【緊急寄稿】「離着陸時もスマホ使用を許可」の背景は?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/3 ページ)
米連邦航空局(FAA)は10月31日、離着陸時でもスマートフォンなどの電子機器の使用を認める規制緩和案を発表した。これまで一貫して出発時や到着時に「電源オフ」を求めてきたのを一転、利用を許可した背景には、何があるのか?
米連邦航空局(FAA)は2013年10月31日、離着陸時でもスマートフォンなどの電子機器の使用を認める規制緩和案を発表した。通話など電波を発信する行為は引き続き禁止されるが、電波を発しない設定にすれば、機内でいつでもタブレット端末などで映画や音楽、ゲームを楽しむことができるようになる。これまで一貫して出発時や到着時に「電源オフ」を求めてきたのを一転、利用を許可した背景には、何があるのか?
コクピットの計器がいきなり狂い始める?
機内にアナウンスが流れる。「当機は間もなく離陸します。お手持ちの携帯電話は電源をお切りいただくか、機内モードにしてご使用をお控えください」。その後、客室乗務員がキャビンをひととおりチェックして歩く。ときどき何人かの乗客に電源を切るよう促している光景も、今では見慣れたものになった。
ところが、目の前を乗務員が通り過ぎると、バッグやポケットからこそこそ携帯を取り出して使い始める人がいる。なかには、堂々とメールを打ち続けている人も。これはもちろん、法律で禁止された違法行為だ。日本では2004年1月に「改正航空法」が施行され、2007年6月には機内での携帯使用による初めての逮捕者も出た。
たかが携帯電話ぐらい──という意見も、実は当時から少なくなかった。では、そもそもなぜ禁止だったのか?
旅客機の計器類や自動操縦システムは、ほとんど電波だけを頼りに動いている。地上からの電波を機体のアンテナで受信して現在位置を確認したり、飛行状況のデータを電波に乗せて地上の管制塔へ知らせたり。携帯電話などの電子機器は、そこから発信される電波が本来受信すべき電波を妨害し、コクピットのコンピュータを誤作動させる恐れがあるというのが禁止を決めた側の“根拠”だった。フライト中にコクピット内の計器がいきなり狂い始め、携帯を使用していた乗客をつきとめて電源を切らせたら狂っていた針がピタリと正常に戻る──そんなことが現実に起こっているという噂を私も聞いたことがある。
が、これはあくまで「噂」であり、どの便のいつどこでの出来事だったかを調べても、具体的な事実は浮かび上がらなかった。
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