メタルケースの電波ソーラーは何が難しい?――2004年のOCEANUSを振り返る:OCEANUS10周年(4/5 ページ)
メタル電波ソーラーウオッチ「OCEANUS」は今年で10周年。10年の歴史を技術的に振り返ると、それは電波ソーラーウオッチの進化の歴史でもあった……。今回のインタビューは、部品写真多めでお送りします。
現行モデルでは「機能重視」から「デザイン重視」へと製品戦略をシフト
さてここからは、現在店頭に並んでいる現行モデル「OCW-S2400(参照記事)」と「OCW-S3000(参照記事)」の話になる。OCW-S2400が発売されたのは、2012年9月。実はこのモデルの発売に当たって、カシオではOCEANUSの製品戦略を大きく転換したという。
「これまでは、どちらかというとまずは機能ありきで、それを表現するためのデザインを考えるという製品開発のスタイルをとってきました。しかし、やはりお客さまがアナログ時計に求めるものは、機能よりもまずはデザインや質感が先に来ます。それに、モジュールの機能や技術もだいぶ成熟してきましたから、ここでよりデザイン重視の製品開発スタイルにシフトすることにしたのです」
この「デザイン重視路線」に転換した後の最初の成果が、このOCW-S2400だったのだ。まずぱっと見て目につくのが、3時位置に配置されたワールドタイムのサブダイヤル。センター針のちょうど真横にサブダイヤルの針が配置されており、まるで時計の中に小さな時計が埋め込まれているようなイメージだ。これは、OCW-S2400の開発に当たって掲げた「ウォッチ・イン・ウォッチ」というデザインコンセプトの賜物なのだという。さらにはリューズもその真横に一列に並び、機能とデザインが程よく一体化した印象をかもし出す。
また文字盤を大型化したことで、文字盤の光の透過率を20%にまで下げることに成功。これは、現在の技術では限界いっぱいの値だと言われているという。さらには、OCEANUSの特徴である鮮やかな「OCEANUSブルー」も、このモデルから着色手法が変わり、より鮮やかな色合いになった。
そして、最新モデルのOCW-S3000。こちらは、デザイン重視で開発されたOCW-S2400と比べ、やや機能寄りに振ったモデルという位置付けだ。
「OCW-S2400が出たときに、どちらかというと機能を前面に出したOCW-S2000がカタログ落ちしてしまいました。そこで、OCW-S2000の後継として“機能感”のあるモデルがほしいなと思って作ったのが、このOCW-S3000でした。このように、両モデルは明確にキャラクターが棲み分けられていますので、共存させることにこだわりました」(岡本氏)。
ちなみにこのモデルでは、さらにモーターを1個追加して、全部で6個のモーターをモジュールに内蔵。時針、分針、秒針、3つのサブダイヤルの針、つまり6本の針それぞれに専用のモーターを割り当て、完全に独立稼働できるようになった。これによってさらに機能が豊富になったわけだが、技術面で特筆すべきはモーターの小型化だ。モーターの数を増やすためには、当然ながらモーターを小型化しないといけない。しかし一般的に、モーターは小型化すると、消費電力が増してしまう。この相反する要件を両立させた「小型かつ消費電力が少ない」モーターの開発には、相当苦労したという。
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