ドレスアップのためのクロノグラフ:LONGINES HERITAGE COLLECTION
クロノグラフ=スポーティというイメージは間違っている。端正なケースデザインを持つドレッシーなクロノグラフは、特別なシーンでこそ活躍する別格の小道具となる。
著者プロフィール:篠田哲生(しのだ・てつお)
1975年生まれ。時計ライター。講談社『ホット ドッグ・プレス』を経て、フリーランスに。時計学校を修了した実践派で、時計専門誌からファッション誌、Webなど幅広い媒体で時計記事を執筆。高級時計からカジュアルウォッチまでを守備範囲とし、カジュアルウォッチの検索サイト『Gressive Off Style』のディレクションも担当。著書に『成功者はなぜウブロの時計に惹かれるのか。』(幻冬舎)がある。
経過時間を計測するクロノグラフは、主にスポーツ計時の世界で活躍することで機能を磨いてきた。そのためスポーツウオッチとして使用されることが多いと思われがちだ。ところがアンティークウオッチ市場を見ていると、良好なコンディションを保ったドレッシーなデザインのクロノグラフが多いことに気が付く。
時計文化から見るクロノグラフ
生産技術が向上した現在では、かなり一般的な機構となったクロノグラフだが、1960年代までは優れた技術を必要とするコンプリケーションのひとつ。普通の3針時計とはクラスの異なる別格の時計だった。
そのためクロノグラフを持つことは、それだけでステイタスとなった。各時計メーカーはゴールドケースを使ったドレッシーなケースにクロノグラフ機構を納めるハイエンドモデルを作って、上顧客に販売していたのだ。
特にクロノグラフを好んだのは、将校や医師、弁護士といった知的階級だったため、いつしかクロノグラフは“知的なアイコン”となり、家宝として大切に扱われるようになる。日常用の時計ではなく、特別なシーンに登場する特別な時計であったがゆえにコンディションの良いドレッシーなクロノグラフが多数現存し、アンティークウオッチ市場で評価され続けているのである。
特にロンジンの傑作ムーブメント「キャリバーL13ZN」や「キャリバーL30CH」を搭載した1930〜50年代のクロノグラフは、アンティークウオッチ市場でも至宝とされており、知的階層に愛されていた当時の空気を現在に伝えている。
受け継がれるドレッシースタイル
クロノグラフの名門であるロンジンの名声を受け継ぐのが、ヘリテージコレクションの3つのクロノグラフだ。
「ロンジン ヘリテージ 1942」は1942年製モデル、「ロンジン ヘリテージ 1951」は1951年製モデル、「ロンジン ヘリテージ 1954」は1954年製モデルのデザインやたたずまいをベースにしているが、どれもがアンティークウオッチ市場で見るようなロンジン黄金期のスタイルを踏襲している。
例えばベゼルを薄く、針もスリムに仕上げることでドレッシーな雰囲気を作り、ケースサイズも40〜41ミリとやや小ぶりに抑えることで端正な美しさを重視した。すべてがアリゲーターストラップ仕様というのも特徴であり、ドレスアップの小道具として最適である。
このようなたたずまいであれば、スーツスタイルと組み合わせるのも悪くない。大きくて押し出しの強いスポーティ系クロノグラフの場合は、スーツに合わせるには少々過剰に見えてしまう。しかしヘリテージコレクションのクロノグラフであれば、サイズのバランスがよくて腕にもしっかり馴染み、デザインにも品格があるので、ビジネスウオッチとして活躍してくれるだろう。
ロンジンのクロノグラフが受け継いできたヘリテージのひとつである“知的なイメージ”は、3つのヘリテージモデルに確実に受け継がれている。
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