巨大なゾウさんが空を行く? ジャンボ機エピソード集:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(4/4 ページ)
1970年にデビューして以来、世界の空で活躍を続けてきたボーイング747。ジャンボ機ならではの裏話やこぼれ話も少なくない。今回は、そんなエピソードを集めてみた。
空飛ぶクジラがブームの走り
さまざまな国のエアラインが乗り入れる各国の主要空港では、駐機している旅客機の機体に描かれたデザインを見比べてみるのも楽しい。エアラインの数だけマーキング(機体ペイント)のバリエーションがあり、どれもみな個性的だ。大型機では、ボディ全体に塗られている塗料の量はドラム缶で数本分にもなり、それを0.1ミリ程度の均一の薄さで塗ってペイントを完成させていく。
ところで、近年はそれまでの機体ペイントとは異なる手法が開発された。塗装の代わりに、2メートル×1メートル程度の大きさの特殊なシールを機体に貼り合わせていく方法だ。空港へ行くと、駐機中の機体を指さして子供たちが大騒ぎしている光景に出会うことがある。子供たちの視線を釘付けにしていた代表格が、ANAの「ポケモンジェット」。これも、シールを貼り付ける方法で実現した特別塗装機である。
この特別塗装機のブームの走りとなったのが、巨大なクジラを機体に描いたANAの「マリンジャンボ」だった。1993年秋にANAは乗客5億人突破を記念して機体のカラーデザインを全国の小・中学生から公募。そこで選ばれたのが、クジラと海の仲間たちを描いたデザインだ。特別塗装機ブームはその後、各国に飛び火し、現在は世界のあちこちの空で個性あふれる機体に出会えるようになっている。
ギネスにも登録された巨大工場
ジャンボ機(747-400)のサイズは全長70.7メートル、翼幅64.4メートル、全高19.4メートル。ボーイングはかつて、その巨大な旅客機を製造するために、新しく工場を建設しなけらばならなかった。そこで完成させたのが、シアトル郊外にある大型機製造ライン、エバレット工場だ。床面積39万8000平方メートル、容積は1330万平方メートルという圧巻のスケールを誇る。
ボーイングはシアトル周辺にいくつかの工場を展開しているが、エバレット工場は世界一大きな建物としてギネスブックにも登録された。現在は最新鋭の787のほか、次世代ジャンボとして最近デビューした747-8インターコンチネンタルもここで開発・製造が進められている。
最新大型機の製造現場を見てみたい!──そう願う人は、一度シアトルに足を運んでみよう。エバレット工場へはシアトル市内からもツアーが用意され、製造・組み立て中の787や747-8、777などを見学することができる。ツアー中の写真撮影は残念ながら禁止だが、巨大な工場の現場に立ち、目の前で機体が完成していく光景は迫力満点。見学の前後には各種の飛行機グッズを揃えたボーイングストアでショッピングも楽しめる。
著者プロフィール:秋本俊二
作家/航空ジャーナリスト。東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら各メディアにリポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオのコメンテーターとしても活動。
著書に『ボーイング787まるごと解説』『ボーイング777機長まるごと体験』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』『もっと知りたい旅客機の疑問50』『みんなが知りたい空港の疑問50』『エアバスA380まるごと解説』(以上ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)、『新いますぐ飛行機に乗りたくなる本』(NNA)など。
Blog『雲の上の書斎から』は多くの旅行ファン、航空ファンのほかエアライン関係者やマスコミ関係者にも支持を集めている。
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