上空1万2000メートルで味わう牛丼「AIR 吉野家」、それは“つゆだく”
JALの国際線の機内食に、まさかの「吉野家の牛丼(並)」が登場した。機内にただよう牛丼の香り、果たしてJAL利用客に受け入れられるのか?
JALの機内にただよう牛丼の香り。モスバーガーや横浜中華街の有名肉まん店とのコラボを次々と仕掛けているJALのAIRシリーズ第3弾が始まった。利用者の8割が男性客という吉野家の牛丼は、JALの利用客に受け入れられるのだろうか。
日本航空は3月1日、日本発の欧米路線において吉野家の牛丼を忠実に再現した機内食「AIR 吉野家」を提供する。期間は5月31日までの3カ月で、ファーストクラスからエコノミークラスまでの全クラスが対象。
コンセプトは「上空1万2000メートルの機内で味わう日本伝統の味」。単なる牛丼ではなく、吉野家の牛丼をそのまま提供するためにJALでは4つのポイントに取り組んだ。結論から先に書くと、記者が試食した限り、味わいは完全に吉野家の牛丼だった。
1つめは「できたて感」。通常、平皿で提供する機内食だが、どんぶりらしさを出すために専用の耐熱ボックスを開発。箱を開けると2層構造になっていて、上部が「牛皿」、下部が国産あきたこまちのセパレートタイプで提供する。乗客みずからが具をご飯に乗せることで、その場でご飯につゆが染み込んでいき、「地上と同じ最高の状態の牛丼」になるという。
2つめのポイントは「つゆだく」。吉野家ファンならご存じと思うが、これは「牛丼のつゆが少し多め」というオーダー。なぜ、つゆだくなのか。「飛行機の機内は湿度が低く、上空1万2000メートルともなると0%近くになります。お客さまは、長時間のフライトでのどがからからになっている状態ですから、つゆだくにしました」(開発責任者の田中誠二マネージャー)。なお、先述のとおり、具は自分で乗せるスタイルのため「つゆぎり」にすることも可能だ。
3つめは、「1度に3度おいしい」食べ方。箱を開けた段階では、ご飯と具が別々になった牛皿の状態、これを盛り付けることで牛丼に。では、田中マネージャーがいう3つめのスタイルとは何か。それは「紅生姜(べにしょうが)」と「七味」も吉野家で提供しているものと同じものを用意していること。じゃっかん苦しい気もするが、細部まで本物にこだわったということだろう。
そして4つめは、デザイン。吉野家の雰囲気を再現するため、特製ボックスの柄は吉野家のどんぶり風に、トレーに敷いた紙(トレーマット)には吉野家のオレンジとロゴを配置。白菜のお新香も吉野家と同じものを添える。なお、AIR 吉野家は「並」相当だ。田中マネージャーによると「みそ汁」などのサイドメニューは、サービスの提供時間がかかり過ぎるという理由で見送られた。
「牛丼といえば吉野家」――JAL、植木社長
なぜここまで本物にこだわるのか。JALの植木義晴社長は「AIRシリーズでは、革新性と本物志向を追求している。吉野家の牛丼は若者から年配の人まで、広く日本人に愛され、選ばれている。JALも日本のおもてなしの心でもって同じように世界中の人に愛され、選ばれる航空会社にしたい」という。また、数ある牛丼チェーンの中で吉野家を選んだ理由を問われると「牛丼といえば吉野家だから」ときわめてシンプルに回答した。
また、吉野家ホールディングスの安部修仁社長は、吉野家の牛丼を再現したいというJALの「特製ボックスをはじめとするパッケージデザイン、機能性などわれわれの発想にないアイデア」を高く評価。「男女比8:2の吉野家なので、JAL便で“吉野家デビュー”する女性客も多いのでは」と期待をふくらませていた。
提供路線は、日本発のニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、ロンドン、フランクフルトの5路線。基本的には目的地到着前の2回目の食事として提供するが、ファーストクラスとエグゼクティブクラスでは1食目の後ならば好きなタイミングでオーダーできるアラカルトメニュー「Anytime You Wishサービス」の1つになる。期間中の提供予定数は7万5000食。事情により牛肉が食べられない人向けのスペシャルミールも用意する。
また、5月に該当路線に搭乗した人を対象とするキャンペーンも予定する。詳細は未定だが、「鶴丸」の入った吉野家特製どんぶりなどが当たる。
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