Wi-Fiルーター「Aterm」のふるさとは先端技術の“試験場” NECプラットフォームズ掛川事業所の中核工場を見てきた【後編】(1/4 ページ)
NECプラットフォームズの掛川事業所の主力工場である「新A棟」は、同社が推進する各種取り組みのテストに使われることが多い。その様子をのぞいてみよう。
NECプラットフォームズの掛川事業所(静岡県掛川市)は、NECブランドのWi-Fi(無線LAN)製品「Aterm(エーターム)」を中心にネットワーク機器の生産を手掛けている。同事業所は、1969年に静岡日本電気として設立された歴史のある拠点でもある。
筆者は同事業所を取材する機会を得た。別記事では、NECプラットフォームズと掛川事業所の概要を紹介している。
この記事では、掛川事業所の主力工場である「新A棟」で同社が進める取り組みを紹介する。
掛川事業所の主力工場「新A棟」
掛川事業所の生産棟は複数あるが、かつての主力は「旧A棟」だった。旧A棟は1970年から稼働し、かつて白黒TVなどの生産にも使われていた。
NECプラットフォームズではこの旧A棟を「新A棟」として建て替えを進め、2023年3月に落成した。同社では、この新A棟を現場力とNECの先進技術を融合した“最先端工場”と位置付けている。
新A棟は鉄骨コンクリート造りの地上4階建てで、生産フロア面積は9315m2、延べ床面積は1万5632m2、各フロア2430m2という面積となっている。生産品目は5Gモバイルルーター/5Gホームルーター/ホームゲートウェイ/企業向けLANスイッチ/無線LAN製品といったネットワーク機器で、年間約300万台の生産能力を備えている。
NECプラットフォームズの早川彰一氏(掛川工場長)は、A棟を建て替えた目的を「サプライチェーン網の強靱(きょうじん)化や経済安全保障の観点から、国内生産体制を強化するため」と説明する。
新A棟の1階は、天井高が4.2mあることから大型製品やカスタマイズ製品を生産している。次世代ネットワーク機器の生産にも対応できるようにしているという。
2階は隣接する物流棟(新開トランスポートシステムズ掛川事業所)と直結しているため、物流効率を高める観点などから基板の「SMT(表面実装)ライン」を設置している。
このラインで生産した基板を3階に移送して後付け部品を実装し、4階の組立ラインで製品として完成させ、検査/梱包(こんぽう)を行い、出荷される。
新A棟の屋根には、年間約281MWhを発電する能力を持つ太陽光パネルを設置している。このパネルの電力を含めて、新A棟が消費する電力の約10%は再生可能エネルギーで賄っているという。これにより、年間CO2排出量は約120トン(一般家庭の約40世帯分相当)を削減している。
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