スマホ好調のau、「auモメンタムが急速に回復」と田中社長
夏モデルのスマートフォンが好調な売れ行きを見せているKDDI。MNPはiPhone 4Sの投入を待たずに純増に転じ、通期の販売台数も「500万台は確実に超える」と田中社長が予測するなど目標の400万台を上回る見通しだ。
「(通期のスマートフォンの販売目標は)今期の初めに400万台を予定していたが、500万台を確実に超えると予想している」――。10月24日、KDDI 代表取締役社長の田中孝司氏は第2四半期の決算会見で、自らが先頭に立って推進してきたスマートフォンへのシフトが好調に推移していることをアピールした。
多彩なラインアップの夏モデルがスマートフォンへのシフトを加速させ、販売台数の向上に大きく貢献。上期の販売台数は191万台に達した。3月末の純増転換を目指していた番号ポータビリティも6カ月前倒しの9月に達成するなど、下期に向けた折り返し地点を順調なペースで通過し、「auモメンタムが急速に回復している」と自信を見せた。
KDDIの第2四半期の業績は、売上高1兆7433億円(前年同期比1.4%増)、営業利益2667億円(前年同期比7.6%増)の増収増益。移動通信事業は、売上高1兆3322億円(前年同期比2.1%増)、営業利益2311億円(前年同期比6.7%減)で増収減益。音声ARPUの下落などの影響で減益となったものの、進捗率は53.7%と堅調に推移している。
同社が業績回復の目安とする4つの指標からは、移動通信事業が改善傾向にあることが見てとれる。解約率は0.67%となり、前年同期比で0.06ポイント低下。番号ポータビリティの転出数は前年同期に比べて8万7000減少し、9月時点で9000の転入増に転換。auとUQを合わせた純増シェアは前年同期比9.3ポイント増の27.1%に達し、データARPUは前年同期比150円増の2460円となるなど右肩上がりの成長が続いている。
夏モデルの投入でスマートフォン販売に弾み
KDDIは上半期のモバイル事業の目標として“auモメンタムの回復”を掲げており、そのための施策としてスマートフォンへの本格的なシフトと新800MHz帯に対応した端末への移行を推進してきた。田中氏は、上半期の業績について「次なる成長に向けて順調なスタートを切った」と胸を張る。
スマートフォンの販売台数は、デザインケータイのさきがけとなったINFOBARのAndroid版「INFOBAR A01」やWiMAX対応でテザリングが可能な「HTC EVO WiMAX ISW11HT」、Windows Phone 7.5を搭載した「Windows Phone IS12T」など、バラエティに富んだラインアップの夏モデルが人気を博して「一気に加速した」と田中氏。上半期の累計販売台数は191万台となり、総販売数の37%をスマートフォンが占める結果となった。第2四半期単体ではスマートフォンの販売比率が5割に達するなど、順調に移行が進んでいる。また前述のとおり、番号ポータビリティは転出に歯止めがかかり、iPhone 4Sの投入を待たずに純増に転じた。
新800MHz帯への移行も、目標を上回るペースで進んでおり、上期の時点で予定数の64%が移行。うち91%がauにとどまるなど、解約率を低く抑えながら前倒しで進捗しているという。
下期で「auモメンタムの完全回復」目指す
KDDIが下期の移動通信事業の目標として掲げるのは「auモメンタムの完全回復」(田中氏)。具体的には、下期全体でのMNPの転入超過、30%を超える純増シェアの達成、期初予想通りのデータARPU(2540円)の実現を挙げる。目標を達成するための取り組みとして挙げるのが、商品力と販売力、データオフロードの強化だ。
商品力の強化については、WiMAX対応端末6機種の投入やiPhone 4Sの発売、auユーザー同士の無料通話と無料Cメールを実現する新料金プランの導入、定額聴き放題のクラウド型音楽配信サービスなどの施策を挙げ、クラウドと定額をキーワードに、新たな価値の創出を目指すと田中氏。中でも速度面で他キャリアに対する優位性を訴求でき、テザリングによるARPUの向上も見込めるほか、データオフロード対策にも貢献するWiMAX端末には大きな期待を寄せる。
販売力の強化は、量販店や携帯専門店に力を入れていくとともに、auショップをコンサルショップへと進化させることで対応。データのオフロードは、現在3万スポットに達したau Wi-Fiスポットを年度末10万スポットの実現に向けて拡張するほか、ライブドアから譲渡された無線LAN事業の有効活用、auひかりの無線LAN契約の拡大、WiMAXエリアの活用などの施策で、マルチネットワーク化を加速させる考えだ。
iPhoneやWindows Phoneの投入、WiMAX端末のラインアップ拡充、網内音声定額プランの導入など、次々と新たな施策を展開しているKDDI。田中氏はこの下期には「新たな時代を切り開いていく上で顧客基盤をより拡大し、強固にする必要がある」と述べ、スマートフォンシフトのさらなる強化とマルチネットワーク化の推進に向けた取り組みを本格化させると意気込んだ。
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