巨大なゾウさんが空を行く? ジャンボ機エピソード集:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(3/4 ページ)
1970年にデビューして以来、世界の空で活躍を続けてきたボーイング747。ジャンボ機ならではの裏話やこぼれ話も少なくない。今回は、そんなエピソードを集めてみた。
貨物機のノーズオペレーション
747は機体の前方部分に2階席を設けているため、その独特のシルエットでどの方向からでも「ジャンボ機だ!」と分かる。特に個性的なのが、コクピットまわりの「顔つき」だ。将来の貨物機への転用を考え、機首に大きなカーゴドアを備えられるようにコクピットを高い位置に置いて設計された。
世界の主要な空港では、いまもボーイング747貨物専用機の「ノーズオペレーション」と呼ばれるユニークな作業風景に出会うとこができる。747貨物専用機は大きな(長い)貨物を出し入れできるように、機首の部分が上に持ち上がるように開く。貨物ターミナルは旅客ターミナルからは少し離れたところにあり、見られるチャンスはそう多くはないものの、ノーズオペレーションが行われる日は展望デッキから望遠鏡で見学しているファンも少なくない。
コクピット裏の秘密部屋
ハイテクジャンボと呼ばれた747-400からは、それまでの航空機関士(フライトエンジニア)を含めた3名乗務体制が、機長と副操縦士の2名乗務体制に変わった。しかし欧米路線などの長距離フライトでは、機長2名と副操縦士1名の3人の組み合わせで交代で乗務に就くという決まりがある。これは、3人のパイロットで操縦するという意味ではない。12時間のフライトなら、操縦席に座る機長と副操縦士の乗務時間は合計24時間。その24時間を、3人のクルーで8時間ずつ分担するのだ。
そのため長距離用の大型機には、機内に交代のパイロットが仮眠をとるためのクルーレスト(休憩室)が設けられている。通常は天井裏のスペースなどが利用されているが、ジャンボ機ではコクピットの後方部分をクルーレストに活用。他機種にくらべてゆったりしたスペースがとられている。747-400では一度コクピットのドアを出てクルーレストに入るが、最新の747-8インタコンチネンタルでは、コクピットから直接アクセスできるようになった。
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