「キミ、ちょっとこれ頼むよ」に毅然と返答できる「自分時間予約術」デジタルワークスタイルの視点

「キミ、ちょっとこれ頼むよ」と割り込み仕事を頼まれた時、「今週は忙しいので来週なら対応可能です」と毅然とした態度で臨むために――。

» 2007年01月17日 10時00分 公開
[徳力基彦,ITmedia]

 「キミ、ちょっとこれ頼むよ」目が回るほど忙しいのに、そんなときに限って重要と思えない割り込み仕事を頼まれたり、長い会議やアポイントが入ったり、そんな経験は誰もがあるのではないでしょうか。季節柄、正月明けの挨拶回りにつきあわされて、やりたい仕事が進まない人もいるかもしれません。

 なんとなく断りづらくて引き受けてしまっていたら、自分の作業をする時間がどんどんなくなり、気がついたら締切りが迫っていた。必死になってなんとか仕事をやりくりしていたら、またも割り込みの仕事が登場する――。いったんそんな悪循環に入ってしまうと、なかなか抜け出せなくなってしまうものです。そこで、今回はそんな割り込み仕事を断りやすくするための、ToDoリストとカレンダーの複合技「自分時間予約術」をご紹介したいと思います。

「自分時間予約術」会得への3つのステップ

  • 抱えている仕事の見積もり時間を出す
  • 見積もり時間と業務時間の差分を把握しておく
  • 作業時間をカレンダーに書き込んでしまおう

自分が抱えている仕事の見積もり時間を出す

 まず最初に取り組んでほしいのは、現在自分が抱えている作業をひと通り出してしまうことです。

 GTDに慣れている人であれば何かしらの自分の作業リストがあると思いますから、その中で仕事として取り組むものを抜き出してしまうといいでしょう。あとは各項目に大体どれぐらい時間がかかるか書き出してみてください。

 もちろん作業時間の予測のつかない作業が多いと思いますが、あくまで目標の数値で構いません。最終的な作業時間はどうせ変わります。作業の見積自体にあまり時間をかけすぎては意味がありませんし、あまり細かく見積もる必要もありませんから「短い作業は30分」「長い作業は1時間」など、余裕のある時間でざっくり見積もるのが良いでしょう。

 ここで注意してほしいのは、毎日のルーティンワークも必ずこの中に入れること。人によってはメールの処理や、書類の整理に1時間以上かかっている人もいるでしょう。業務中に、ニュースサイトやブログをチェックするなど情報収集にも時間は確保したい人は、その時間も入れておきましょう。

 「ToDoリストタイマー術」でもご紹介しましたが、日ごろからルーティンワークにどれぐらい時間をかけているのか把握しておけば簡単に書き出せるはずです。

 ルーティンワーク以外でも、プレゼン資料の作成や日々の会議にいたるまで頻繁に行う作業にどれぐらい時間をかけているのか、一度計ってみることをお勧めします。現在どれぐらいの作業をかかえているか数字で説明できれば、急に仕事を依頼されたときに自分の状態を相手に伝えやすくなります。

見積もり時間と業務時間の差分を把握しておく

 取り組まなければいけない作業と、それぞれの見積もり時間のリストができたら、今度はそのリストから、1週間もしくは1カ月の間にやらなければいけない作業を抜き出して時間を足してみてください。あとはその合計時間を実際の業務時間から引き算するだけ。例えばこんな感じになります。

今週の作業時間見積
業務内容 見積もり時間
プレゼン資料作成 4時間
社内説明資料作成 4時間
新製品企画検討 4時間
顧客訪問および移動 12時間
社内打ち合わせ 2時間
毎日のメール処理 1時間×5=5時間
毎日の情報収集 30分×5=2時間30分
顧客からの問合せ対応 30分×5=2時間30分

見積もり時間の合計 36時間
1週間の業務時間 45時間(9時間×5)
余裕時間 9時間

 この場合、9時間が今週予定以外の仕事にかけることができる時間と言うことになります。少なくとも9時間未満の仕事であれば、急な割り込み仕事が入ってきても対応できるわけです。この時間を把握しておくのと把握しておかないのでは、急な仕事やアポイントを依頼したときの返答が変わってきます。

 例えば今週の時間が明らかに余裕がないのが分かっているのであれば、あいまいに引き受けることなく断れるでしょうし、「今週は忙しいので来週なら対応可能です」と具体的に延期できるでしょう。

 ある作業を依頼した上司が新たな仕事を重ねて依頼してきたのであれば、「その仕事をやるには、前に頼まれた仕事は来週になるかもしれません」と警告することも可能でしょう。要は自分の仕事を、会社の予算のように配分してしまえばいいのです。そうすることで、少なくとも自分の時間については“予約”できるのです。

作業時間をカレンダーに書き込んでしまおう

 作業時間の見積もりを出してはみたものの、どうも割り込みのアポイントや作業を引き受けてしまうという人にお勧めなのは、カレンダーに予定を書き込んでしまう方法です。

 「締め切りを守る人」と言われるようになるで、ToDoリストでは「カレンダー的思考と決別して締切日を前倒しに設定する」ことをご紹介しましたが、今回は逆にToDoをカレンダーに記入するパターンです。

 その仕事を自分が担当している限り、いつかその作業をやらなければいけないのは当然です。使っているグループウェアやスケジュール管理ソフトなどのカレンダーに、その作業の時間を予定として書き込んでしまいましょう。まずはカレンダーの中で自分の時間を予約してしまおう――という手法です。

 もちろん、その作業は自分へのアポイントですから時間をずらすことは自由です。ただ、一度カレンダーに入力してしまえば、少なくとも割り込みのアポイントが入った場合など、カレンダーで空き時間を探すときに、その時間は作業があるのを思い出すことができます。

 会社でグループウェアを使っている場合は、その予定をグループウェアに入力して公開しておけば、同僚や上司が勝手に予定をどんどん入れてしまうことも防げるはず。当たり前のようですが、毎日予定表をチェックするような人には特に効果的な方法ですので、試してみるといいでしょう。

 ちなみに、「すべての時間を事前に埋める必要はない」ことを忘れないで下さい。ある程度の余裕のある時間がないことには、新しいアイデアや企画を考える時間も取れません。会議やアポイントの時間が延びることも多いでしょうし、見積もりどおり作業が進まないこともあるはずですから。


 もし、皆さんの時間のほとんどが、ルーティンワークやつまらない仕事に取られているとしたら要注意です。時間はお金と違って、どうやっても絶対に増えません。取り返しのつかない貴重な有限の財産です。この機会に、意味のない作業に多くの時間をとられてしまっていないか、再度確認してみましょう。

筆者プロフィール 徳力基彦(とくりき・もとひこ)

NTT、ITコンサルを経て、現在はアリエル・ネットワーク株式会社プロダクト・マネジメント室マネージャ。ビジネスパーソンの生産性向上のためのソフトウェアの企画・開発やコンサルティング業務に従事するほか、グループウェアやブログ、仕事術などに関する執筆・講演活動を行っている。ブログは「ワークスタイル・メモ」と「tokuriki.com


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