LCCの安全基準や航空機の整備手順は、大手とどう違うのか?:秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(1/3 ページ)
前回はパイロット不足で大量欠航に追い込まれているLCCの独自体質や弱点について伝えた。では、安全面についてはどうか? 効率性を重視するLCCでは、航空機の整備でも大手と違いはあるのか? 取材したジェットスター・ジャパンを例に報告する。
前回はパイロット不足で大量欠航に追い込まれているLCC(ローコストキャリア)の独自体質や弱点について伝えた(参考記事)。では、安全面についてはどうなのか? コストダウンに向けて効率性を何よりも重視せざるを得ないLCCでは、安全基準や航空機の整備手順でもやはり大手と違いはあるのか? 取材したジェットスター・ジャパンを例に、報告しよう。
メーカーの整備マニュアルをそのままに
航空機の整備は、各社とも航空機メーカーが作成したメンテナンスマニュアルに沿い、日本の航空法に則って実施する。これはLCCも大手も変わらない。LCCだけの安全基準など、当然のことながら存在しない。
「メーカーのプログラムを足しもせず、引きもせず──それが基本ですよ」
そう話していたのは、ジェットスター・ジャパンの整備セクションを統括する整備本部のリーダーの1人だ。ジェットスター・ジャパンが国内で運航するのは、LCCの“定番”ともいえるエアバスA320。つまり彼の言う「メーカー」とは、エアバス社のことである。私が成田空港にある同社の整備現場を訪ねたとき、若手を含めた整備士たちがちょうど折り返し便のメンテナンス作業に当たっていた。
では、そもそも旅客機の整備というのはどういう形で進んでいくのか? まずはそこから解説を始めよう。
旅客機の整備は「ライン整備」と「ドック整備」の2種類に大別できる。空港でスポットに到着してから出発するまでの間に駐機エリアで実施されるのが日々のライン整備。それに対して、ハンガー(格納庫)に機体を搬入してより本格的に点検・整備を行うのがドック整備だ。ドック整備は飛行時間や期間によって「A整備」や「C整備」に細分化され、エアラインや機種によっても異なるが、ジェットスター・グループでは1つの機材が750時間飛ぶごとにA整備を、さらに7500時間ごとにC整備を実施している。7500時間ごとのC整備では機体各部のパネルが取り外され、細部にわたって入念な点検作業が進められる。ハンガーインからハンガーアウトまでほぼ1週間を必要とするC整備は、クルマでいう「車検整備」に当たると考えていい。
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