コラム
» 2006年12月06日 10時00分 UPDATE

Web2.0時代のブラウザ論:Web上の情報整理はどう変わったか

人からアルゴリズムへ、そして再び人々へ──。Web上の叡智を整理しようとする試みは、検索エンジンの変遷とともにエンジンが移り変わっている。この動きと連動して、ブラウザも進化を始めている。

[近藤秀和,ITmedia]

 「2.0時代には、1.0時代とは違い、Web上のあらゆる情報の整理は主にユーザー主導で行われる。ではブラウザにとってのユーザー主導型の情報整理は、どのような変革をもたらすのだろうか」

人からアルゴリズムへ、そして人々へ

 前回も述べたように、インターネット初期のWebにおける情報整理法は、Yahoo!によるディレクトリ型検索エンジンだった。Yahoo!は人力でインターネット上の情報すべてを整理しようとしたが、残念ながらWebページ数の爆発的な増大に追いつくことはできなかった。次の登場したGoogleは、PageRankというほかのページへのハイパーリンクをそのページへの投票とみなし、すべてのWebサイトをその重要度順に整理することに成功した。そして現在、ソーシャルブックマークやWikipediaなどのユーザー主導型での情報整理が進みつつあり、それに伴い人々のWebに対する接し方、またブラウザの機能自体も徐々に変化してきている。

 当初、リンク集やディレクトリ型検索エンジンが主流だった頃は、ブラウザは人々にブックマーク機能を提供し、ユーザーはWebサイトのリンクを自分自身で管理することで情報を整理していた。しかしGoogle以後、人々は自身で整理せずに、精度の高いロボット型検索エンジンに頼ってWebを検索するようになった。ブラウザもそれに伴い徐々に進化した。ブックマークによる情報の整理に加えて、検索ツールバーやタブ機能を備えることでWeb情報へのアクセスをより簡単にするツールへと変わっていったのだ。

 さらにWeb2.0の時代になると、まずブログやSNSが爆発を始めた。それに伴いニュースやブログの情報をサマリーで表示してくれるRSSもヒットし始めた。さらにブラウザがRSSをサポートするようになると、ユーザーはWebページのURLを直接ブックマークするのではなく、RSSをブックマーク代わりに登録することでWeb上の情報を整理するようになってくる。

 ブログは、おそらくWeb2.0的コンテンツの中で最も普及しているサービスの1つであろう。『インターネット白書2006』によると、ブログの認知率は98.6%である。ブラウザもそれに呼応するように、さらなる進化を遂げ始める。

 他人が投稿した記事のサマリーを見ることのできるRSSへの正式対応に加え、ブログへ記事を投稿する時に誤ってフォーム内容を消してしまうようなことが起こらないように、フォーム入力保護機構を備えるものも現れた(10月27日の記事参照)。これらは、ブログの閲覧、投稿をサポートし、より容易に行えるようブラウザが進化した結果である。今後は、ブログのサマリーを表示する機能がさらに強化されたり、ブログを投稿するのに便利なエディタとしての機能が進化したりしていくだろう。

“ユーザー主導の整理”をサポートするブラウザ拡張

 Web上の情報がユーザー主導で整理されるようになったとしても、さらに爆発的にコンテンツは増えていく。Webとしてもそれらの情報を整理する方向に進化するだろうが、ブラウザは、Web情報をさらに整理し、アクセスを容易にすること、さらにサービスを使いやすくするための機能が求められてくることになるだろう。

browser2.gif 国産ソーシャルブックマークである「はてなブックマーク」に用意された公式ブックマークレット。非公式のものも数多く存在する

 例えばソーシャルブックマークを考えてみよう。ブラウザとしてソーシャルブックマークに正式対応しているものはまだほとんどない。ただし、ソーシャルブックマークへの登録を簡単にするブックマークレットは数多く出回っている。ブラウザ側の対応が少ないのは、ブックマークレットが出ているということもあるのであろうが、ソーシャルブックマークの認知率は42.2%(インターネット白書2006)であり、ブログに比べ認知率が低いことが理由だろう。しかし、今後認知が高まるにつれ、その登録や、利用をより簡単にするための進化をブラウザは遂げることになるだろう。

 そのほかにも、「Flickr」のような画像共有サービスでは既にAPIが公開され、それを利用したマッシュアップサイト、ブックマークレット、ブラウザ拡張機能が登場している。動画共有サービスである「YouTube」(厳密にはWeb2.0的ではないという人もいるが)も、同様である。

 上記のような、ユーザー主導型のWeb2.0的コンテンツの利用を促進するブラウザ拡張機能は、Googleで検索してみれば分かるとおり、ものすごい数が存在する。この状況をみると、Web2.0コンテンツの爆発に伴ってブラウザ拡張までが爆発しているように思える。

 ユーザー主導型Web2.0コンテンツが増加すると、まずはユーザー主導でブックマークレットやブラウザ拡張が整備されてくる。次に、ブラウザがそれらの機能を整理し、さらに直接サポートするようになる。最終的には、ブラウザはWeb2.0的ブラウザ拡張と対応機能をマッシュアップしながらも、整理する機能を備えることになるだろう。

 次回は、ブラウザとロングテールについて考えてみる。

筆者:近藤秀和(こんどう・ひでかず)

 1977年生。2002年、早稲田大学大学院卒。ソニー株式会社勤務を経て、2004年にLunascape株式会社を設立、現在代表を勤める。Webブラウザの開発をはじめとするソフトウェア開発を通じて、未来への可能性に挑戦し続けている。情報処理学会 BestAuthor賞受賞(2002年)、Microsoft Fellowship受賞(2004年)、経済産業賞認定天才プログラマー/スーパークリエータ受賞(2005年)、ソフトウェア・プロダクト・オブ・ザ・イヤー受賞(同年)。


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