パン・コロッケ・ラーメン――今、食べ物の名前がタイトルに入った映画がブーム!?:映画ウラ事情
『しあわせのパン』『犬の首輪とコロッケと』『イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘』『メンゲキ!』。すべて1月28日公開の映画のタイトルだ。
「映画ウラ事情」とは:
映画専門サイト「ハリウッドチャンネル」で連載中の、映画業界のウラ側や疑問を読み解く納得のコラム(※この記事は、ハリウッドチャンネルより転載しています)。
『チャーリーとチョコレート工場』『ショコラ』『UDON』『THE 焼肉 MOVIE プルコギ』『ラーメンガール』など、食べ物の名前がタイトルに入っている映画が、洋邦問わず、いろいろと公開されてきた。とはいえ、どの作品も公開年月日はバラバラで、年数をかけてタイトルが揃った結果である。
だが、驚くべきことに、『しあわせのパン』『犬の首輪とコロッケと』『イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘』『メンゲキ!』と、食べ物の名前がタイトルに入った4本の映画が、なんと1月28日に公開(『メンゲキ!』は関西・福岡地区先行公開、2月4日より全国公開)。また、2011年10月22日に九州で一斉公開され、4月7日より全国10館で拡大公開中の映画『ラーメン侍』なんてタイトルもある。いや、この状況、もはやただことではないでしょう。もしかして、食べ物タイトルブームが来ているとか!?
だったら調査せねば! と意気込んだのだが、「そんなことはないと思いますよ」と、いきなり意気消沈の答えが関係者から返ってきた。
「というのも、この日の公開となったのは、劇場サイドとのブッキングがたまたま重なっただけで、食べ物タイトルが揃うことを狙って、あえて28日にしたわけではないからです。また、どの作品も小から中規模公開の作品であり、かつ、ジャンルもバラバラであるため、重なったところで別に問題なし、というのが本音だと思います(『イエロー・ケーキ クリーンなエネルギーという嘘』は原発の燃料となるウラン採掘の闇を描く映画)。これが、ジャンルも同じで300館以上の拡大公開する作品とのバッティングだったら、公開を1週早めたり、遅らせたりするかもしれませんが、そもそも、単館系と大作の観客層はあまり被りませんからね」
公開が重なったのは偶然で、特にブームが来たわけではないとしても、なぜタイトルに食べ物の名前を入れるのだろうか。業界内に“食べ物の名前を作品に入れるとヒットする”といったジンクスなどがあるのだろうか。
「そういったジンクスを聞いたことはないのですが、食べ物の名前が入ると、印象には残りますよね。例えば、『UDON』『THE 焼肉 MOVIE プルコギ』のように、何も知らない状態でタイトルだけを聞いたら、内容の検討がつかないのはもちろんのこと、それがドキュメンタリーなのか、フィクションなのかも分からないのではないでしょうか。でも、平凡なタイトルよりは強烈なインパクトを確実に与えてくれる。だって、うどんとプルコギですよ? そういった面で、食べ物の名前が入ったタイトルは美味しいと思います。ただ、それは逆に、間口を狭める場合もあります。タイトルに入った食べ物はさほど劇中に出てこないのに、その食べ物には興味がないから観ない、といったことも考えられますから」。
また、「そういった食べ物が入ったタイトルはこれからも出てくるでしょうが、さほど多くもなく、ブームにはならないと思いますよ」と、前述の関係者は付け加えてくれた。確かに、ご飯、味噌汁、漬物、納豆みたいなタイトルが並ばれても……それはそれで、ちょっと面白そうかもしれない。
映画ライター:安保有希子
1975年生まれ。夕刊フジ、日経エンタテインメント、DVDレビューなど、新聞・雑誌で執筆する傍ら、ラジオで映画コメンテーターを務める。ジャンルを問わず映画を鑑賞するが、好んで足を運ぶのは、B級とホラーとアニメ。そのため、オタクと勘違いされやすいものの、決してそうではない、と頑なに言い張っている。
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