2012年宇宙の旅。ヴァージンギャラクティックが主催する夢の宇宙旅行:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
“飛行機と空と旅”がこの連載のテーマであるが、今回は大気圏を飛び出し、高度110キロの宇宙空間へ──。輝く星々や青い地球をスペースシップから眺める夢の宇宙旅行が、いよいよ2012年にも実現する。
宇宙空港「スペースポートアメリカ」
スペースシップ2の実用化に向けたテスト飛行が続く一方で、2010年10月には米ニューメキシコ州南部で世界初となる宇宙旅行専用の“空港”が完成・披露された。
宇宙空港の正式名称は「スペースポートアメリカ」だ。ニューメキシコ州が2005年より約200億円を投じ、同州南部の砂漠地帯で建設を進めてきた。ここは近くに米陸軍の施設があるため上空が飛行禁止区域に指定され、宇宙にスペースシップを打ち上げるには最適な土地である。晴天率も年間300日と高い。周辺で暮らす人たちによる住民投票の結果、宇宙空港建設のための特別消費税0.25%が導入されるなど、地元も歓迎ムードに包まれている。3000メートルの滑走路も完成し、2011年中にはターミナルビルもグランドオープンする。
では、このスペースポートを起点に、今度どんな宇宙旅行が実現するのか? 最後にその概要について紹介しておこう。
2時間のフライトで1人20万ドル
詳細はこうだ。マザーシップで高度16キロ付近まで運ばれたスペースシップは、切り離しが行われたあとでロケットエンジンを始動させ、音速の3倍のスピードで3.5Gの重力加速度を身体に感じながら高度110キロの宇宙空間へ。約4分間、無重力空間を体験し、スペースシップのパノラマウインドウから無限に広がる漆黒の宇宙空間で透明に輝く星々や地球の“生”の姿を楽しむ。トータル約2時間のフライトである。
1回のフライトの定員は6名。2名のパイロットが同行する。日本ではクラブツーリズムが販売にあたり、企業経営者などすでに12人の日本人から申し込みがあった。6名の貸し切りフライトも設定している。
気になる値段だが、3日間の事前訓練なども含めて1人20万USドル(2011年7月のレートで約1600万円)。これが高いか安いかは分からないが、冒頭に記した宇宙での“神秘体験”に関心がある人は真剣に検討してみては? もちろん、銀行に8桁以上の預金があれば──という条件がつくけれど。いずれにしても、民間人旅行者を乗せたスペースシップの初便は、2012年にも発進する。宇宙旅行に関する問い合わせはクラブツーリクラブツーリズムへ(宇宙旅行クラブ事務局=電話03-4335-1800、http://www.club-t.com/space/)。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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