検索
連載

新型「Mac mini」「Mac Studio」徹底レビュー! ローカルAIはついに“実用域”へ エージェントAIに事務仕事を任せて分かった驚異の進化本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/4 ページ)

ついに新型の「Mac mini」「Mac Studio」が発売される。久しぶりの新モデルは、特にローカルAIという観点でかなり強力になっている。発売前に先行して試してみた率直な感想をまとめたい。

Share
Tweet
LINE
Hatena

Mac miniでAIをたしなむ

 AI視点で見た場合、Mac Studioが「部署で共有するAIサーバ」なら、Mac miniは「机の上で1日中動く、手近なエージェントマシン」といえる。M6チップのメモリは最大32GBなので、最大限メモリを搭載した場合にGPUに割り振れるのは28GB程度が限界だろう。「20GB前後で収まるAIモデルを1つロードする」という使い方が現実的で、それに当てはまるモデルは以下のものだ。

  • Gemma 4 26B-A4B(4bit量子化/約15GB)
  • Qwen3.6-35B-A3B(約20GB)
  • Qwen3.8-27Bの4bit版(約17GB)
  • Muse Glimmer 30B(20GB弱)

 メモリ帯域幅も毎秒170GBと、M5 Ultraチップ搭載のMac Studioとは桁が“2つ”違うので、使うのであれば専門性を高めたMoEが適している。

Gemma 4 26B-A4B
Mac miniでGemma 4 26B-A4Bを動かしているところ

 今回行ったテストでは、Gemma 4 26B-A4Bにおいて毎秒26トークン程度のパフォーマンスを得ることができた。小型モデルであることを差し引いても、かなり実用的に使えるスループットだ。

 さすがにGPUの規模が大幅に違うため、プリフィルのパフォーマンスは良好とはいえない。それでも、書類を月次/週次単位でまとめて処理したり、常駐エージェントを毎朝走らせたりする程度なら問題はない。

 試しに40枚の領収書と請求書が混じったPDF伝票を分類/集計させてみたが、間違いなく仕事をやりきり、事前処理は4分20秒程度で済んだ。トークン出力は前述したように毎秒26トークン前後と良好だ。JPEG形式で保存した領収書伝票の画像も、20枚を5分ほどでOCRして処理を完了する。

 この程度の規模でも近年のMoEモデルは優秀で、用途を見定めるのであれば、十分に使い道はあるのだと実感した。仕事し始めのちょっとした事前の振り分けを依頼できるレベルには達している。

  MCP(Model Context Protocol)で接続されているツールから集めている自分向けのメッセージや書類を読み込み、その内容に応じて対応すべきアクションをまとめたり、メールや業務ワークフローツールから届いているフォルダーの中身を内容で仕分けたり、スキャンしたPDFの名前を「日付_相手先_内容」に付け直したり、毎朝届く日報を3行にまとめたり、SafariのmacOS 27における新機能「Notify Me」で見張っているページの変化を要約したりといったように、単純な作業はオンデバイスAIによる事前処理が当たり前になっていくだろう。

 LM Studio Bionicを使う場合でも、OpenClawを使って定期的に常駐型エージェントを定期実行する場合でも、ローカルのストレージへの読み出し権限を与えれば、メールやカレンダーなどの個人情報について、ローカルに保存されているデータを調査して報告させることも可能だ。

 実際に、(今回のレビュー機ではないMacBook Proだが)筆者はこうした情報をローカルLLMのエージェントに数時間に一度チェックさせ、明らかな広告メールやSNS関連通知は優先順位が低いものは削除、残す価値のあるものは既読にして、必要な応答優先順位のリストを報告させているが、問題が起きたことはまだない。

M6チップ搭載Mac miniで、JPEGのレシートを処理して精算シートに追記集計しているところ
M6チップ搭載Mac miniで、PDF領収書の処理結果を出力しているところ

Siri AIも使える

 もう1つ、M6チップを活用できる新要素もある。macOS 27で始まった「Siri AI」と30億パラメーターの「AFM 3 Core」、200億パラメーターを持ちながら推論時には10〜40億だけを動かす「AFM 3 Core Advanced」の2種類からなるAppleの第3世代「Foundation Models」だ。

 これらはGPUだけでなく「Neural Engine」(NPU)も併用され、ほとんどの場合は省電力なNeural Engineで動いている。M6チップの2基のNeural Engineは、チップ内でつながっていて従来の2倍のパフォーマンスを発揮する。BionicがGPUを回してエージェントで仕事をしている最中にも、AFMを通して動くツールを並行して動作させることも可能で、Siri AIもフル活用できる。

 Siri AIは現時点では英語のみ一般β提供しているが、日本語も開発者向けβテストが始まっており、筆者も試しているところだ(一般βは10月から提供予定)。AFM対応アプリや、Siri AIと連携できるアプリも、今後は増えてくるだろう。

FP8演算できるのも強み

 加えて、M6チップファミリーのGPUではNeural Acceleratorに改良が加えられ、FP8のネイティブ演算が可能となった。これにより、量子化でコンパクトに仕上げたAIモデルの実効性能が高まっている。

 Neural Engineの倍増とともに、小型モデルが並行して動く時の実用性を高めているわけだ。 メモリ帯域が毎秒170GBに向上したことも含め、ローカルAIで“パーソナルな”コンピュータをより使いやすくすべく、システム全体を見直した結果の強化ともいえる。

 この辺りはOSやソフトウェア開発環境、Mac本体だけではなく、プロセッサまでをトータルで設計し、擦り合わせているAppleの強みが発揮できている点だ。今後はM6チップを積んだMacBook Proが登場するとみられており、この構成がこれから数年のMacのスタンダードになるだろう。

 AI時代においてクライアントコンピュータがどのような使われ方をするのか、新しいスタート地点が設定されたという印象だ。

Mac mini
さすがにMac Studioほどのパワーはないが、ある程度のローカルAIを使える程度には力強くなった新型のMac mini

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る