ドイツが威信をかけて育てた、スマート「エレクトリック・ドライブ」試乗インプレッション(3/5 ページ)

» 2012年10月31日 08時00分 公開
[川端由美,Business Media 誠]

「走るシケイン」は返上した3代目スマートED

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 3代目では最高出力55キロワット/最大トルク130ニュートンメートルへと心臓部を強化し、最高速を時速125キロまで高めた。エンジン車のスマートと同じく、衝突安全性を高める役割を担うトリディオンセルを持ち、EVではその内側に抱え込むように電池モジュールを設置する。運転席の後ろに積まれていたエンジンとトランスミッションの代わりに、モーターとインバーターが搭載されている。これにより、万が一の事故の際にも電池を守れるし、エンジン車と同じ居住空間を確保できる。

 小さなドアを開けて大ぶりなシートに乗り込むと、グリーンを基調にデザインされたスピードメーターが目に飛び込む。時速150キロまで刻まれているのは、ブラバス仕様が用意されているからだろうか。エンジン車ではタコメーターと時計だった部分が、EVでは電池残量と出力を知らせるメーターに変わっている。瞬発力を望むなら、アクセレレーターに載せた右足をぐっと踏み込めばいい。その瞬間、エンジン車とは比べ物にならない加速感で身体がシートに押し付けられる。時速60キロまでの加速が4.8秒まで向上し、発進時の加速も鋭さを増した。

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 一方で、郊外に向かう幹線道路では滑らかな加速を披露する。EVでは変速の必要がないため、エンジン車のスマートで感じる変速時のギクシャク感とも無縁だ。むしろ、シームレスな加速が心地よい。最高速も時速125キロまで高められており、もうこれで「走るシケイン」とは呼ばれないはずだ。

 巡航距離は135キロから145キロ(EUモード)まで向上し、社内のデータでは約190キロまで走行した実績もあるという。瞬時に大きな加速を生むEVの特性は都市部の交通に向いているし、電池やモーター/インバーターといったパワートレーンを一新した結果、郊外からの通勤にも使えるまでになった。

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