井手 では、ブルーライトカットめがねで、どれくらい本来の眼精疲労がとれるのかということを簡単に実験してみました。これは自然な作業環境というよりも、強制的に短時間で負荷をかけて、どれくらい疲れるのかということを見てみました。
南青山アイクリニックで裸眼視力1.0以上を有する2群の患者さん、ボランティアですけども、ブルーライトカットメガネある、もしくはなしの群で実験を行いました。
フリーソフトのChipClickという、脳トレなどで使われているような、どんどん番号を画面上で追いかけていくという非常に疲れる作業を2時間していただきまして、この作業前後で視力検査、中心フリッカー、自覚症状に関する質問票に答えていただきました。
自覚症状に関しては、ブルーライトカットめがねで症状が統計的に有意に軽くなるのは、十数項目やったうちの4項目。「ピントが合わせにくい」「光がギラギラ」「文字がちかちか」「線を目で追いづらい」といった症状。
そして中心フリッカー、これはいろいろな色フリッカーがありますが、疲労に関するものは黄色フリッカーですので、今回黄色フリッカーを使いましてメガネがある群、ない群で比較してみたところ、統計的有意に、かけない群が大きく下がる、つまり疲れているということが分かりました。
これはかなり強制的な作業の後なので、実際の作業環境は反映していません。実際のオフィス環境ではどうかということで、マイクロソフトのボランティアに協力いただきまして、第1週目はブルーライトカットめがねをつけた状態、第2週目は非装用の状態、有効回答数124人でアンケート調査いたしました。
その結果、ブルーライトカットめがねの装用時は、14項目の質問のうち12項目が改善、そのうち11項目は統計的有意に改善しました。ブルーライトカットめがね非装用のときには、14項目中12項目が悪化、5項目は統計的有意に下がりました。装用群と非装用群では、5項目で統計的有意に明らかな差が見られました。
井手 射撃やスポーツのときに黄色いサングラスをかけている選手がいます。色相関、ちょうど180度反対側に位置する色同士は消しあうという特徴があるので、青っぽい光を消そうと、黄色もしくはオレンジ色っぽいレンズを使う。しかし、青色を全部消してしまうと、逆に分かりにくいということになってしまうので、ある程度バランスよくカットするということが必要になります。
ブルーライトは理論的には疲れや障害を引き起こします。実際に今回の2つの実験でもブルーライトカットめがねで自覚症状が改善しました。これ以外にも自然な色バランスを保って、目に負担をかけないブルーライトカットアイテムを日常的に取り入れることが有効です。
ただ、問題点もありまして、まだ第1回の研究会ということで、正直データも集まってない、客観的なデータがまだ不足している。ブルーライトブロックによるサーカディアンリズムの崩れの可能性では、ずっとブロックすることによって逆に体内時計が狂ってしまう可能性もある。ですから、夜、暗いときにかけるのはいいですけども、昼間かけることがいいのかどうかといった情報がまだ必要だと思います。
今回、私が色つきメガネをかけているので、「あいつは何だ?」と思われたかもしれません。こういった色つきメガネをかけることに対する社会的なコンセンサスというのが確立されないかぎり、なかなかみなさんかけられない。特にお堅い仕事の場合はかけられないということがあるかもしれません。
また、ブルーライトというのは、論文にもあるのですが集中力や仕事の効率を増すという報告もあります。ですからどういうときに、どういった状況で使ったらいいのかといった研究もこれから必要だと思います。以上です、ありがとうございました。
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