連載
» 2006年11月27日 17時29分 UPDATE

議事録ドリブンで会議の効率アップ:第5回 会議で「じゃあ、そういうことで……」と言ってないか?

前回は、会議の前に議事録のアジェンダを整理し、かかる時間と議論する順序をあらかじめ決めておくと会議の時間管理がうまくいく、という話をしました。今回は、いよいよ会議が始まります。

[鈴木健,ITmedia]

 議論が迷走する最も大きな原因は、1つのトピックを議論している最中に、いつの間にか別のトピックが話題になり、またしばらくすると別のトピックに飛び移るという“蝶々型”の議論になってしまうことです。

ks_kaigi5_1.gif

プラクティス5──一度に1つのトピック(one topic at a time)

 1つのトピックで結論が出ていないのに別のトピックに移動しても、時間を消耗して憔悴感が残るだけになってしまいます。まず1つのトピックの結論が出るまで集中しましょう。

 とはいえ、関係があるから別のトピックに移ってしまうわけですから、それを無視するわけにもいきません。相互に依存関係があるようなテーマのときは、複数の細かいトピックに分けて、最適な順番を考えてみましょう。いくら複雑なテーマを議論するときでも、「一度に1つのトピックを議論しなければならない」という原則を崩してはいけません。むしろ複雑だからこそ、単純な論点の積み重ねによって事態の打開を図るべきなのです。

 参加者の誰かが別のトピックを話しだしたら、「それは別のトピックだから後で話すことになっているね」と注意してあげましょう。その話題がまだトピックとして挙げられていなければ、「ではいまの問題を、新しいトピックとして追加して後で話そう」と指摘して、議事録に追加してあげるとよいでしょう。そうすれば、自分の話したことが議論すべき内容として全員の前で登録されるので、その人も安心して本来話すべき元のトピックに戻ってくれます。

 あるトピックに結論が出たら、それを宣言し、議事録のトピックを横線で消します。すると、議事がどこまで進んだのか共有できるとともに、共同で仕事を成し遂げたという達成感を得ることができるのです。

プラクティス6──議事録の共同注視(joint attention on the minute)

 「一度に1つのトピック」はとても重要ですが、実践しにくいプラクティスの1つでもあります。うまくやるためには、参加者全員が議事録を共同注視する方法が有効です。議事録を共同注視すれば、ペンの場所やPCのカーソルの場所によって、今どのトピックを話しているのかを全員が意識するので、自然と脱線が少なくなります。

 そのためには、みんなが注視できる大きな議事録を用意しなければなりません。ホワイトボードや模造紙、プロジェクタにPC画面を投影する方法などによって実現してみてください。

 経験上、PC上のテキストエディタに議事録を取り、ホワイトボードはワーキングスペースとして利用するほうがうまくいきます。というのは、PCのほうが打つのが早いので、議事録取りが議論の邪魔をせず、かつ会議後のデータ再利用性も高いからです。

 プロジェクタが社内にない場合もありますが、3人までならノートPCを囲んで、6人までなら17インチの液晶ディスプレイでも可能です。

 会議室の形も重要です。通常の会議テーブルは対面に座るので、目と目が合って、人対人の人格対決になってしまうことがあります。

ks_kaigi5_2.jpg 通常の会議テーブルの配置

 そうではなく、1つの議事録を注視しやすいようにセミナー形式の部屋を使ったり、半円形に椅子を並べたりしてみると、参加者のパワーは議事録の共同作成に集中されます。

ks_kaigi5_3.jpg セミナー形式の配置
ks_kaigi5_4.jpg 半円系の配置

プラクティス7──意味の明確化(clear definitions)

 議論がかみ合うためには、いま話されていることが、「意見なのか」「結論なのか」「ToDoなのか」「雑談なのか」を、参加者全員が意識しなければなりません。全員が納得していると思って話題を変えると、参加者のある人は「決まった」と思い、別の人は「決まっていない」と思ってしまうことがあります。曖昧なままでトピックを変えてはなりません。

 「じゃあ、そういうことで……」などという決まり文句で、会議を終わらせていませんか? 「そういうこと」とはどんなことなのでしょうか。いい加減な議事進行をなくして、結論は一言一句その場で確認しましょう。

 議事録の共同注視は、このためにとても有効なプラクティスです。結論になった意見の先頭には、【結論】と書いて色付けしましょう。すると、書かれた文章の一言一句に、急に重みが増してくるので、「ちょっと待って。それはまだ結論は早いと思う」「いや、ぼくが言ったことはそういう意味ではなくて、その言葉の前に『次回展示会までに』という言葉を入れてほしい」などという発言が出てくるに違いありません。

【結論】次回展示会までに製品パンフレットが1000部必要


 議事録に、誰の意見なのかは、書いたほうがいいこともあるし、書かないほうがいいこともあります。これは会議の重みにもよりますが、一般の会議では発言者は曖昧なままでもかまいません。

 しかし、ToDoに関しては別です。誰がいつまでに担当するかが決まっていないToDoは、まず実行されないと考えてよいでしょう。ToDoを決めるときには、「誰が」「いつまでに」「何を」の3つが絶対に必要なことを覚えておきましょう。議事録には【ToDo】と先頭に書いて、担当者、期限も忘れずに記入してください。できれば、その作業を確認する確認者も書いておきましょう。

【ToDo】大阪支店からパンフレットを1000部取り寄せる。

    担当者:田中、確認者:鈴木、期限:12/2


 会議がもめる原因の1つとして、言葉の定義が曖昧なことが挙げられます。組織の違いやバックグラウンドの文化によって、同じ言葉が違う意味を持つことがあります。言葉の意味をはっきり定義することは、面倒くさく遠回りのようにみえて、ミスコミュニケーションを防ぐ大事な過程です。議論が迷走してきたら、議事録に【定義】と書いて、その後に言葉の定義を書いてみましょう。いかに参加者が違う意味として使ってきたかが分かり、その後の議論も円滑に進むことでしょう。

【定義】製品パンフレット:自社の13種類の製品を紹介した4種類のパンフレット一式


 みなさんの中には、会議中にそんなに素早く結論を出したり引っ込めたりしたら混乱すると思う人がいるかもしれません。しっかり長い会議をして、一度決めたことは変えないほうがよいという人もいることでしょう。

 しかし、状況は常に変化していくので、会議室で決まったことに縛られすぎていては、世の中の変化に対応できなくなってしまいます。逆に変化する状況をいくら会議室で分析しても、世界を完全に読み切ることなどできません。まず行動し、そのフィードバックを元に議論をし、そして行動する。この短いサイクルを実践することが、変化の早い時代で生き残る方法です。変化を許容しなくてはならないのです。

 「決定」は正当な手続きを経た組織全体の意思決定です。それに対し、「結論」はその会議の中での合意事項にすぎず、そこまでの重みはありません。結論は、次のアクションを加速するための合意だと考えてください。会議ではたくさんの小さな結論を出していきましょう。

 じゃあ、そういうことで……。

筆者:鈴木健

国際大学GLOCOM主任研究員、サルガッソー社長。サルガッソーでは、究極の会議を実現するためのツール「Sargasso XM」を開発している。「伝播投資貨幣」という概念の通貨「PICSY」の研究・実装に取り組み、個人ブログとしてPICSY blogを運営している。IPAの未踏ソフトウェア創造事業に採択(2002年)、同年度の天才プログラマー/スーパークリエータに認定。共著書に「NAM生成」「進化経済学のフロンティア」


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