「航空ベンチャー」ではあっても「LCC」ではない──スカイマーク 西久保愼一社長に聞く:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/3 ページ)
スカイマークは2014年3月、プレミアムシートのみを搭載したエアバスA330-300を羽田−福岡などの国内幹線に導入する。同社を率いる西久保愼一社長に、その戦略と今後のプランなどを聞いた。
総2階建てのA380でニューヨークへ
──ところで、同じ中型機でも選択肢はいろいろあったと思います。注目のボーイング787や、エアバスが開発中のA350はスカイマークの新しい機材として候補に挙がらなかったのですか?
西久保: まったく挙がらなかったですね。
──では、A330-300に絞った理由は?
西久保: ずばり、安いからですよ。ボーイング787やエアバスA350は、新しいテクノロジーが搭載されて確かに快適なのだと思います。その一方で、そうしたニューモデルが市場に出てきた結果、もともと一定の快適性をもっていたA330の価格が相対的に安くなりました。われわれとしては、まさにいまこそクオリティの高いシートを安く提供できるタイミングだと判断して導入に踏み切ったのです。
──日本ではスカイマークが初めての導入になるわけですが、もともとA330-300も世界的に評価の高い機種ですよね。
西久保: そう思います。A330は誕生から多くの改良が重ねられ、同じクラスの航空機のなかでも1席あたりの運航コスト効率がきわめて高いモデルとして完成しました。大手キャリアを中心に、新規に導入する会社がどんどん増えています。その「信頼性の高さ」という点は、運航する側にとってとても重要な要素ですね。
──A330-300の導入により航続距離もぐっと延びるわけですが、いずれはこの機材で海外へという目論みもあるのでしょうか?
西久保: 確かにハワイくらいまでは飛ばせる飛行機ですが、私たちはA330については国内幹線だけでの使用しか考えていません。
──A330は国内線の柱とし、スカイマークの国際線はあのA380に託そうと。2014年1月に入って、スカイマーク塗装のA380初号機の尾翼がトゥールーズのエアバス本社に到着し、最終組み立て作業がスタートしたいうニュースが入ってきました。いよいよですね。
西久保: まだ具体的な時期は申し上げられませんが、2014年にA380の1号機を受領し、早い時期に成田−ニューヨーク線に投入するための準備を社員一丸となって現在進めています。
──「空飛ぶ豪華ホテル」といわれるあのオール2階建て機を全席ビジネスとプレミアムエコノミーのみの仕様で運航するというのが、とても楽しみです。それが果たして、どれくらいの運賃で提供されるのか? 長距離路線だけに、機内でのエンターテインメントなどのサービスも登場するのか? 検討を始めているとも伝えられるマイレージプログラムは? 取材したい点が山ほどあって、待ちきれません(笑)
西久保: ありがとうございます。A380については、導入時期の詳細なども含めて、改めてきちんと発表させてください。成田からニューヨークまでのフライトも体験取材していただきたいと思っています。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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