お金をかけずにビジネス誌をかき集める方法樋口健夫の「笑うアイデア、動かす発想」

無料のオンラインメディアと違って、購読にお金がかかるビジネス誌。このビジネス誌を社内で“無料”でかき集める方法があるのだ。

» 2007年04月27日 09時33分 公開
[樋口健夫,ITmedia]

 ITmedia Biz.IDの読者に早いもの勝ちの提案をしよう。まず、数人で勉強会を結成する。新人でもベテランでも構わない。「X市場調査研究会」とか、「Y技術研究会」とか、何でも構わない。3人でも4人でもいい。この研究会は、主要な関係雑誌を片っ端から読むことで始めることとする。

 最近はオンラインメディアでも面白い記事が多くなってきたが、「日経ビジネス」「東洋経済」「週刊ダイヤモンド」「財界」「日経情報ストラテジー」など、ビジネスマンなら絶対に読むべきビジネス誌はある。とはいえ、どの雑誌を購入すべきか読んでみないことには分からない。先ほどの研究会は、これらを徹底的に読むことが“研究”目的なのだ。

 それに無料のオンラインメディアと違って、ビジネス誌はお金がかかる。自分で購入すると数冊が限度で、たくさん購読していたら「費用がいくらあっても足りない!」となるわけだ。そこで、お金をかけずに雑誌をかき集めるのが、今回の提案。

 筆者が現役だったころ、営業部で定期購入できる新聞は1紙と雑誌が1誌までと決まっていた。そこで、新聞は日本経済新聞、雑誌は通信関係の専門誌を1冊購入していた。しかし、定期購入していなかった週刊ビジネス誌に限って、「業界再編」「今、稼いでいる会社は」など、仕事に直結する刺激的なタイトルが並ぶことが多かった。仕方がないので、その度になけなしの小遣いで雑誌を購入し、部下たちに回していた。部下たちが買ってきた雑誌を回すこともあった。

 そんなある日、筆者は社長との面談で役員待合室に向かった。そこにはなんと、前述した“必読”の雑誌群が全部揃っていたのだ。「役員はいいなぁ、こんなに雑誌を読めるのか。私も早く……」と念じつつ、雑誌の中身を見ると、役員が赤鉛筆で書き込んだページがあった。それが自分の担当している顧客の記事だったりして「ああ、今度の部長会までには、これを調べておかないと」と覚えておいたものだ。そんなとき、ふっと思い付いたのである。

 「この雑誌は古くなったら、いったいどこに行くのだろうか」。これは、花屋の売れ残った花はどこに行くとか、果物屋の余った果物はどこに行くのだろうかという問いに対する答えと基本的に同じ――つまり「捨てられる」のである。筆者は断固立ち上がり、役員秘書室に行った。

 「すみません。あの役員待合室に置いてある雑誌は、古くなるとどうなりますか」

 「3カ月ほど置いて廃棄します。もっと早く処分することもありますよ」

 「それなら古くなった雑誌を全部、社内便で営業のところに送っていただけませんでしょうか。経済関係の雑誌はほとんど古くなりません。どの雑誌にも営業の顧客情報が満載です。しかし、予算の制限で購入できないのです」

 「ああ、そのような話であれば、どうぞどうぞ。月に2回ほど雑誌の入れ替えをしますから、その時に古い雑誌を全部、部長にお送りしましょう」

 「わあ、ありがとうございます」と子供のように喜んだ。次の日から早速大きな雑誌の束がドン、ドン、ドンと3つも筆者のところに届いた。3週間前に発売されたメジャーな雑誌が、全部揃っていた。ここから筆者の出番で、ハサミとカッターナイフで、必要な部分ページを切り取る。それらを4つに分けるのだ。

樋口流分類法
重要度 分類 方法
緊急情報 担当者に急いで回す情報。自分でもさっさと読んでおく
中の上 回覧 部内で回覧すべき情報(これが多かった)
中の下 後で読む 一端切り取り、ホッチキスでまとめておく。
客先に向う電車の中などスキマ時間に部下と一緒に読む記事
個人 個人的に面白い記事。
有名人などのエピソードは切り取って自宅に。ヨメサンや子供たちに読ませた

ペーパーメディアとオンラインメディアを組み合わせる

 大事なことは、ペーパーメディアの情報だけに頼らないこと。雑誌の情報は、すでに数週間、あるいは数カ月遅れたものかもしれない。これを補うのが、オンラインメディアの情報だ。

 本誌「ITmedia Biz.ID」「Business Media 誠」のほか、新聞各紙のWebサイトは毎日見る。ブログ形式のメディアであれば「Gizmode Japan」、個人ブログでは橋本大也氏の「情報考学 Passion for The Future」なども見逃さない。お勧めはリコール情報を掲載している「リコール・ナビ」。仰天するようなリコールがあり得る世の中だ。常に見ること。これは人ごとではない場合もある。

 また、競合他社のWebサイトを確認することは当然だ。仕事で競合している会社の製品やサービスを知らずに営業はできない。客先で恥をかかないことにもつながる。競合のサイトを確認することは面白くもないが、「お気に入り」やRSSリーダーに登録して監視しよう。

 ビジネス誌とオンラインメディアは補完関係にある。紙とオンラインを組み合わせれば、最強の情報運用ができるのだ。


 どんどこ入ってくる雑誌情報に、我が部のビジネス情報は格段と潤った。本来なら捨てられてしまうビジネス情報誌から徹底的に栄養分を吸収した。この“権利”は、普通の会社なら、役員室、社長秘書、広報室、企画室、技術室など、雑誌が集まっているところが、いくつかあるが、先着順の申し込みとなる。もちろん「これは」と思った雑誌は定期購読したほうがいい。できるだけ早く入手できたほうがいいに決まっているからである。

 というわけで雑誌の情報を集めたい人は、そうした部署に大至急アタックを掛けよう。「すみません。僕たち、X研究会では勉強のために雑誌を……」と頼むのだ。忘れてはならないのは、このような部署には社内でも比較的女性が多いこと。「毎週、いただきに参ります」と言って、時にはお礼にチョコレートを1つ渡そう。ただし、1人で出し抜くのは周りの反感を買うかもしれないことは忠告しておく。

本日の教訓

研究会設立――“研究”目的をあやまるなよ。


著者紹介 樋口健夫(ひぐち・たけお)

1946年京都生まれ。大阪外大英語卒、三井物産入社。ナイジェリア(ヨルバ族名誉酋長に就任)、サウジアラビア、ベトナム駐在を経て、ネパール王国・カトマンドゥ事務所長を務め、2004年8月に三井物産を定年退職。在職中にアイデアマラソン発想法を考案。現在ノート数338冊、発想数26万3000個。現在、アイデアマラソン研究所長、大阪工業大学、筑波大学、電気通信大学、三重大学にて非常勤講師を務める。企業人材研修、全国小学校にネット利用のアイデアマラソンを提案中。著書に「金のアイデアを生む方法」(成美堂文庫)、「できる人のノート術」(PHP文庫)、「マラソンシステム」(日経BP社)、「稼ぐ人になるアイデアマラソン仕事術」(日科技連出版社)など。アイデアマラソンは、英語、タイ語、中国語、ヒンディ語、韓国語にて出版。「アイデアマラソン・スターター・キットfor airpen」といったグッズにも結実している。アイデアマラソンの公式サイトはこちら


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