その辺にある紙の裏でもいいのに、わざわざメモ帳を購入するのはなぜか。プロフェッショナルに愛用されたメモ帳が、ビジネスパーソンの道具として注目されている。
少しでも文具に興味を持っている人なら、クオバディス、ロディアという文具のブランド名を聞いたことがあるだろう。いずれもフランスの老舗ブランドで、日本にも70年代に上陸している。
当初は「機能的なデザインとセンスが、いわゆる横文字職業の方の支持を得て、知る人ぞ知るブランドとして人気」(クオバディス・ジャパンの小沢麗子氏)だったが、90年代から、アフタヌーンティーやポーターなどとのタイアップを進め、また斬新なカラーがアパレル業界のビジネスパーソンにも評価され始める。
メモ帳なんて書ければなんでもいい──と思う人もいれば、仕事で使う道具には自分が納得した最良のものを使いたいと思う人もいる。PCでいえば、会社支給のものを疑問も持たず使う人もいれば、自分の仕事道具を選ぶ際には基準をもって納得して選ぶ人もいる。
小沢氏は最近のビジネスパーソンの言葉を、こう代弁する。「総務が買ってきたボールペンを使って、それはクールなのか?」。たとえそれがコストパフォーマンスという基準であっても、自分で納得した道具を使うことは生産性向上に大きく役立つはずだ。
ロディアは、プロフェッショナルのためのメモ帳として1920年にフランスで生まれた。5ミリ方眼が印刷されたグリッドフォーマットは、もともとデザイナーや建築家といった図面を書くビジネスパーソンの利用を想定したものだ。
コンセプトは立った姿勢でしっかりと書けること。「カバーを折り返しても無駄な隙間ができない、片手で持ったときの安定感、書き終わったメモの切り取りやすさ。これらがロディアの特徴です」(小沢氏)。こうした特徴から、フランスではジャーナリストに人気。“タフな状況でメモを取る”ためのツールとして評価されている。
紙のメモ帳が、今もてはやされる理由は、実はPCとの相性の良さにある。思いついたアイデアを最終的にはPCに落としていくのが最近の潮流だが、そのためのメモはやっぱり紙がいい。そんな中で、「長くストックするのではなく、湧いてきたアイデアを書き留めて、パッと切り取る」(小沢氏)という、ロディアの使い勝手が再評価されている。メモ帳は一時的に書き留めるものであるべきなのである。
書き終わった部分を、ピッと切り取る。ロディアを使っていると、こうしたアナログ的な気持ちよさが実は文具では重要だと感じる。同じように、1週間が終わったらページの隅を切り取るという快感を得られるのが、クオバディスのダイアリーだ。
クオバディスダイアリーの代表格は1週間が見開きとなった「アジェンダプランニングダイアリー」だ。見開きの左下にはミシン目が入っていて、週が終わったらここを切り取る。すると次に開くときに簡単に最新の週を開くことができる。下の写真のようにさまざまな工夫が凝らされた同社のダイアリーだが、この“切り取る”という行為の気持ちよさが、これからの文具のポイントだろう。
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