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» 2006年06月27日 00時00分 UPDATE

ストレスと上手に付き合うための心の健康:第1回 できる人ほどストレスを受けやすい?

まじめに働き、どんな要求にも応えようとする、「できる人」はストレスを受けやすい。ストレスの適度な発散を心掛けよう。

[ピースマインド 田中貴世,ITmedia]

ビジネスパーソンが常に向き合わなくてはいけない“ストレス”。ピースマインドのカウンセラーが、毎回関連した話題を分かりやすくお届けする。危険信号を見逃さず、常に心の健康を維持していこう。


ストレスを受けない人はいない

 ストレス反応は誰にでも起きる自然な反応であり、周囲の環境に適応しようとする生体の大切な機能であることは、このところよく知られるようになってきました。生きている限りいろいろな難問や課題はつきものであり、嫌なことは必ずあるということはあなたも実感していると思います。

 不快なこと、つらいこと、障壁に直面したとき、ストレスを受けない人はいるのでしょうか。

 地球上のすべての生物が、環境の変化に対応し種を存続させるために身に付けた知恵がストレス反応です。

 原始時代人が命の危機を感じたときに取る行動は、闘うか逃げるか、2つに1つだったのです。全身が恐怖におののき、血圧は急上昇、鼓動は速くなり筋肉が緊張し、闘うか逃げるかするための準備をします。交感神経が優位な状態になり、アドレナリンが全身を駆け巡ります。逆に、緊急時に不必要な副交感神経系の活動は抑制され、消化器官の機能や免疫機能が低下します。逃げた後でゆっくり休めばよいと体が判断を下した結果なのです。現代、長期間のストレスにさらされて消化器官に支障を来したり、免疫力が低下して風邪をひきやすくなったりするのも、このメカニズムによるものです。

 この生理学的なメカニズムから考えると、ストレスを受けない人とは、敵を前にしたとき、闘うか逃げるかを実行できる人ということになります。

  • 理不尽な要求をする上司を前にして、殴りかかるか逃げるかする人
  • 欲しいものがあったら、盗んででも手に入れる人
  • 嫌なことはせず楽しいことだけやっている人

 このような極端な人がもしいたら、会社内で評価されることがないばかりか、正常な社会生活を営むことすら危ぶまれることでしょう。

頑張りすぎる人はストレスを受けやすい

 では、ストレスを受けやすい人とはどんな人だと思いますか。

  • 多少嫌だと思っても、上司の指示に従う人
  • 相手の理不尽な要求にも、何とか努力して報いようとする人
  • まじめに懸命に働く人
  • 良い成績を上げるためにバリバリ頑張る人
  • 遊びより仕事を優先する人

 このタイプの人は、自分を犠牲にして成果を挙げた結果、会社や上司から評価され、期待されます。期待されるためにさらに仕事が増える、期待に応えるためにさらに頑張り、評価も高まる――この繰り返しで、自分の体への負担を無視して走り続けることになります。心身ともに消耗し切ったところでやっと、異変に気付くということになるのです。

「仕事ができる」Aさんの不安

 実際の例を見てみましょう。

 A さん(30代・男性)は責任感ある仕事ぶりや、詰めの確かさ、綿密な仕事の組み立て、顧客への誠実な対応の姿勢から上司の評価が高く、顧客からも指名を受けるほどでした。同僚や部下からも信頼されていたので、社内プロジェクトへの参加や交流会の幹事など、本業以外の仕事も増える一方。その1つひとつに全力で取り組んでいました。

 しかし、本来のAさんは人前で話すことが苦手で、会議などの前夜は「失敗したらどう思われるだろう」と眠れないほどでした。上司から高い評価を受けながらも「もっと良く思われたい」との思いが強く、「期待に応えないと、自分は受け入れられないのでは」という恐怖さえ感じていました。そんな自分の本当の姿を知られてはならないと、さらに頑張るのです。

 期待と大量の仕事に応えようとする精神的なストレスに加え、いつか本当の自分の姿を周囲に知られてしまうのではないかという不安を抱えていたAさん。Aさんがカウンセリングを受けようと思い立ったのは、その不安に強くさいなまれているときでした。

 Aさんはカウンセリングを通して、周りの人に良く思われたいあまり、自分の周りに高いガードを張り巡らしていたことに気付きました。そのガードを維持するために多くのエネルギーを費やし、そのことに疲れていたのです。

 A さんは、安全と思える場所で徐々にガードを低くしていく体験をして、本来の自分を程よく見せても周囲に受け入れられることを実感しました。また自分の中に「厳しい上司の目」だけではなく、思いやりと励ましの言葉をかけてくれる「親友の目」を持つことができるようになりました。結果、無理のない姿勢で仕事を続けていけるようになったのです。

 あなたの周りにAさんのような人はいませんか。あなた自身にAさんと似たところはありませんか。ストレスを受けやすい人も、ストレスとの付き合い方を知り、自分の状況を客観的に見る目を持つことが、ストレスコントロールの第一歩になるのです。

上手にストレスの発散を

 これを読んで、「あまりストレスを感じない自分は、まじめに働いていないのか」と疑問を持ったあなた。あなたはストレスと上手に付き合い、ストレスの適度な発散を実践していらっしゃるのではないですか。もしかしてマイカウンセラーをお持ちなのでしょうか。カウンセラーといっても専門を学んだプロに限らず、気持ちよく話を聞いてくれるご家族、夫、妻、恋人、友人、同僚、上司がいらっしゃるのではないでしょうか。

 また休みの日に仕事を忘れて取り組める趣味や、仕事以外の豊かな人間関係を持っているのではないでしょうか。そんなあなたは、有能で生き方上手な方なのだと思います。

事例については個人のプライバシー保護に配慮し、いくつかの事例から特徴的な部分を取り出しブレンドした形で掲載しています。


※本記事は「@IT自分戦略研究所」に掲載されたものを再掲載したものです。

筆者プロフィール ピースマインド 田中貴世

シニア産業カウンセラー、 日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士。子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインドでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。なお、ピースマインドが提供する「ストレスCheck」を@IT自分戦略研究所で試してみることもできる。
本記事は「@IT自分戦略研究所」に掲載されたものを再掲載したものです。


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