Programの“リアル版”なのだ。
マククワリーCCOは、HPの今後の成長において、国や自治体といった「パブリックセクター」、「中小企業(SMB)」、そして「サブスクリプションとサービス」が成長における3つの柱だと語る。
同氏によると、パブリックセクターは現時点において急成長している分野だという。例えば米国連邦政府なら、ICT支出が1年間で40%も増えたそうだ。日本でも、ICT政策を取り仕切る「デジタル庁」が設立され、マイナンバーカード(個人番号カード)の情報をスマートフォンに搭載できるようにしたり、健康保険証として運用できるようにしたりという政策が進行している。
こうした状況は日米だけでなく、世界中の国や自治体でも見られる。国や自治体のIT化が、この分野の急成長につながっている。
パブリックセクターと並んで、中小企業への販売も急成長している。企業から独立してフリーランスになる人やスタートアップ企業が急速に増えているが、それに伴いPC本体はもちろん、プリンタを始めとする周辺機器の需要が伸びている状況だ。
サブスクリプションとサービスは、例えば「DaaS(Device as a Service)」を指す。DaaSはPCをサブスクリプション契約で導入できるサービスで、機器の所有権が借りる側(ユーザー)にあることや、他のサブスクリプションサービス(オフィススイートやグループウェアの利用や各種保険)とセット契約できることなど、従来の賃借(レンタル/リース)契約にはないメリットも多い。
PCや周辺機器を賃借で調達している企業では、その契約期限満了をきっかけとしてDaaSに移行する動きも見られる。ゆえにHPを含むさまざまなPCメーカーが注力している分野でもある。
今回のイベントでは、Amplify Programに参加している販売パートナーを対象とする「Future Ready Channel」という新プログラムの導入が明らかされた。
従来、Amplify Programの販売パートナーは、PCとプリンタを取り扱うことができたが、新プログラムではゲーミングブランド「HyperX」、ビデオ会議機器ブランド「Poly」、リモートワークソリューション「Anyware」など、ここ数年でHPが取得したブランドの周辺機器/ソリューションも販売できるようになる。
この他にも、販売パートナー向けの新プログラム「Amplify Growth Plays」の導入、販売パートナーの新しいメンバーシップ「Power(パワー)」「Synergy(シナジー)」の導入、AIが仕切り価格を2時間単位で動的に変える「ダイナミックプライシング」の導入、AIにより販売データの分析を行う「Future Ready AI」など、さまざまな新施策を順次実行していくことが明らかとなった。
Future Ready Channelには「Fast Lane」という新しいMDF(マーケティングデベロップメントファンド)も含まれている。MDF償還を受けるためのプロセスが自動化されていることが特徴で、従来比で最大60%早く償還金を受け取れる
Amplify Partner Conferenceでは、パートナー企業もゲスト登壇している。
関連記事
- NPU搭載の「AI PC」で、これからの“パソコン”は何が変わる? アプリベンダーとの協業を強めるHP、Windows 10のEOSを見据えて
Windows 10のサポート終了を約2年後に控える中、冷え込んでいたPC市場は落ち込みから回復する兆しが見えてきた。そんな中、HPはVPU(AIプロセッサ)を内蔵するPC向けSoC(プロセッサ)を備える「AI PC」を軸に販売を拡大する戦略を取るようだ。 - 「HP」という社名は創業者の“コイントス”で決まった――シリコンバレー生誕の地「HP Garage」で知る、意外な逸話
HPとHPE(Hewlett Packard Enterprise)のルーツは、米カリフォルニア州パロアルト市にある民家とガレージにある。現在そこは「HP Garage」としてHP/HPEの顧客向けのミュージアムとして運用されている。その展示内容と、HPが社名を決定するまでの“逸話”を紹介しよう。 - 年末に“真打ち”が相次いで登場――CPUとGPUで振り返る2023年 2024年は“AI PC”元年か
GPUは“マイナーチェンジ”の年になった一方、CPUでは特に大きな動きがあった2023年。1年間を振り返ってみよう。 - Core Ultra搭載のAI PC「HP Spectre x360」で仕事は変わるのか? 実機を試してみた
最新の「Core Ultra 7」を搭載した2in1 PC「HP Spectre x360 14」を試用する機会を得ました。今までのCoreシリーズ搭載モデルと何が違うのか、どのように仕事で生かせるのかを中心に試してみました。 - Google、マルチモーダル生成AIモデル「Gemini」発表 Ultraは“人間の専門家を上回る”
米Googleは12月6日(現地時間)、マルチモーダル生成AIモデルの第1弾として「Gemini」を発表した。データセンターからモバイルデバイスに至るまでのあらゆる場所で効率的に動作するという。年次開発者会議「Google I/O」で予告されていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.