Intelの苦境と変わりゆくデバイス――“AIシフト”の影響を受け続けた2024年のテック業界:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/4 ページ)
2024年も残りわずかとなった。振り返ってみるといろいろあったが、12月初頭のIntelのパット・ゲルシンガーCEOの退任がもっともインパクトが大きかったように思える。
大規模言語モデル(LLM)による“革命”が始まったとき、誰もがこれからのテクノロジー(IT/ICT)業界に大きな変化がやってくると感じたに違いない。その影響はどこまで続くのか、未だ誰も予想できない状況だが、2024年を振り返ると、まさにその“第一波”ともいえる大きな波が、テクノロジー業界全体に到達したかのようだった。
半導体の雄、Intelの「没落」 パット・ゲルシンガーCEOの電撃退任
半導体業界の話題としては、Intelのパット・ゲルシンガーCEOが突然退任したというニュースが大きな注目を浴びた。詳細な経緯は不明だが、複数の報道を総合すると事実上の解任だった可能性が高い。
この出来事は、近年の大きなトレンドである「AIシフト」がもたらしたものといえるが、「クラウドとエッジ(端末)の協調」、そしてスマートフォンを始めとする「エンドデバイスの高性能化」、さらには「XR(拡張現実/複合現実)」の普及など、さまざまな方向に影響を及ぼす可能性をはらんでいる。
ゲルシンガー氏はかつて、Intelを代表するエンジニアとして活躍し、同社のCTO(最高技術責任者)を務めながら「Intelの未来」を設計してきた人物だった。
同氏は2009年にIntelを一度退社し、仮想マシン(VM)ソフトウェア大手のVMwareのCEOに就任した。しかし、彼は2021年、古巣のIntelにCEOとして戻った。事業基盤こそ磐石なものの、業界内の存在感という意味では“ジリ貧”だった同社への復帰は、業界内では“英断”だと評価されることも多かった。
しかし、昨今の最先端半導体プロセスの開発コストは高騰しており、投資リスクも大きい。同社の競合とみなされるAMDやNVIDIAは、自らは生産機能を持たない「ファブレス企業」として柔軟な戦略を取っている。そんな中で、Intel伝統の「垂直統合モデル」を現代に“取り戻す”という戦略は、ハードルが高すぎた。
昨今のIntelの戦略は結果的に株主の不信を招き、最終的にCEO交代という結末を迎えた。しかし、こうした結末を迎えたのは、ゲルシンガー氏がCEOに復帰して戦略を練り直した頃には予想することが難しかった、大きなコンピュータ産業の変節点があったためだ。
この動きは半導体業界全体がPCを中心に開発投資が循環していた時代、そしてその後のスマートフォン向けSoC(System on a Chip)へのシフト以上の世界観の変化を、「AIシフト」がもたらしたということを象徴している。
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