新型「Mac mini」「Mac Studio」徹底レビュー! ローカルAIはついに“実用域”へ エージェントAIに事務仕事を任せて分かった驚異の進化:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/4 ページ)
ついに新型の「Mac mini」「Mac Studio」が発売される。久しぶりの新モデルは、特にローカルAIという観点でかなり強力になっている。発売前に先行して試してみた率直な感想をまとめたい。
処理パフォーマンスを「数字」で確かめる
M5 Ultraチップ搭載のMac Studioの処理パフォーマンスを「数字」で確かめておこう。
llama.cppの公開表と同じ条件、具体的には「LLaMA 7B Q4_0」を使って「512トークンの読み込み」「128トークンの生成」を実行してみたところ、Mac Studioはプリフィルが6298、生成速度は毎秒204.5トークンだった。これはM5 Maxチップ(プリフィル3220/生成毎秒119.9トークン)に対して2倍程度、M3 Ultraチップ(プリフィル1471/生成毎秒92.1トークン)とは比べるまでもない。
M5 UltraチップはM5 Maxチップを2基連結したようなチップ構成なので「2倍程度」という性能差は妥当といえる。
同じテストをM6チップ搭載のMac miniでもやってみたところ、プリフィルは876、生成速度は毎秒35.8トークンだった。
先代はM4チップを搭載していたため、期待値は先代比で「プリフィルが4倍、生成速度は1.5倍」だったが、実測するとプリフィルが221、生成速度が毎秒24.1トークンだったので期待通りの結果だ。
Mac StudioにおけるDeepSeek V4 Flashでは、16Kトークンのプリフィルが毎秒112トークン、生成は毎秒56トークン前後を示した。比較的複雑な指示をしたのだが、生成開始までの時間はおよそ120秒だった。
「え、ちょっと時間かかってない?」と感じるかもしれないが、実は従来のMac Studioと比べると体感的に4倍以上高速になっている。気持ちよい程度には、速度が出る。
別途、10万トークンの矛盾を内包した20通の契約書を生成しておき、その矛盾点を探る処理を行わせたところ、生成開始まで約54秒で、その後の生成速度は一般的なクラウドのAIサービスと変わらなかった。少なくともエージェントとして、業務をバックエンドで支える存在として捉えるなら極めて実用的だと感じた。
なお、ここまで劇的に処理が高速化した背景には、LM Studioに内包されているllama.cppがM5チップ世代に対応した影響も大きい。7月に公開された「BaseRT」という研究用の実行環境では、Metal 4を直接使うことでM5 Proチップにおけるプリフィルをllama.cppの最大6.4倍まで引き上げたと報告している。
DeepSeek V4 Flashは公式版でMLXをサポートしていないものの(コンバート版はもちろんある)、さまざまな面でMacのAI性能を引き出せる環境が整いつつある。
消費電力と価格はどうか?
Mac Studioの消費電力は100〜160Wとされている。ただし、生成AIをフルに回している時でも、静かに冷却ファンが回るだけで、けたたましい音を立てることはない。Mac miniに至っては、ほとんど無音といってもいい。
AI性能は高いのに、AIサーバでイメージされる消費電力の高さや発熱はほとんど気にならないのは強みといえる。
一方で、気になるのは本体価格だ。
M5 Ultraチップ搭載のMac Studioの最小構成価格は94万9800円だが、これだとメモリが96GBしかない。AIサーバとして使う場合は心もとなく、少なくとも256GBはほしい。今回の試用機のカスタマイズ(CTO)オプションを細かく見ると、チップの強化(36コアCPU/80コアGPU化)に23万4000円、メモリの増量(256GB化)に72万円で、ここまででも190万3800円となる。さらにストレージの増量(4TB化)を組み合わせると、冒頭で書いた217万3800円というプライスになる。メモリを512GBにした場合は、一体いくらになるのか、ちょっと想像できない。
本機はThunderbolt 5(USB4)接続で最大4台のクラスタリングにも対応している。まずは1台でスタートし、必要に応じて拡張するのが現実的……とはいうものの、個人事業主や企業で導入するにしても経費として落とせない額なので、「導入は計画的に」という所である。
一方、M6チップ搭載のMac miniの最小構成価格は14万9800円だ。ここからCTOオプションとしてメモリの増量(32GB化)に7万2000円、SSDの増量(2TB化)に16万円、内蔵LANの10Gbps化に1万800円と重ねていくと、試用機の41万9800円という価格に跳ね上がる。ここまで来ると、実はM5 MaxチップのMac Studioの最小構成モデルが買えてしまう。大きめのローカルAIを回したいという場合は、メモリを最大64GBまで積めるM5 ProチップのMac mini(29万9800円から)か、M5 Maxチップ搭載のMac Studioを選んだ方がいい。
M6モデルの価値は、別のところにある。小さなモデルで雑務を回し、Siri AIを手元で動かし、必要なときだけMac Studioで動く大きなモデルに接続する――これなら、32GBメモリでも十分である。
ローカルでAIを動かす理由は、この1年の段階では「できるならやってみよう」だったが、「ローカルの方が都合がいいから」に変わった。社外に出せないファイル、従量課金を気にせず何度でもリトライしたいタスク、席を外している間にもずっと動き続け、進めておいてほしい作業――これらをこなすために設計されたシステムという印象だ。
この2台は見た目こそ従来機と大きく変わっていないが、「どのような高速処理を目指すのか?」において、明確な方向転換を果たしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
Mac miniから始まる「M6」世代――初の2nmチップと、超絶物量のMac Studioを読み解く
新しい「Mac mini」は、新しい「M6チップ」を搭載している。新しいApple Siliconのお披露目にモバイルでない製品を選んだのはなぜなのだろうか。同じく新しい「M5 Ultraチップ」を搭載した「Mac Studio」と交えて考察したい。
新型「Mac Studio」の“2番目に強い”構成は約325.4万円! クルマが買えるほどの値段に
8月25日に発表された新型「Mac Studio」は、M5 Ultraチップ搭載モデルで最小価格が94万9800円とかなり高価である。これをさらに“強々”にしたらいくらになるのだろうか……?
Appleが「M6チップ」「M5 Ultraチップ」を発表 その特徴は?
Appleが、Mac向けの新型SoC「M6チップ」「M5 Ultraチップ」を発表した。M6チップは2nmプロセスを採用したこと、M5 Ultraチップは4基のダイをインターコネクト接続していることが大きな特徴だ。
Appleが「Mac mini」「Mac Studio」の新モデルを発表 新チップも選択可能で14万9800円から
AppleがデスクトップタイプのMac「Mac mini」「Mac Studio」の新モデルを発表した。Mac miniでは「M6チップ」、Mac Studioでは「M5 Maxチップ」を搭載するモデルが用意されている。
新型「Mac Studio」発表 M3 Ultra/M4 Max搭載、Thunderbolt 5に対応
今回の新型で搭載された最新チップと、大容量化されたユニファイドメモリによって、クリエイター用途はもちろんのこと、オンデバイスでの大規模言語モデルが実用的に動作することが期待される。

