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» 2007年11月29日 11時05分 UPDATE

オフィス文書削減講座:なぜオフィスの書類が減らないのか

社員全員にパソコンを与えてLANでつないだのに、書類が減るどころか増えているのはなぜだ──。その原因は、電子文書も含めた文書の運用管理のルールがなく、すべて社員任せになっている状況にある。

[SOS総務]
SOS総務

 「情報技術を導入して電子化を進めれば、結果としてペーパーレス環境が実現できる」という幻想が、今なお多くの企業で見受けられる。電子化がペーパーレス化を自然ともたらすかのような錯覚にとらわれているのだ。

 しかし、現実には「電子化すること」と「ペーパーレス化すること」は、全く次元の違う話、むしろ相反する概念であるといえる。単にパソコンやLANを導入しただけでは、紙の消費量を増大させ、書類が増える結果を招くだけだ。「電子化」と「ペーパーレス化」では、それを推進するためのノウハウやルールも、まったく別物と考えるべきだろう。

同じ内容の文書が大量に散在する結果に終わるIT化

 これほど電子化を進めても、紙が減らない原因は何か。技術面から見ると、デジタルの特性が、そもそも「情報の複写や拡大再生産を低コストで瞬時に実現してしまう」ことにある。そのいちばん分かりやすい例が、電子メールの添付ファイルだ。

 ファイル(文書)を添付して相手に送るとしよう。郵送の場合、送り手の手元には文書は残らず、相手側に移るため、ファイル(文書)は常に1つだ。しかし電子メールでは、ファイルを送った時点で、送り手のパソコンにも、相手のパソコンにも同じファイルが存在することになる。技術的には、自分の持つファイルを、ネットワークを通じて相手のコンピュータにそっくりコピーしているに過ぎないからだ。この時点で、どちらが原本とも見分けられぬ、まったく同じファイルが2つ存在することになる。

社員に文書の私物化を許す限り紙は無限に増え続ける

 また、紙が減らない原因をマネジメントの面から見ると、こうしたデジタル技術の特性を十分に踏まえた上で、文書の取り扱いルールを作り、社員全員に徹底するということを、ほとんどの企業が怠っていることが挙げられるだろう。

 ここ数年、「企業秘密の保護徹底」「個人情報の漏えい防止」など、企業の情報管理に対する法的・社会的要求が強まっており、これに対応すべく企業の側でもセキュリティ・ポリシーの策定や情報管理責任者の任命、情報管理マニュアルの作成と配布など、組織を挙げた取り組みが盛んに行われている。さらに、ISMS認定やプライバシー・マークの取得など第三者機関からのお墨付きにより、取引先の信用を得ることにも熱心だ。

 これらはすべて必要なことだが、これだけで終わってしまっているのが現実ではないだろうか? ポリシーを作っただけ、責任者を決めただけ、マニュアルを作成しただけでは、文書を管理したことにはならない。カタチが整っても、現場での実際の運用を個人任せにしていては、事態は決してよくならないのだ。

 しかし実際には、組織の文書管理において最低限守るべき「文書の私物化を許さない」というルールすら徹底されていないケースも多い。組織として保有している文書はすべて組織の情報資産であり、個人任せでいいわけがないのだが……。

 文書管理のルールを表1にまとめた。この一連の行為を社内に徹底してはじめて、その組織はファイリングシステムができているということになる。ルールがないまま、やみくもに電子化を進めるから、結局はムダなものまで電子化されて不要なコストが強いられ、漏えいや紛失のリスクを増大させるだけの結果に終わってしまいかねない。このルールを社内に根気よく根付かせ、本来の目的を果たすためには、企業における「文書主管部門」としての総務部門の熱意と推進力が不可欠なのだ。

表1 文書管理のルール
1 組織として保有すべき文書を確定する データベースの確立
2 保管する場所を決める 所在管理
3 全員で共有する 他者検索
4 ファイルごとに保有期間を定める
5 期限が来たら確実に廃棄する スケジュール管理

社員の意識改革なくしてペーパーレス化は実現しない

 これまでも、文書の私物化排除やペーパーレス化推進のためのさまざまな努力を、企業は行ってきた。たとえば、私物化をさせないために社員の机からすべての引き出しをなくしたところも少なくない。個人持ちの文書の置き場所を物理的に設けない、といったやり方だ。さらに、ペーパーレス化を実現するために、紙情報の生産手段であるコピー機やプリンタをすべて撤去し、強制的にペーパーレス環境を実現した事業所もある。

 どちらも組織としての思い切った取り組みとして評価できるが、果たしてそれで十分だろうか。その状態がその後、定着しただろうか。問題は、それらの試みと同時にドキュメント・ワークに対する社員の意識改革を図ったかどうかだ。社員の仕事の進め方や仕事に対する考え方が従来のままで、目に見える部分だけを強制的に変更しても、結果的に現場の人々の不満を招くだけの結果になりやすいので注意してほしい。

 また、もっと問題なのは、あまりにも急激な環境変革を行ったため、仕事の能率がかえって下がり、モチベーションも下げてしまったという逆効果を招く場合が多々あることだ。業務によってはプリントアウトをしてみんなで共有できる状態にしておいた方が、仕事が円滑に進むものも少なくない。たとえば「プロジェクト進行中だけ」などと期限を決めて個人持ちの文書を認めることも、業務を円滑に進める上で必要なケースもあるのだ。

 問題はペーパーレス化を実現することではなく、「ムダな紙を出さないことで仕事の能率を高め、情報漏えいなどのリスクを回避すること」だ。必要な情報と不要な情報の見極めや、電子データで持つことと紙で持つことのそれぞれのメリットに対して、経営者以下すべての社員に至るまで同じ目線を持って臨むことが、何よりも求められる。

『月刊総務』2006年7月号 総務のマニュアルより

執筆:社団法人日本経営協会 ファイリングデザイナー
検定事務局選任課長 石島正勝


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