使って分かったM4チップ搭載「iPad Pro」のパワフルさ 処理性能とApple Pencil Pro/Ultra Retina XDRディスプレイ/新Magic Keyboardを冷静に評価する:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)
Appleが5月15日に発売する新しい「iPad Pro」は、想像以上にパワフルだ。しかし、用途によっては「iPad Air」でもいいかもしれない――iPad Proを中心に、実機に触れつつレビューしていこう。
新しいiPad Pro用「Magic Keyboard」にかなり驚いた
新しいiPad Proには、新しい「Magic Keyboard」が用意される。薄く軽くなった本体と併せて使うと、「ああ、新しくなったのだな……」と明確なアップデート感を感じられるはずだ。
13インチモデルの場合、新しいiPad ProとMagic Keyboardの合計重量は13インチMacBook Airとほぼ同等となる。筆者手持ちの重量計での実測値は1244gだった。先代比で100g以上軽くなっている。それ以上に、よりノートPCライクに持ち運びやすくなったことの方が評価が高い。
本体が約572g(Wi-Fi+Celluarモデルは582g)と軽量化されたことで、Magic Keyboardのヒンジのジオメトリーが変化し、キーボードのパネル全体における有効面積をより広く確保できるようになった。このため、従来モデルにはなかったファンクションキーが追加できた上に、トラックパッドの面積も広くなっている。
新しいMagic Keyboardのトラックパッドのクリックは、メカニカルスイッチではなく、圧力センサーとハプティックエンジンの組み合わせに置き換えられている。パームレストがアルミニウムになったことも含めて、感覚的にはMacBookシリーズを使っているのと変わらない。
実は「インカメラ」の位置が変わっている
ところで、新しいiPad Pro(とiPad Air)は、インカメラ(True Depthカメラ)の位置が変わったことに気付いた人は、どのくらいいるだろうか。従来は本体を縦に持つと(長辺を縦にすると)上に来るように設置されていたが、新モデルでは本体を横に持つと(長辺を横にすると)上に来る位置に変更された。
インカメラの上部にはApple Pencil Proの充電用アンテナが装備されているが、カメラモジュールは、このアンテナを微妙に避けるように配置されている。その反対側には、環境センサーが備わる。
要するに、インカメラは画面の“ど真ん中”から少しズレている。ただし、ズレは本当に少しだけなので、真ん中に写るようにするために苦労することはない。
カメラといえば、新しいiPad Proではアウト側の「超広角カメラ」が省かれ、シングル構成となった。このことは新しいiPad Proの魅力をそぐわけではないと考えるが、一応触れておきたい。
省かれた超広角カメラの代わりには、新しい「スピードライト」が装着された。これはカメラの捉えるフレームに同期して光の量を自動調整してくれるというもので、多くの人にとって魅力的だろう。筆者個人としては、iPad Airはもちろん、iPhoneにも搭載してほしいと思う。
「何に使うの?」と疑問を覚えるかもしれないが、これは書類などを撮影する際にどうしても入り込んでしまう“影”を抑えられる。具体的には、ライトが多く光るフレームと少なく光るフレームの2枚を撮影し、影の出方に応じて両者を合成することで、影のない(少ない)写真を撮れるのだ。
いろいろと応用が効きそうなアプローチだが、その効果は大きく、ドキュメントのスキャンをiPadで行うモチベーションが高まる。
想定したよりも長い記事になってしまった。 新しいiPad Proに対応するアプリの対応(評価)が遅れていることもあり、今回はこの辺で一旦締めることにしたい。
そうした中でも、新しい「Logic Pro」は評価できたので少しだけ試してみたのだが、極めて楽しかった。
なぜ楽しいのか? それは音楽製作のノウハウを持たない私でも、音楽を作っている気分にさせてくれるからだ。
もちろん、もっとカジュアルな製作ツールはあるだろう。しかし、プロフェッショナルが使うツールと同等の機能を持つアプリで、AIの助けを借りながら、音楽を積み重ねるように作っていく体験は 素晴らしいものだった。
Appleとしては、こうした部分をもっと強調していきたいのだろうが、今回は“時間切れ”ともいえる。今後メディアクリエイションツールとしてのiPad Proの評価は続けていきたいと思うが、ひとまずハードウェアとしての評価はここで終えることにしたい。
一方で、iPad Airの汎用性の高さも、注目に値する。「Face IDに対応していない」「ディスプレイがミニLEDではない」「120HzのTrueMotionに対応していない」といったことを差し引いたとしても、新しいApple Pencil Proに対応していることを考えれば、13インチモデルが加わったことも相まって「一番多くの人に勧められるiPad」になったことは間違いない。
誤解のないようお伝えしておくが、新しいLogic Proアプリや「Final Cut Pro」アプリのNeural Engineを活用した機能は、iPad Airに搭載されたM2チップでも稼働する。つまり、多くの人にとってiPad Airは愛されるべき「新しい標準」といえる。
そして、最新の技術を盛り込んだ最先端 端末を堪能したいのであれば、iPad Proは今回大きなジャンプアップをした最もパワフルなタブレットであることは間違いない。
以前であれば、最上位機種を評価していればよかったんだろう。しかし現代において、最新かつ最上位のモデルだけを求めることには、あまり意味がない。プロフェッショナルな最先端モデル、多くの人にとって有益なスタンダードなモデル――そうした意識でこのiPad ProとiPad Airを評価すればよいのではないだろうか。
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