GIGA 2.0はどうなっている? 5年間の“経験値”を元にレノボが「Lenovo GIGA School Edition」を提供開始した理由(2/3 ページ)
レノボ・ジャパンが、GIGAスクール構想の第2期を想定したパッケージを発表した。第1期で得られた知見をもとに、ハードウェアだけでなくサービスやソリューションも付帯して提供することで使いやすさを高めたという。
大人とは違う「使い方」への対策
GIGA 1.0の経験を通して、レノボは「故障」「スペック不足」「利活用格差」の3点が課題だと認識した。故障とスペック不足はハードウェア面の課題だが、利活用格差はハードウェア面だけでなくサービス/ソリューション面にも“またがる”課題といえる。
小学校/中学校課程のGIGAスクール構想では、学習用端末は5年間利用することを想定している。スペック要件や調達スキームに変化はあったものの、このことはGIGA 2.0でも同様だ。
GIGA 1.0では、小学校/中学校課程の全ての児童/生徒に学習用端末を貸与するという壮大な構想だ。導入規模も大きいだけに、端末の故障もそれなりにある……のだが、メーカー(レノボ)としても想定外の原因で故障することが多かった。
特に想定外だったのは端子にモノを突っ込むことだったそうだ。特にUSB端子に鉛筆を突っ込む事例が多かったそうで、突っ込んだ鉛筆の芯(≒黒鉛)が端子内で折れてしまい、芯がショート(短絡)を起こして発煙した事例もあったそうだ。
他にも「USB Type-C端子の破損」「ペン/鉛筆の挟み込みによる画面割れ」「変換コネクターを利用した場合の映像出力の不良」「デタッチャブル式端末におけるキーボードドッグの破損」といった事案が見受けられたそうだ。
USB Type-C端子の破損は、先述のモノを突っ込むことでも発生するが、AC(充電)アダプターの抜き差しが原因であることも多いという。映像出力の不良も、突き詰めると変換アダプターの“重さ”によってUSB Type-C端子が接触不良を起こしてしまうことが一因だ(HDMI出力端子を備える端末ではあまり起こらない)。
故障対策として、今回のLenovo GIGA School Editionで選択できる端末では、GIGA 1.0で見られた想定外の故障に対する機構面での対処を行った。USB端子の異物混入/破損対策は、レノボの一般的なノートPC(ThinkPad/ThinkBookやYoga/IdeaPad)と比べて“念入り”に行っている。
その他、端末全体の丈夫さを担保すべく、「MIL-STD-810H(MIL規格)」に準拠する耐衝撃/耐環境性能を確保しつつ、耐衝撃の一部指標についてはMIL規格を超える性能を備えるように取り組んだ。
GIGA 2.0におけるChromebook/Windows 11 Pro PCでは、USB PD(Power Delivery)に対応し、USB 3.2 Gen 1(USB 3.0/USB 5Gbps)以上の通信速度に対応するUSB Type-C端子を1つ備えなければいけない。その点、今回のパッケージで選べる3モデルでは、GIGA 2.0の要件を満たす“頑丈な”USB Type-C端子を“2つ”搭載している。耐久性を高めるだけでなく、ポート自体を2つとすることで冗長性を持たせた
GIGA 1.0向け端末もMIL規格を満たしていたのだが、今回のパッケージで選べる3モデルは全て20超の耐衝撃/耐環境性能を確保した上で、MIL規格よりも厳しいレノボ独自の「Lenovo DuraSpec」テスト(15項目)もクリアしている
GIGAスクール構想では、学習用端末は5年間使う前提となっている。そのためバッテリーの「駆動時間」と「耐用期間」の両立も課題となる。その点、今回の学習用端末はサイクルカウント1000回超でも実用的な駆動時間を確保できるバッテリーを搭載すると共に、Lenovo 500e Chromebook Gen 4sとLenovo 300w Yoga Gen 4についてはバッテリーをCRU(ユーザー交換可能部品)とすることで、万が一バッテリー交換が必要になった場合でも現場(学校)側で対応できるようにしている。
GIGA 1.0よりもスペック面での“余裕”を持たせる
GIGA 1.0の学習用端末を巡っては、特にWindows 10 Pro/Pro Education(Windows 11 Pro/Pro Education)端末においてスペック不足が指摘されていた。そこでGIGA 2.0ではWindows 11 Pro/Pro Educationを使う学習用端末のメモリ要件が4GBから原則8GBに引き上げられた。
一方、Chromebookが用いるChromeOSは、多くのアプリがWebブラウザベースで稼働することもあり「スペックが低くても快適」と言われている……のだが、レノボによるとマルチタスクを使うとパフォーマンスが低下するという指摘もある。それを踏まえてか、GIGA 2.0ではChromebook(とWindows PC)におけるCPU要件も引き上げられている。
今後、教育機関ではデジタル教科書やCBT(Computer Based Test:学習用端末を利用した試験)が順次導入される見通しだが、そうなると学習用端末に求められるスペックもさらに高まると思われる。
そこでレノボは、本パッケージで選べる学習用端末は、GIGA 2.0の要件を単に満たすだけでなく「(端末の想定利用期間が満了する)5年後でもしっかりと実用できること」を重視してスペックを決定したそうだ。
Lenovo Chromebook Duet EDU G2には、MediaTek製SoC「Kompanio 838」を搭載している。このSoCはNPUを統合することで特に写真/動画の処理能力を高めた他、4K(3840×2160ピクセル)/60Hzの映像出力をサポートしている。MIPI規格のWebカメラにも対応している。
一方、他の2モデルには「Intel Processor N100」を搭載している。N100は第12世代Coreプロセッサと同じ高効率コア(Eコア)を4基搭載している。このEコアはGIGA 2.0における最小要件である「Celeron N4500」(2コア)よりもパフォーマンスが高く、コア数も多いのでマルチタスク性能にも優れている。
CPU(SoC)については、GIGA 2.0で定める要件よりも“余裕”を持たせている。なお、メモリ容量はLenovo Chromebook Duet EDU G2とLenovo 500e Chromebook Gen 4sは4GB、Lenovo 300w Yoga Gen 4は4GBまたは8GBとなる
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