ファイルメーカーPro ユーザーの現場を探る
第1回 横河キューアンドエー「ユーザーサポートシステムでの活用」(4/4)
前のページ
小回りのきくデータベース、ファイルメーカーPro
師岡氏は、ファイルメーカーProの柔軟性について、次のように話してくれました。
「いわゆるリレーショナルデータベースと呼ばれる製品、たとえばAccess、サーバではSQL ServerとかOracleとかいうものを採用してしまうと、1個属性が増えた時に、データベース作り直しですとか、そのためだけにSEを入れなければいけないとか、柔軟な対応に対して、すぐにコストが発生してしまうというデメリットがあるんですね。それに対してファイルメーカーProですと、あらかじめ柔軟性をもたせた形で、現場がそのままいじくることによって、データベースの運用に関するコストを限りなくゼロに近付けることができます。データベースをどうにかしますというと、すぐSEやSIがでてきて、ということになりがちなんですけど、それを抑えることで柔軟な対応を弊社ではうたっています」
たしかに、データベースをいったん作ってしまったあとで属性を変更したり、仕組みをいじったりということは、ほとんどの場合はユーザーレベルではできず、それを外部に依頼したとすると、莫大なコストがかかります。現場のユーザーがその変更を自分で行うことができれば、そのコストはかかりません。こうした設計変更のしやすさは、ファイルメーカーProの美徳のひとつといえるでしょう。
「われわれは何百人態勢の大きなコールセンターを受注しようとはあまり思っておらず、規模は小さいけど、ソリューションがなくて困っていて、だけど大きなところに頼むとものすごくお金がかかって困るというふうなケースでも、短期で立ち上がりますし、こういった業務に慣れていますので、そういったクライアントにはすごく喜ばれています」
オリジナルの外部関数プラグインを開発
同社のシステム構成は、Windows NT 4.0ベースのファイルメーカー Serverが3本。これで、100を超えるデータベースを分散させながらホストし、50-60名がファイルメーカーProをクライアントソフトとして利用しています。
サーバにアクセスするクライアントソフト側をウェブインタフェースではなく、ファイルメーカーProにしている理由は、「コストは確かにクライアントマシンの数だけ発生してしまうのですが、ファイルメーカーProのあのインタフェースがやはり使いやすい」ためだそうです。
ファイルメーカーProは非常に優れたレイアウト設計機能を持っています。「レイアウトモード」にすれば、ドラッグ&ドロップで画像をインタフェースの一部にしたり、それをボタンにしたりできますし、フィールドのサイズ、デザインの変更も自由自在にできます。ウェブインタフェースと比べると、レスポンスも速く、迅速な対応を求められるユーザーサポートでは、最適化されたユーザーインタフェースと、高速なレスポンスが重要だそうです。
これらのファイルメーカーファミリー製品は、バックエンドのデータベースと接続されているわけですが、そこにはなんと、オリジナルのファイルメーカープラグインが使われているのです。普通はODBCで接続すると思うのですが、そこを突っ込んでみると、「いちおう、ODBCの技術は使っているのですが、完全にオリジナルのプラグインをいちから作った」そうです。これも約2年前。
「メールの本文は容量が大きいですよね。ODBCが1回で送信できる文字数が足りなかったんですよ。256文字だったかで、ひっかかって、文章には使えないねということになって。じゃあ、文章もフックできるように、自分たちで書いてしまおうということで。いま、64Kバイトのメールまで対応できるようになっています。それだけあれば、サポートのメールであれば、まず大丈夫でしょう、ということで」と師岡氏。
実際、ファイルメーカーProのテキストフィールドは、64Kバイトまで(全角で約32,000文字あるいは半角で約64,000文字)という制限があるのですが、そこは、「いらない情報は削ったり、フィールドを2つに分けたりとか」創意工夫をしたようです。
ファイルメーカーのファミリー製品のなかに、ファイルメーカー Developerというものがあります。このなかには、プラグイン開発用のリファレンスが入っており、ユーザーが独自の外部関数プラグインを開発できるようになっているのです。それを使って、「Cで関数部分を作って、ファイルメーカーProのスクリプトから呼べるように書いて、そのスクリプトのなかから、ODBCのローレベルなところでコネクトするようなプログラムを書き、うしろのRDBからデータベースをひっぱったり、落としたりという」ことが可能になったそうです。

ファイルメーカー Serverの運用にはWindows NT 4.0を、クライアントにはWindows 2000マシンを使用している
ユーザー部門で開発できるメリットと、コントロールの必要性
このように優れた開発部門を持つ横河キューアンドエーだけに、ユーザーによる直接開発が可能なファイルメーカーProベースのシステムでも、きちんとコントロールをしているそうです。「一時はユーザー部門で自由にやらせていたんですが、収集がつかなくなるので、いまではやりたいことをヒアリングして、困らないようにフォローするようにしている」(師岡氏)ということです。現場にまかせてもきっとできるとは思うのですが、管理部門としては管理の都合上、複数のプロジェクトが独自に発展していっては、不都合が出る可能性もあるので、開発部門でコントロールするようにしたのだそうです。
同社のシステムは、クライアントからの要望があってから、データベースを立ち上げるまでに、1週間もかからずに行うことができるまでに完成しているそうです。これは、長年やっていることもあり、基本となるベースの属性情報が作られているから。それに追加したいものがある場合でも、1-2日で可能です。これは、短期での対応を要求される企業にとっては非常に強力なツールといえます。
最後に同社のパワーユーザー、師岡氏からアドバイス。「ファイルメーカーProはアイデア次第でいろいろなことができます。いまではメーリングリストなども発展しており、情報をひろいあつめて、根気よくやってほしいですね。あと、ファイルメーカーProはデータベースのところに分類されていてとっつきにくいかもしれませんが、クラリス、アップルの流れである使いやすさがありますから、まずさわって試してみてほしいな、と思います」
なお、今後のファイルメーカーProに対する要望として、師岡氏は次のように話てくれました。「今のファイルメーカーProは完成形に近いものです。使いやすさではほかのデータベースは追い付けないくらいなので、その部分は維持して、付加価値のところで勝負してほしいですね」
さまざまなクライアントの、細かい要求にまで対応できるサポートシステムを独力で作り上げた横河キューアンドエー。その中核となっているファイルメーカーProベースのシステムには、開発陣のノウハウがダイレクトに生かされています。これからも、新しい案件にすばやく、ていねいに対応していくことでしょう。
[松尾公也, ITmedia
]
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
前のページ
| 4/4 | 最初のページ