Next GIGAで学習用端末のOSシェアが大きく変わる? PCメーカーやプラットフォーマーの動き【後編】(4/4 ページ)
いわゆる「GIGAスクール構想」で導入された学習用端末が、2024年度から順次更新(リプレース)される。そこでプラットフォーマーや端末メーカーはいろいろな動きを見せている。その様子を見てみよう。【更新】
端末(PC)メーカーは「Chromebook」シフト?
先述の通り、初代のGIGAスクール構想向けの学習用端末では、Chromebookのシェアがトップに立っている。そのこともあってか昨今、PCメーカーは学習用端末としてChromebookに傾注する傾向が見られる。
EDIX東京 2024のブース出展においてGoogleとのコラボレーションが多かったことや、今までChromebookを手掛けてこなかった(あるいは直接発売していなかった)メーカーが参入してきたことは、ある意味でその証左といえる。
同じく日本HPブース。こちらもGoogleとのコラボレーションを実施しており、教室を模したセッションコーナーはChromebookだらけだった(展示コーナーにはWindowsベースの学習用端末も多く展示されていた)
一方、DynabookブースはWindows PCをメインに据えた展示だったものの、2024年12月に発売予定の「Dynabook Chromebook C70」のイメージモックアップを参考展示していた。先代の「Dynabook Chromebook C1」とは異なり、自社単独開発となる
飛ぶ鳥を落とす勢いともいえるChromebookだが、そんなChromebookにも“ちょっとした”変化が見受けられる。
従来、学習用ChromebookはIntel(またはAMD)のCPUを搭載するモデルが主流だったのだが、Qualcommの「Snapdragon 7c」やMediaTekの「Kompanio 520」といったArmベースのSoCを搭載するモデルが増えている。Chromebookの場合、あらゆる操作をWebブラウザ(Google Chrome)の上で行う前提なので、Windows PCとは異なりCPU(アーキテクチャ)への依存をあまり考慮しなくてもよい。
円安などに起因する昨今のPC価格の高騰を踏まえて、少しでも手頃に端末を導入するための方策として、ArmベースのChromebookを導入する自治体も増えるのだろうか。OSシェアの争いと並ぶ注目ポイントだ。
Chromebook向けにSoCを供給するMediaTekは、今回EDIXに初出展した。「手頃でサクサク動くChromebookなら(MediaTekの)Kompanioという選択肢もありますよ」とアピールするためだという。ちなみに、先に紹介したDynabook Chromebook C70はKompanio 520を搭載している
学習用端末にまつわる取材をしていると、全体的にはChromebookの勢いが一層増しているように感じる。日本専用の管理用ライセンスを導入したり、ChromeOS FlexによるWindows PC/MacのChromebook化を提案したりと、Googleの活動は思っている以上にアグレッシブだ。
一方、日本マイクロソフトは「Microsoft 365」や「Copilot」を軸にWindows環境であることに優位性を訴えている。学習用端末で「できること」を突き詰めると、ChromebookよりもWindows PCの方が良いとも考えられるので、そこに不満を覚えているChromebook(またはiPad)を使っている自治体をどれだけ引っ張り込めるかが焦点となるだろう。
そしてAppleは独自の戦いを繰り広げているようにも見える。iPadは、日本でシェアの高いiPhone(iOS)と似た操作感を備えているので、iPhoneに慣れた子どもは操作しやすく、やはりiPhoneに慣れ親しんだ教職員や保護者も操作を手伝いやすいというメリットがある。ただし、拡張性の面では他OS(特にWindows)にはかなわない上、汎用(はんよう)クラウドツールはGoogleか日本マイクロソフトに頼らざるを得ないという弱点もある。
学習用端末を導入するに当たって、何を優先するのか――都道府県(と市町村/特別区)の判断に注目が集まる。現状のシェアはどう変わっていくのか、楽しみである。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Next GIGAで何が変わる? 文科省が「学習用端末」の要件や補助スキームの変更などを行った理由【前編】
2019年度に始まった「GIGAスクール構想」で導入された学習用端末が、2024年度から順次更新時期を迎える。そのことを受けて、端末メーカーやプラットフォーマーが置き換えを見越した動きを活発化させている。この記事では、新たな学習用端末の要件と調達方法について見ていきたい。
「GIGA Basic パソコン」と「GIGA Advanced パソコン」って何? 日本マイクロソフトが描く“アフターGIGA”への取り組み
GIGAスクール構想に合わせて導入された「学習用端末」が、早い自治体では2024年度からリプレースとなる。そのことを見越して、日本マイクロソフトが「Next GIGAに向けた取り組み」を説明するイベントを開催した。
公立小中学校の「学習用端末」の普及率は? 持ち帰れる? OSは何が優勢? 文科省が実態調査の結果(速報値)を公表
文部科学省が、2021年7月末時点における「GIGAスクール構想の実現に向けた端末の利活用等に関する状況」の速報値を公表した。GIGAスクール構想が目指す「1人1台端末」を実現できている自治体は全体の96.1%に達しているが、約1%の自治体は2021年度内の達成が困難な見通しだという。
STEAM教育ってどうなの? マイクラで金融教育?「EDIX 東京 2024」で見た最新事情
東京と大阪で毎年開催されるEDIX(教育総合展)では、年々STEAM教育に関連した展示が増加し、内容も充実してきている。2024年はどうだったのか、筆者が気になるブースの様子をお伝えする。
日本最大の教育展示会「EDIX 東京」に大盛りランチパック!? GIGAスクール構想のその先を見てきた
5月8日から10日にかけて、東京ビッグサイトで開催されている日本最大級の教育向け展示会「EDIX 東京」。NEXT GIGA(GIGAスクール構想第2フェーズ)に向け、さまざまなソリューションが展示されていた。ここでは先生の業務効率化、児童生徒の学校生活の質を上げるであろうソリューションを紹介する。


