動画編集アプリ「Adobe Premiere Pro」に生成AIビデオツールを搭載 2025年後半予定:サードパーティー製モデルも利用可能
アドビの動画編集アプリ「Adobe Premiere Pro」に生成AIによる編集機能が追加されることになった。自社の「Adobe Firefly」に新規追加されるビデオモデルの他、OpenAIを始めとするサードパーティーのビデオモデルもプラグインを通して利用できるようになる予定だ。
アドビは4月15日、動画編集アプリ「Adobe Premiere Pro」について、生成AIベースのビデオツールを2025年後半をめどに導入する方針を明らかにした。同日、実装予定の機能が先行公開されたので、その概要をお伝えする。
生成AIを使ったオブジェクトの追加/削除
特定のシーンにおいてオブジェクトを追加したい場合、動画の映像内で範囲を指定し、プロンプトで指示をすることによって、AIが生成したオブジェクトが動画内に“合成”される。
映像内の範囲を選択し、プロンプトを入力する。この例の場合、「Pile of large diamonds on black velvet cloth(黒いベルベット地の布の上に大きなダイヤモンドの山)」と入れてから「Generate(生成)」をクリックすると……
逆に、範囲を指定してオブジェクトを消去する機能(スマートマスキング)も実装される。生成AIが当該オブジェクトを“埋める”画像を生成することで、オブジェクトが消えるという寸法だ。
本機能をうまく活用すれば、写り込ませるべきものが足りなかったり、逆に余計なものが写り込んでしまったりした際に、撮影し直すことなく“手直し”が可能となる。
なお、オブジェクトの追加/削除の際に使われる生成AIのデータは「Adobe Firefly」に新たに加わる「ビデオモデル」がベースとなっている。
生成AIによるクリップ拡張(シーンの引き延ばし)
動画を撮影した後に「あ、ここもう数秒長く撮っておきたかったな……」と後悔することもある。そんな際に便利な機能として、生成AIベースの「クリップ拡張(シーンの引き延ばし)」機能が追加される。
使い方は簡単で、引き伸ばしたい動画のタイムラインの“終端”でクリップ拡張アイコンをクリックし、その後タイムラインを伸ばすと、その分だけシーンを引き延ばしてくれる。
先述のオブジェクトの追加/削除も含め、加工の履歴はC2PA形式で書き出した動画に保存される。もちろん、加工時に使われた映像や画像の来歴情報も一緒に保存されるなど、コンテンツの“トレーサビリティー”もしっかりと確保可能だ。
テキストからの映像生成
上記2つは、既存の映像をベースに生成AIを適用していたが、生成AIで元動画にない映像を生成して追加する機能として「テキストから動画生成(Text to Video)」も実装される。
サードパーティー製生成AIモデルの利用
Premiere Proでは、プラグインを導入することでAdobe Firefly以外のサードパーティー製生成AIビデオモデルも利用できるようになる見通しだ。現時点では「OpenAI」「Runway」「Pika」の生成AIを利用したデモンストレーションが公開されている。
なお、サードパーティー製生成AIビデオモデルを使った場合も、C2PA形式の来歴情報が付与される。
動画内にOpenAIのプラグインで、「View of city skyline in the rain at night(夜の雨の中の街のスカイラインの眺め)」というプロンプトから生成した映像を挿入しようとしているイメージ
β実装中の一部機能を正式実装(5月予定)
今回発表された生成AI機能とは別に、現行のPremiere Proにβ実装されている以下の機能が、5月をめどに正式機能として実装される(参考記事)。
- インタラクティブなフェードハンドル
- クリップバッジ
- 新しいクリップカラーと波形デザイン
- AIベースのカテゴリータグ付与
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