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» 2006年06月28日 00時00分 UPDATE

ストレスと上手に付き合うための心の健康:第2回 「抵抗突破」で苦手な上司と仲良くなる

誰でも無意識に心をダメージから守っている。防衛パターンを知ることで無意識から一歩踏み出し、意識的な安定を目指そう。

[ピースマインド 田中貴世,ITmedia]

ビジネスパーソンが常に向き合わなくてはいけない“ストレス”。ピースマインドのカウンセラーが、毎回関連した話題を分かりやすくお届けする。危険信号を見逃さず、常に心の健康を維持していこう。


心に受けるダメージ

 紫外線を浴びることが増える季節になりました。紫外線を浴びると免疫力が低下し、疲れやすくなったり体調を崩したりします。近年では、目も日焼けする、つまり紫外線によってダメージを受けることが分かってきました。紫外線から目を守ることもなおざりにできませんね。

 ところであなたの肌は、日焼けによるダメージを受けやすいですか、それとも受けにくいですか。ダメージの受けやすさは人それぞれです。同じことが心の問題にもいえると私は思います。

 業務負荷が急激に増大したり、職場環境が変化したり、職制の変更があったりすると、人は大きなストレスにさらされます。

 自分のしている仕事に対して上司からのクレームを受けると、まるで人格を否定されたように感じられ、ダメージを受けるでしょう。これらのダメージを受けやすいか受けにくいか、またダメージの対処法は人それぞれですね。

心の日焼け止め、「防衛機制」

 人はどのようにして、ダメージに対処するのでしょうか。

 外界との調整をうまくできず不安を感じたときに無意識に働くメカニズムを、精神分析理論では「防衛機制」といいます。防衛機制には以下のようなものがあります。

   
抑圧 嘲笑、拒否、非難を恐れて、無意識に欲求の表出や充足を抑えること。苦痛な感情や記憶を意識から閉め出すこと
抑制 状況や損得を考え、意識的に欲求の表出や充足を抑えること
逃避 苦しい現状を回避するため、空想、秘密、病気、現実、自己、仕事などに逃げ込むこと
退行 幼少期など早期の発達段階に戻り、欲求の解放だけを求めること
置き換え ある対象についての欲求が阻止されたとき、要求水準を下げてほかの対象に欲求を向け、満足を得ること
感情転移 ある特定の人に向けるべき感情を類似の人に向けること
転換 欲求不満や葛藤(かっとう)を身体症状に置き換えること
昇華 反社会的な欲求や感情を、社会的に受け入れられるものに置き換えて発散し、不満を積極的に解消すること
補償 ある分野の劣等感を別の分野で補い、建設的に克服すること
反動形成 自分の弱さを認めたり周囲に知られたりするのを恐れ、本心と異なる極端な言動を取ること
取り入れ 相手の属性を自分の中に取り込んで同化し、心の安定を図ること。健康な人は適度に取り入れを行ってバランスを取っている
同一化 1人では不安なため、相手を自分と同一と思い、自他一体感を持とうとすること
投射 相手に向けた自分では認めたくない感情や欲求を、無意識に転嫁し、他人のものとして見ること
合理化 自分の欠点を認めることが苦痛なため、正当化して自分を納得させようとすること
知性化 感情や欲求を生々しく表出することが怖いため、知的にコントロールし抽象化して表現すること

 読んでみていかがでしょうか。「自分はこのパターンの防衛機制で不安な状況から自分を守ってきたのかな」という心当たりがあったのではないでしょうか。

「仮の安定」から「向上による安定」へ

 自分の防衛パターンに気付いたいま、あなたは「無意識の意識化」ができたことになります。自分を振り返り、洞察し、受け入れることができて、「仮の安定」から「向上による安定」に一歩近づきましたよ。

 無意識の防衛メカニズムによってもたらされる仮の安定にいつまでもとどまっていると、自分が本当は何を望んでいるのかが分からなくなってしまいます。仮の安定から抜け出し、向上による安定を望むならば、キーワードは「抵抗突破」です。

 それまでにできなかったことを思い切って行い、心が動揺してもある程度の時間耐え続けると、次第に動揺が収まってきて、「このくらいはやれる」と自信がつきます。行動を起こす前よりも、心が向上して安定した状態になります。これが抵抗突破です。

 ちょっとスリリングで、一皮むける体験といった感じでしょうか。

上司が苦手なBさんの抵抗突破

 それでは、実際の例を見てみましょう。

 Bさん(30代・男性)の部署に異動してきた上司は、近寄りがたいオーラを発している人でした。その上司が赴任してからというもの、Bさんは仕事をしていても落ち着かず、集中力が落ちていると感じていても、その理由が理解できませんでした。

 「上司はおれのことが嫌いなんだ。おれは気に入られるタイプではないんだ(=投射)」そう思うことで何とか平静を保とうとしましたが、うまくいきません。そこでBさんはカウンセリングを受けました。

 Bさんがカウンセラーと共同で見つけ、実行した抵抗突破は、「上司が自分のデスクの近くに来たら、自分から『何かお探しですか?』と声を掛ける」というものでした。

 実際にやるとなるとなかなか勇気のいることでしたし、「いや、君に用ではないんだ」などといわれてがっくりすることもありました。しかし、カウンセラーの支援を受けて実践しているうちに、上司とうまくコミュニケーションが取れるようになり、仕事も順調に運ぶようになったのです。この出来事はBさんにとって、小さなようで大きな一歩になりました。

 いかがですか。これくらいならできそうでしょう。あなたも小さな抵抗突破に挑戦してみませんか。

※参考文献 『エンカウンターによる“心の教育”』東海大学出版会刊
※本記事は「@IT自分戦略研究所」に掲載されたものを再掲載したものです。

筆者プロフィール ピースマインド 田中貴世

シニア産業カウンセラー、 日本産業カウンセラー協会認定キャリア・コンサルタント、日本オンラインカウンセリング協会認定オンラインカウンセラー、 家族カウンセラー協会認定家族相談士。子育て相談、保育士人材育成の仕事在職中にカウンセリングを学び資格を取得。転職支援センターのキャリアコンサルタントを経て、現在ピースマインドでカウンセラーを務める。職場のメンタルヘルス、キャリア、家族関係、夫婦問題とカウンセリング分野は幅広い。「カウンセラーは相談者の伴走者」と考え、「出会い」「気付き」の中に生まれるエネルギーに心動かされる日々だという。なお、ピースマインドが提供する「ストレスCheck」を@IT自分戦略研究所で試してみることもできる。


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