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» 2007年01月15日 14時36分 UPDATE

議事録ドリブンで会議の効率アップ:第9回 会議に頼り過ぎない会議術

会議ですべてを決めようとすると、インターネット時代のスピードについて行けなくなることがしばしばあります。「会議で合意を取ること自体が目的化」し始めたら要注意。では、どのような解決法があるのでしょうか。

[鈴木健,ITmedia]

 世の中には、会議が長くなるばかりで何も生み出せない組織が多くあるといいます。小田原評定や、「会議は踊る、されど進まず」のウィーン会議に代表されるように、長く続く会議で問題が打開されることはほとんどありません。

 例えば、会議室では、問題を打開するための仮説が「ああかもしれない」「こうかもしれない」と次々と出されます。仮説の上に仮説を積み重ねていくような議論が繰り返されますが、根本の仮説が正しいのか誰も分からないので、結局のところ誰も確信をもって判断を下すことはできません。ここで必要なのは、仮説の巨塔を積み上げることではなく、仮説を検証する具体的な手を打つことです。会議はそこでおしまい。あとは仮説を検証する作業に各々のメンバーが入っていきます。

 実は、インターネット自体がこのような「会議に頼り過ぎない会議術」によって発展してきました。変化の速いこの時代に、なぜ「インターネット」は勝ち残ることができたのでしょうか。

プラクティス15──ラフコンセンサス&エグゼキューティングタスク(rough consensus and executing task)

 IETF(Internet Engineering Task Force)というインターネットで使われる技術の標準仕様を決める組織があります。この組織には“Rough Consensus and Running Code”という有名な標語があります。「ラフなコンセンサスを作ったら、プログラムを書いて走らせて試してみる」という考え方です。とてもインターネットの標準仕様を決めているとは思えない、多少いい加減な方法に見えますが、「世の中は会議室で頭を使って考えたとおりにはいかない」という経験則から導かれた実に優れた手法なのです。

 実際に、IETFはこの手法によって、他のライバルの標準団体を蹴落として、世界のディファクト・スタンダードとなりました。IETFを中心としてまとめられたTCP/IPというプロトコルは、1990年前後に、ISO(International Organization for Standardization 国際標準化機構)のOSIプロトコル体系と競合関係にありました。そして現在ではTCP/IPがインターネットで使われています。いま、みなさんが読まれている文章も、TCP/IPの上を通って流れてきているのです。

 ISOは国の代表が集まって仕様を議論するところだったため、誰も文句の出ない仕様を求め、会議で合意を取ること自体が目的化しがちだったといいます。それに比べてIETFは、“Rough Consensus and Running Code”にいわれるとおり、実際にモノが動くかどうかを重視しました。この違いが勝敗を分けたといわれています。動くモノがあるかどうかによって、会議の場での説得力も違ってきます。

 IETFに習い、この標語をプロジェクト一般に応用すれば、“rough consensus and executing task”となるでしょう。すなわち、「ラフなコンセンサスを元にタスクを実行せよ」です。「うまくいったら先に進む。だめなら考え直す」、そうしたアジャイルなプロジェクト管理手法が、スピードの早い現代には求められているのです。

 会議が長くなるばかりで何も生み出せないのは、実は小さなアウトプットをしないからです。多くの成功したプロジェクトは、小さな実験から始まっています。会議でコンセンサスが作れないときは、会議を止めて個々の作業に戻ったり、街に出て情報収集をして証拠を積み上げていったりしたほうがいいのです。不可能だといわれたら、小さな既成事実を作ってしまえばいいのです。会議をしている時間を、プロトタイプ作りや見込み顧客へのヒアリング、対象市場のリサーチなどに費やしたほうが有益であることは多々あります。

 問題のほとんどは会議室では決着がつきません。

 ビジネスにスピードが要求される時代に、新しいことを始めるのに5年も10年もかけてはいられません。市場の環境が当初の想定からどんどん変わってしまうからです。最初から完璧な計画を立ててそのとおりに実行するのではなく、計画と実行を交互に混ぜながらプロジェクトを推進していく、そうした仕事が増えています。

 XM(Extreme Meeting:究極の会議法)は、このようなタイプのプロジェクトと会議を実践するためのノウハウを集めたものです。みなさんもぜひ、議事録ドリブンをはじめとするXMを実践して、快適な会議ライフをエンジョイしてみてください。

 次回ちょっとだけおまけがありますが、9回に渡る議事録ドリブン会議術の連載はこれにて終了となります。みなさん、ご愛読ありがとうございました。

筆者:鈴木健

国際大学GLOCOM主任研究員、サルガッソー社長。サルガッソーでは、究極の会議を実現するためのツール「Sargasso XM」を開発している。「伝播投資貨幣」という概念の通貨「PICSY」の研究・実装に取り組み、個人ブログとしてPICSY blogを運営している。IPAの未踏ソフトウェア創造事業に採択(2002年)、同年度の天才プログラマー/スーパークリエータに認定。共著書に「NAM生成」「進化経済学のフロンティア」


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