約3年ぶりにモデルチェンジした「iPad mini(A17 Pro)」を試す 外観からは分からないスペックアップでクリエイターにもお勧めの1台に:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/3 ページ)
Appleが「iPad mini」を約3年ぶりにモデルチェンジした。ぱっと見では先代と変わらない外観だが、外観から分からない部分が進化している。
“見えないところ”のスペック向上が地味に効果的
新しいiPad miniは、SoCの各種コアのピーク性能が向上しているのだが、実際の利用シーンを広げるという観点ではUSB Type-Cポートの伝送速度の向上と、内蔵ストレージの最小容量の向上が大きな意味を持つ。
先代のiPad miniでは、「iPad Pro」や「iPad Air」などで先行して採用された新しいデザインに刷新された。より新しい第2世代Apple Pencilに対応はしたものの、SoCがiPhone 13と同等だったがゆえに、周辺機器との接続性においては同じデザインを採用する他のiPadとは“違う”特徴付けがなされてしまっていた。
その点、新しいiPad miniではUSB Type-CポートがUSB 3.2 Gen 1(USB 5Gbps)準拠からUSB 3.2 Gen 2(USB 10Gbps)準拠に変更されたのは大きい。ストレージも64GBスタートから128GBスタートに引き上げられた。
サイズの関係から純正キーボードこそ用意されないものの、それ以外の多くの機能やアプリの可用性はクリエイター向けと位置付けられるiPad Proに通じるものを備えるようになった。クリエイターの道具として、あるいはプロフェッショナルのワークフローにおいて重要な役割を持つ高付加価値端末としてのタブレットの位置付けを踏襲しながら、軽量コンパクトな設計を維持している。
ここで少しばかり昔話をさせてほしい。
実は初代のiPad miniは、筆者が初めてAppleの新製品発表イベントに招かれた時に発表されたものだった。米カリフォルニア州サンノゼで行われた発表イベントにおいて、iPad miniは「Webにアクセスすることで、多様なコンテンツをいつでもどこからでも指先1つでアクセスできる、ちょうどいい端末」と説明された。
もちろん、この時点でもアプリは一通りそろっていたのだが、その使い方はまだ“受動的”なものだった。その後に登場するiPad Proが開拓した「クリエイティブな作業に適したタブレット」という領域は、まだ遠い未来だった。
iPad Proの進化に伴い、iOS(後に「iPadOS」として分離)が機能を改善していき、キーボードと組み合わせた際の使い勝手が向上した事は皆さんご存じの通りだ。iPad miniもApple Pencilに対応し、そういう意味ではよりクリエイティブな作業に対応できるようになっていた。
具体的な進化の方向を示すべく、2018年以降のiPad Proと同じデザインに更新された先代のiPad miniは、接続ポートがUSB Type-Cとなり、第2世代のApple Pencilに対応したものの、“心臓部”が当時のiPhoneと同等だったゆえに、USBポートの転送速度はやや遅いままだった。
Mac向けに設計されたApple Silicon(Apple Mシリーズ)はより高速なThuderbolt 3/4にも対応している上に、タブレット(iPad)への搭載も想定している。しかし、いくらタブレットへの搭載を想定しているとはいえ、さすがにiPad miniのようなコンパクトモデルまでは想定していない。ITmedia PC USERの読者の皆さんなら、「iPhone用のプラットフォーム(SoC)を流用しないと厳しい」ということは分かるだろう。
「だったら、もう去年(2023年)のうちにA17 Proチップに移行すれば良かったのでは?」と考える人もいるだろう。確かにそうしていてもおかしくはなかったとは思う。なぜこのタイミングなのかは「Appleのみぞ知る」が、iPad miniはいよいよオリジナルiPadの提案したアプリ領域を超えて、iPad Proが目指してきたクリエイティブな領域に本格的に踏み込んだといえるだろう。
もっとも、先代と並べて使ってみると、一般的なアプリでパフォーマンスの差を感じることはほとんどない。最新のiPadOSで使えるAI機能に関しても、新しいモデルだからといって(Apple Intelligenceへの対応を除いて)特別大きな差がある訳でもない。
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