30年経った今だから話せる、初代G-SHOCK開発秘話――エンジニア・伊部菊雄さん:G-SHOCK 30TH INTERVIEW(5/5 ページ)
2013年4月に誕生30周年を迎えるG-SHOCK。誠 Styleでは「G-SHOCK 30TH INTERVIEW」と題して、G-SHOCKにまつわるインタビューを毎月1本ずつ掲載していく。1回目は初代G-SHOCKを設計したエンジニア、伊部菊雄さんに開発の裏側を聞いた。
――そういえば、「CASIO」とだけ付いている御社のノーブランドの電波時計が、すごく売れているという話を聞きました。
伊部 あ、それをもともと最初にやったのは私です。9800円でCASIOとだけついてる電波時計。今のモジュールの仕事になる前に、CASIOとだけついている時計の商品企画をいろいろやっていました。「安くていいもの」は私の得意分野なんですよ。高い商品、苦手なんです(笑)。
OCEANUSも立ち上げのときに担当してたんですが、高い商品は苦手で……というか、売れないと困る製品なんですよね、あれ。プロモーションはかけてくれる、雑誌には載せてもらえる……どちらかというと育ちがいい商品なんですね。自分がそれほど育ちがいいわけではないので、どうも性に合わないというか(笑)
――いえいえ、そんな(笑)。もし伊部さんがまた、もう一度G-SHOCKを作ることになったら、どんな時計を作ってみたいですか?
伊部 G-SHOCKじゃなくてもいいんですけど、作ってみたい時計はありますねえ。1つはコミュニケーションに特化した時計。
――コミュニケーション?
伊部 僕が例えばスペインの人と会ったとして、時計に日本語で話しかけるとスペイン語の翻訳してくれて、それを聞いたスペイン人の人がスペイン語で自分の時計に話しかけると日本語に翻訳されて僕に伝わってきて……という時計があったらいいですよねえ。自動翻訳機能といえばいいですかね。
――確かに、言葉の壁ってありますものね。伊部さんは特にSHOCK THE WORLDツアーで世界中に行かれて、いろんな国の方に会うから……そういう時計が欲しい、という気持ちはすごく分かります。ほかにもあります?
伊部 ありますよ。もう1つはね、「念力ウオッチ」。
――え、念力?
伊部 念力ウオッチというのはですね、こうして打ち合わせとか、会議で話し合っていて、時間が気になることがあるじゃないですか。でも、時間を知ろうと時計を見ると、すごく失礼でしょう。「今何時だろうなあ?」って思ったら、頭に時間がパッと浮かぶ時計ね。自分としては、それ、すごーく欲しいなあと思ってずっと考えてるんですけど……作り方が分からない。名前だけは決まってるんですよ、念力ウオッチ。30年くらい考えてるんですけどねぇ……いまだにできない。
――なるほど! 時計を見ると、なんだか話をやめたいみたいですものね(笑)。今日はどうもありがとうございました。
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