独特な風合いの毛筆だが、墨をするのも面倒だし“お習字”のような格式ばった感じがして気が引ける。そんな時は、気軽に書ける毛筆タイプの筆ペンを使ってみよう。ちょっとしたメモでも印象深くなるだろう。
年賀状も大半がプリンタを使ったもので、毛筆を使う機会はどんどん少なくなっている。いまだ毛筆が幅をきかせているのは「のし」「祝儀袋」ぐらいだろうか――と思いきや、最近ではデパートで「のし」に名前を書いてもらうとPCの処理だったりするのだ。伝統の筆記具なのに寂しいと嘆く前に、日々の生活や仕事の中に筆ペンを使うことでコミュニケーションをより円滑にしていこうというのが今回の提案である。
筆を使うことがほとんどなくなった一方で、筆ペンは今も健在である。しかも、最近では絵手紙ブームもあって、多色化され、ヒット商品になっているようだ。
筆者が初めて毛筆タイプの筆ペンを見つけたときには、信じられないほどの書き心地で、たちまちとりこになった。ぺんてるでは、毛筆タイプの筆ペン「ぺんてる筆」を1976年に発売していた。ちなみに、穂先がスポンジタイプのいわゆる“筆ペン”の発売は1980年代。一時はスポンジタイプが市場を席巻したこともあったが、現在では毛筆タイプが主流だという。
毛筆タイプのメリットは、なんといっても本当の毛筆と同じようにトメ、ハネ、ハライが好きなようにできることだ。すずりや墨が不要だから、書きたいときにすぐ使うことができるのもよい。使っているうちにかすれたりするところも、筆そのものという画期的な商品だった。
何年か前に、筆ペンに「うす墨」も出ていることを知り、すぐに購入。濃い方とうす墨を2色使い、手紙や絵を描いている。ちょっとしたメモも、筆ペンだと温かみがあって印象が強くなる。さらに日本画の顔彩(固形になっている絵の具)と筆があれば着色も容易だ。
メールだったら世界中に数秒後に届く。だが、そんな時代だからこそ、アナログの手紙がメールではできないコミュニケーションをもたらしてくれるのである。海外在住の友人(日本人)に暑中見舞いを送ったら、受け取った本人も喜んでくれたが、それ以上に現地の友人にも大ウケだったという。折しも、欧米では日本ブーム。和食だけでなく、漢字にも興味を持たれているので、毛筆には興味津々だろう。実際、毛筆で書くとなるとすずりを用意したり、墨をすったりと手間がかかるが、筆ペンなら手軽に書ける――というわけだ。
絵の具も顔彩の色はまた独特である。日本画は特に習ったことはない。自己流だが、あまり難しいことを考えずに楽しく使うことにしている。
最近、また新しい筆ペンを見つけた。書道用具メーカーの呉竹が発売した「金色 くれ竹筆」だ。銀色もあった。透明軸を外して黄色のリングをとり、カートリッジをねじ込んで使うあたりもぺんてると同じ。使い始めはやや黄色がかった色だったが、書くにしたがって金色のインクがたっぷり出てくるようになった。
穂先はぺんてるよりもやわらかく、曲線もしなやかに書くことができた。絵は苦手、文字中心の大人っぽい絵はがきにしたいというようなときには、大型店のはがきコーナーにある正方形に切られた和紙の中から濃いめの色を2色選び、一部を重ねるように貼って、上からこの金色の筆ペンで1文字を書くだけで華やかになる。
筆ぺんの2大メーカーであるぺんてると呉竹の穂先は、どちらが好きか、好みがはっきりと分かれるかもしれない。どちらも筆ペンとしては使いやすいし、使い捨てではなくカートリッジ式なので穂先が劣化しない限りずっと使える。太さはいくつかあるようだが、幅広く使えるのは「中字」だ。インクがかすれるようになったらカートリッジ部分を押すとインクが透明部分に流れ、穂先に補充される。あまり強く押すとインクが穂先から飛び出ることがあるので注意しよう。また、添削に使う朱墨タイプもある。
メーカー | 製品 | 価格 |
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ぺんてる | ぺんてる筆 中字 | 525円 |
ぺんてる | ぺんてる筆 うす墨 | |
呉竹 | くれ竹筆 中字 | |
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