世界でも異例の「マイル相続」――ANAとJALが死後のポイント引き継ぎを認める理由:古田雄介のデステック探訪(2/2 ページ)
企業が提供するポイントサービスは、持ち主の死後に引き継げないのが一般的だ。その中で、日本の航空会社は「相続」対応をうたう。このまれな取り組みはいつから始まったのだろうか?
死後のことを後回しにしていた時代に実装
JALとANAは共に、国内で本格的にマイレージサービスを始めたのは1997年だ。しかし、発足当初は他の航空会社と同じように、相続を想定した規約にはなっていなかった。
JALに問い合わせると、制度に関する条件や詳細等は非公開とのことだったが、重要なヒントを教えてくれた。同社が展開する「JALマイレージバンク」の相続の枠組みは「過去資料から、2009年3月には制度として存在していた」(JAL広報部)という。
確かに筆者がデジタル遺品関連の取材を本格的に始めた2010年には、「マイルは相続できる」というトピックスが一部で広がっていたと記憶している。また、当時はインターネット界隈(かいわい)でも利用規約の変更が盛んに行われていた。
2010年前後に、会員のステータスが相続できないルール(一身専属制)から、遺族への譲渡が可能なものに更新したISP(インターネット・サービス・プロバイダー)はいくつもある(参照:2013年時の筆者の調査記事)。
ひょっとしたら、そういった時代の空気がJALにも及んでいたのかもしれない。
その数日後、さらに時代をさかのぼる情報がANAから届いた。同社広報はマイル相続を「2000年4月1日から開始しております」と明言する。
「当時の資料等が残っていないため背景は分かりかねますが、恐らくマイルも金融資産と同等の価値を有するものとして、相続対象とすることが望ましいと判断したのではと推察します。AMC(ANAマイレージクラブ)発足が1997年、制度導入が2000年ですので、マイルの価値が高まったことに付随して導入されたのではと考えます」(ANA広報)
2000年はまだ20世紀だ。3月にWindows 2000がリリースされ、その半年後にWindows Meの登場を待っていたタイミングだ。カメラ付き携帯電話もSNSもまだ世の中に存在していなかった。資産関連でいえば、その2年前にFXが解禁され、3年前にゴルフクラブ会員権の相続についての判決が初めて下されたくらいの時代でもある。
ポイントの相続を考える土壌は、ほとんど育っていなかったはずだ。そうした空気の中で「マイルの価値が高まったことに付随して」会員の死後のことまで考え、規約の変更に踏み切った。おそらく独自に判断して盛り込んだのだろう。
50万マイルを相続したケースも
それから26年。ANAマイレージクラブのマイル相続の依頼は、公式ページで受け付けている。その頻度は「月によって変動しますが、平均すると月150件程度になります」(ANA広報)という。
2024年度の数値では、ANAマイレージクラブの会員数は約4400万人に及ぶ。そのうち年間でおよそ1800件のマイル相続が発生しているわけだ。単純計算で10万人の会員のうち4人程の割合となる。
同年度の日本人10万人あたりの年間死亡者数が1300人超であることを考えると、マイル相続が申請されるケースはなかなかレアだといえそうだ。
レアケースになる背景には、マイルの有効期限が一部の例外を除いて3年間である点も大きく関係していると思われる(ANAもJALも同様)。緩やかに社会活動を減らして隠居していくライフスタイルをたどれば、大抵のマイラーの保有マイルは、存命中に自然と漸減していくことになる。相続時に大量のマイルが残っているケース自体があまり多くはないためと考えられる。
それでも毎年およそ1800件の相続がなされているわけだ。過去にはどこまで高額のマイル相続がなされたのか、ANAにも累計の情報は存在しない。しかし、最近の動向として、次の情報を教えてくれた。
「詳細の記録は残っていないものの、50万マイル以上の相続を実施したケースも確認しております」(ANA広報)
レアケースであることは間違いない。そうであっても、マイル相続は今後も提供されていく。そこにホッとする気持ちが芽生えるなら、とても価値のあることだと思う。
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