第44鉄 白銀の鉄路をSL列車で旅する〜SL冬の湿原号杉山淳一の+R Style(4/5 ページ)

» 2011年01月31日 11時13分 公開
[杉山淳一,Business Media 誠]

 車窓は真っ白な雪の大地と、風雪に耐える木々を映していた。夏のSL列車なら窓を開けて煙の匂いを嗅ぎ、トンネルで窓を閉めて……という面白さもあるけれど、冬の汽車の窓は閉め切りだ。それでも、時おり微かに聞こえる汽笛と、窓辺をふわりと通り過ぎる煙がある。釧路行きの場合、2号車のスハシ44は後ろから2両目で、カーブになると前方の機関車も見える。ほんのり微かに煙も香る。これが冬のSLの旅、蒸気機関車が闊歩した時代の旅だ。もっとも、客車は現在のほうが当時より格段に快適なはずだけど。

大雪原を往く
ときどき窓の外を煙が通り過ぎる
雪原には動物のあしあとが多数。鹿の群れと遭遇した
澄んだ川を横切る、変化に富んだ景色だ
まるで絵画のような風景にも出会える

 約1時間20分の旅は「ちょうどいいな」と思った。車窓右側に釧路湿原が広がって、雪に覆われた白い大地が続いていく。このまま雪景色が続くなんて、ちょっと退屈かなと思ったけれど、平原あり、林あり、小川ありで意外にも変化に富んでいる。それは素晴らしい眺めで、都会からの観光客にとっては別世界の体験だ。運がよければタンチヨウの優雅な振る舞いや、鹿の群れと並んで走ったりもする。だからこそ、「もうちょっと乗っていたかったのに」という気持ちが残る。このくらいがちょうどいい。誰かを誘ってもう一度、と思える。それに逆向きの機関車では、ずっと後ろ向きで働いている運転士さんが大変だと思うのだけれど、それは余計なお世話だろうか。


もうすぐ終点。釧路川の水面は凍っていた

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