贈り物、ゲーム、場所、ランチ、読書――KDDIが選んだ5つのスタートアップ、そのアイデアとは(2/2 ページ)
KDDIによるベンシャー支援プログラム「KDDI∞Labo」が本格的に動き出す。多数の参加希望者の中から選考を勝ち上がった5チームが六本木のオフィスに集まり、それぞれのビジョンを説明した。
目指すはスマホならではの「すれ違い&ロケーションSNSサービス」
ARソリューションなどを展開するリアルサムライは、KDDI∞Laboを通じて「すれ違い&ロケーションSNSサービス」の実現を目指す。ユーザーの居場所とひもづいたクーポンやレビューのサービス、さらに同じエリアのユーザー同士がコミュニケーションを楽しんだり、すれ違いによってアイテムやコンテンツを交換するといった位置連携型のSNSを、同社の京保雄一代表は思い描いている。
クーポンサービスはグルーポンの展開する「グルーポン・ナウ」と同じく、端末の位置情報を使って現在地付近にある飲食店などのクーポンを見つけるというものだ。クーポンの提供側は、店舗の空き具合などに応じてクーポンをタイムリーに提供して集客に生かせる。さらに、利用したクーポン提供店舗のレビューを、ユーザーがその場所に投稿できるようなサービスも想定されている。
また、近くに居るユーザーとのコミュニケーション機能により、ローカルな情報をリアルタイムに交換できるようにする。同じ場所にいた者同士がアイテムやコンテンツを交換する“すれ違い通信”のような機能も取り込み、ゲーム的な面白みもあるSNSにしていきたいという。大手グルメサイトやクーポンサイトと連携してサービスを展開し、レベニューシェアなどで収益化する考えだ。
Webの力でランチを有意義なものに――「SyncLunch」
「つい先週法人化したばかり」というできたてホヤホヤのベンチャー、シンクランチが提供を予定するのは、ビジネスランチセッティングサービス「SyncLunch」だ。
同サービスでは、登録されたプロフィール情報などを参考にして会いたい人にランチを申請し、承認されれば相手と食事をともにしつつ情報交換ができる。
ユーザーにあったランチ相手をリコメンドする機能の実装が予定されており、開発が進んでいるという。同業者との情報交換はもちろん、ビジネスパートナー探し、あるいは就職活動における社員訪問など、さまざまな活用方法が想定されている。
同社の福山誠社長が個人で開発していた「ソーシャルランチ」というサービスがSyncLunchの原型だ。起業前はグーグルで働いていたという福山氏だが、ソーシャルランチの反響に手応えを感じ、同じくグーグル社員だった上村康太氏とともに起業を決意した。
両氏の信念は、「Webを通じた出会いをいつまでもタブーにしないこと」。Webを介して人と人とが安心してつながり、価値が生まれる世界を目指して開発を進めていく。さらに、人同士のつながりだけでなく、「人と店舗」や「人と起業」といったつながりも演出することで、収益化につなげていきたい考えだ。
電子書籍ならではの読書体験を作る「Qlippy」
SpinningWorksの白形洋一代表は、電子書籍の読書体験をユーザー同士で共有しあう「Qlippy」というサービスを開発している。すでにWebサイトとiPadアプリを提供中で、「誰がどんな本を読み、どんな風に思っているか」といった情報を共有することで、本の楽しみをバイラルで広げていくことができるという。
専用のビューワーアプリを使い、本の感想などを記録し、Qlippyのサーバーを通じて他のユーザーとこうした情報を共有する。読書をしながら、気になるユーザーが本のどんなところに注目したのかを知ったり、著者や編集者からのコメントが見られたり、疑問に思った部分を他のユーザーに聞いてみたりと、ソーシャルな読書体験ができるという。
作品を広めるプラットフォームとしてコンテンツプロバイダーに訴求し、広告の配信などで収益化を見込む。また、“本のどこで読むのをやめたか”といった、マーケティングに役立つ情報を提供するビジネスも構想しているという。
選出された5チームは今後3カ月間、KDDIのメンターや他社のアドバイザーらとディスカッションを行いながら、サービス開発を進めていくことになる。検証用端末やサーバ環境、さらにはOSなどの最新情報の提供などが受けられ、サービスの完成度によってはCMやau one Marketでの積極的な露出も期待できる。
KDDIはKDDI∞Laboの取り組みを定期的に実施していく考えで、今回の5チームはいわば“一期生”。グリーの青柳直樹CFOにして「日本で最も成功しているベンチャーキャピタルの1つ」とも言わしめるKDDIが、参加チームとどんなシナジーを生み、新サービスを創りだしていくのか。3カ月間の戦いの行方に注目が集まる。
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