細長い主翼とT型尾翼を持つ巨大なグライダーのような機体が、プロジェクトの拠点であるスイス・チューリッヒ近郊の飛行場に置かれている。2009年完成した「ソーラーインパルス」のプロトタイプ機──“HB-SIA”だ。
機体をできるだけ軽量化するため、基礎部分にはカーボンファイバー(炭素繊維)複合材料が使用されている。全体の重量は1600キロというから、わずか乗用車1台分に過ぎない。そう聞いてもすぐに信じられないのは、大きく広げた主翼が目に入るからだ。両翼の端から端までの長さは63.4メートル。エアバスの大型機A340と同サイズである。その大きな主翼に1万2000個の薄型ソーラーパネルが設置され、それが主翼の外皮を兼ねている。太陽光で発電しての飛行は過去にもNASA(米国航空宇宙局)などが成功しているが、いずれも太陽が昇っている昼間の時間帯の飛行だった。それに対してソーラーインパルスは、昼間蓄えた電力で夜間の時間帯も含む“永久飛行”を実現し、2週間から1カ月をかけて世界一周を果たそうという壮大な計画である。
「燃料がゼロだから、公害もゼロ。地球環境に対する人々の意識を高めることが私たちの大きな目的です」と、プロジェクトの広報担当は私に語った。「空気をまったく汚さない飛行機での世界一周を成功させ、人類はこんなこともできるんだということを強力にアピールしていきたい」
プロジェクトは2003年からスイスの技術者や冒険家らが中心になって進め、2009年12月にはプロトタイプ機“HB-SIA”による最初のテスト飛行に成功した。
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