インタビュー
» 2006年12月20日 14時31分 UPDATE

達人の仕事術:シリコンバレー発「日米をつなぐ」働き方――渡辺千賀さん (1/2)

日米の企業をつなぐ仕事をしながら、自分に合ったスタイルを選び取って働いている。そんな渡辺さんの仕事術とは――。

[吉田有子,ITmedia]

 渡辺千賀さんは東京大学を卒業後、三菱商事、マッキンゼーなどを経て、2000年からシリコンバレーに在住。現在はコンサルティング会社「Blueshift Global Partners」の社長として、日米のビジネスをつなぐ仕事をしている。2002年に開始したブログ「On Off and Beyond」も人気が高く、これをきっかけに2006年12月にシリコンバレーの人々の働き方を紹介する著書「ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)」を刊行した。

「人間が忙しいのは通勤・会議・会食のせいです」

yy_wat01.jpg 渡辺千賀さん

 現在、渡辺さんがしている仕事は日米の技術系企業の事業開発専門コンサルタント。例えば、日本の会社が米国の会社と共同開発をしたいと思った時に、米国側の相手を探し、最終的に特定の企業とパートナーシップを組むところまでサポートする。そんな渡辺さんは日々どのように働いているのだろうか。

 「人間が忙しいのは通勤・会議・会食のせい。この3つを抑えるのが私の大事な仕事術です」という渡辺さん。オフィスは自宅の敷地内にあり、庭を15秒くらい歩いて行くだけなので通勤時間は最低限だ。また、会議は2時間までにとどめ、無目的な会食はしないようにしている。

 1日平均で2時間以上人には会わないと決めている。「私の場合は、人に会いすぎるとテンションが上がり、頭がごちゃごちゃしてきます。そこで、人に会う時間を1とすると、調べものや物書きなど1人でする仕事の時間はその3〜4倍、というバランスで働いています。やたらと人に会うことはほとんどありません」


yy_wat03.jpg 携帯電話であり、かつPDAでもあるPalm「Treo650」。渡辺さんはスケジュールとアドレス帳の管理もこれ1台で済ませる

 愛用の道具は、携帯電話兼PDAのPalm「Treo650」。しかし、日本にいるときは通話できない、と渡辺さんは残念がる。そのほか、「最近買ってよかったのはビジネス用バックパックです。両肩で背負えるので体感する重さが全然違うんですよ。夫も羨ましがって時々仕事に持っていくようになりました」

 ソフトウェアでは「Googleデスクトップはからめとられるように使ってしまいますね。ToDoリストはとても便利で、愛しています(笑)」。それまでさまざまなオンラインのToDoリストサービスを試しても結局紙に戻っていたのだが、Googleデスクトップに出会ってついに切り替えた。

st_wat01.jpg GoogleデスクトップのToDoリスト(編集部で用意したサンプルです)。初期状態では利用できないので、別途インストールする必要がある

 「道具といえば、シリコンバレーではワイヤレスヘッドセットをつけたままスーパーで買い物をしたり、コーヒーを飲んだりしている人が多いんですよ。携帯への着信を無線でヘッドセットに飛ばすんです。見ているとオタクっぽいなあと思うんですが、自分でもついやってしまいます(笑)。全体的にファッションにはうとく、見た目には無頓着な人が多いです」

 人気ブログ「On Off and Beyond」で渡辺さんの存在を知った人は多いだろう。このブログは最初、伊藤穣一氏のサーバを借りて運営しており、その後TypePadに移した。TypePadに移る前はアクセス解析を見ることができなかったので、特にブログの宣伝もしていなかったし、読者は自分の知り合い程度でごく少数だろう、と渡辺さんは考えていた。

 ところが、TypePadに移行後のアクセス解析を見てみると、想像をはるかに上回る量のアクセスが記録されていた。何かの間違いではないかと思って運営元に問い合わせたほどだった。

 このときの気持ちを「どてらを着てこたつに入っているようなプライベートな感覚でブログを書いていたら、突然幕が上がって自分が大勢の観客に見つめられる舞台の上にいることに気付いたような感じでしたね(笑)」と渡辺さんは表現する。

ビジネスツールの使い方にも現れる、日米の仕事環境と国民性

 米国は広く、日本のように多くの企業の本社が1都市にまとまっていないので、ビジネスの際に1社ずつ訪ねていって会うのは大変だ。IT系はまだしもシリコンバレーに集まっているが、渡辺さんのもう1つの事業領域であるヘルスケアやバイオ関連の場合は全米のあちこちや海外にある企業ともやりとりがある。そこで、ビジネスパートナーとなる企業がいかに出会うか、遠距離でいかに効率よくコミュニケーションするかが重要だ。

 「出会いの場」として重要なのは各種の展示会だ。普段はあまり人に会わないように仕事をコントロールしている渡辺さんも、このときは1日中他人と過ごすことになる。展示を見るよりもむしろ、近くのホテルで会議をしている。

 提携する企業を探す場合は、同業界の人を次々にホテルの部屋に呼ぶのだが、ここでのポイントは、直接部屋に呼び出さずにホテルのロビーで待ち合わせること。「競合企業の人が同じ部屋ではち合わせると気まずいでしょう」

 「あと、日本から来てこういう会合で寝る人がいるんですよね。寝ないでください。ちょっと淋しいです(笑)」

 米国人が日本のビジネスマンに持つイメージは、何を言われても「いえそれは……」と言ってうつむいているというもの。また、会議の場で決断せずに、必ず持ち帰ってから返事をすることも不思議がっている。

 渡辺さんは、米国の企業とビジネスをする日本人には「会議は1回だけ、一期一会!」とアドバイスする。日本企業にありがちな「とりあえずご挨拶のために会議」というのはしない。会議をするなら、はっきりした成果を期待するのでプレゼンは重要、とも。

 また、日本人はメールが長い傾向がある。隣の席が近く、話が聞こえてしまうというオフィス環境のせいで電話をかけづらいせいではないか、と渡辺さんは推測している。米国人は弁護士でもない限り、議事録などは別として、スクロールしないと読めない長さのメールは書かず、そのような要件は電話で済ませるのが一般的。長々とメールで議論することもめったにない。

 「書くのには時間がかかります。話せば5分で終わることを30分かけて書き、時間を無駄にしていないでしょうか。電話だと短くて済むのは、相手の反応を見てインタラクティブに対応を変えることができるからですよね。それから、ネガティブなことはメールだと厳しく思われがちですから、苦情を言いたいときは対面か電話にすることも大事ですね」

 会うのにコストがかかる米国では、電話会議が一般的に行われている。米国の電話は基本的にすべて3者会議ができるようになっているので、2者で話していて「あの人も呼んで話し合おう」ということが簡単にできる。日本と電話する場合、電話料金の削減よりも3者通話がしたいという理由でSkypeを使うこともある。

 仕事上、業界の分析をしたり競合企業の経営状態について調べることも多い。「米国の企業は、自社のことを他人に伝える手段はインターネットだけ、というくらいの勢いで情報を出していますよ。米国のことを調べたいなら、ネットだけでかなりの部分までいけます」。このほか、出身校のスタンフォード大学ビジネススクールの図書館も近所にあり、卒業生に開放しているので、ここを利用することもある。

 ただしその内容は、編集されていたり、簡潔に説明されたりはしていない。「米国人は他人の言っていることを整理するのに興味がなく、そんな暇があったら自分の言いたいことをいう、という人種のようです」

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