シンガポール航空が立ち上げた新しいLCC、スクートを丸ごと体験:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
シンガポールを拠点に2012年6月に運航を開始した新しいLCC、スクートが急成長中だ。同年10月には台北(桃園)線を延長する形で成田にも就航。日本からの利用者に旅の新たな選択肢を提供してくれる同社のフライトを体験した。
“プライスレス”なサポート
そんなリーダーに率いられたクルーたちも、とにかくフレンドリーで陽気だ。「採用にあたっては人間性を最も重視した」とウィルソン氏はいう。一方で、パイロットもキャビンクルーも訓練は定評あるシンガポール航空の施設で受けているせいか、機内では乗客への対応が行き届いている。動きに無駄がない。
離陸して水平飛行に移ると、事前に予約を受けた各種ミールが、リストをもとに速やかに乗客に届けられていく。機内食の注文はもちろん、搭乗後でも可能だ。ただし「ホットミールはご注文を受けてから暖めますので、30分ほどお待ちいただきます」といっていたので、オーダーする場合は早めがいいだろう。事前予約なら、日本路線の「スキヤキ」やオーストラリア路線の「ミートパイ」といったご当地メニューも味わえる。
スクートビズの利用者には、映画やテレビプログラムなどの機内エンターテインメント「Scoo TV」が楽しめるタブレット端末も配布される。機内ストリームによる機内エンターテインメントはアジアの航空会社では初めて。またWi-Fi機能をもつラップトップやタブレットがあれば、乗客自身の端末でもOKだ。
キャビンクルーは現在、スクート全体で約300名いて、日本人も14名が在籍している。私たちが利用したTZ201便には9名のクルーが乗務し、チャンギ空港到着後に「お客さんが降りられてからぜひみなさんで記念撮影を」とリクエストしてみたら、機長も含めて全員で快く協力してくれた。
他のLCCと同様、エコノミークラス利用の場合は食事や機内エンターテインメントは有料になるが、クルーたちの笑顔にはもちろん追加料金はかからない。日本から台北やシンガポールへ、そしてシンガポールを拠点にアジアやオセアニアの各都市へ。黄色と黒のユニフォームに身を包んだクルーたちの“プライスレス”なサポートを受けながら、まずは一度、実際に飛んでみることをおすすめしたい。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
関連記事
- 「秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話」バックナンバー
- “最強”の呼び声も高いシンガポール航空のビジネスクラス
エアライン人気ランキングで常にトップ3の一角を占めてきたシンガポール航空。なかでも長距離用機材に搭載しているビジネスクラスは「最強」と評価する人が少なくない。エアバスA380で運航する成田からシンガポールへのSQ011便で、極上のフライトを体験した。 - これがファーストクラスの最高峰、エミレーツ航空の「プライベートスイート」だ
贅沢の粋をきわめたエアライン各社のファーストクラスのなかでも、エミレーツ航空がオール2階建て機エアバスA380に設置した個室キャビン「プライベートスイート」はとにかくスゴい! 成田からドバイへのEK319便で体験した、極上の空のもてなしをレポートする。 - エアアジアXとマレー鉄道の旅
LCCでありながら中距離路線を運航するエアアジアXは、大型の機材を使用し、エコノミーのみならず上級クラスのサービスも提供している。そんな同社のプレミアムクラスの取材を兼ねて私たちは羽田からクアラルンプールへ飛び、さらにマレー鉄道で世界遺産の街マラッカを目指した。 - エアアジア・ジャパン、不振の原因は何だったのか?
日本で本格的なLCC(格安航空会社)3社が就航して1年が過ぎ、その明暗がはっきり出ている。エアアジア・ジャパンの苦戦の理由として関係者やアナリストが指摘するものは、いずれも十分納得できるものではない。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.