ワイヤレスマウスで“PCをジャック”する文具王の「B-Hacks!」

PCのスキルというのはやっかいなもので、商談や作業とは違ってやり方を教えたり、見て盗んだりするのがとても難しい。すぐ隣で仕事をしていても画面の中では何が起こっているのかが分かりにくいのでほとんど伝わらない。さて、どうやって伝えようか――。

» 2008年02月08日 18時00分 公開
[高畑正幸,ITmedia]

 筆者は文具のヘビーユーザーであるが、PCに対する依存度もかなり高く、会社では同僚や後輩にPCの操作方法などを聞かれることもある。ということで、今回はちょっとPC系の話。

 PCのスキルというのはやっかいなもので、商談や作業とは違ってやり方を教えたり、見て盗んだりするのがとても難しい。すぐ隣で仕事をしていても画面の中では何が起こっているのかが分かりにくいのでほとんど伝わらない。どんなに非効率な手順であっても、逆にものすごく便利なワザを持っていたとしても、プリントアウトされた書類からは、それらがほとんど伝わらないのである。

 以前ビックリしたのは、Excelの合計値が合っていないので、どんな数式を入れたのかと聞いたら、その後輩は電卓で計算した数字を合計欄に打ち込んでいたことが発覚。彼は、Excelの基本的な機能をほとんど知らず、ただ「表」として使っていたのだ!(もちろん今は、業務に必要な程度の機能は使えるようになっている)。しかし、彼が入社してしばらくの間は、プリントされた紙を見る限り至って普通で、問題が表面化しなかったのだ。Adobe IllustratorやPhotoshopなどを使ったデザイン系の作業などになると、さらにその作業は複雑でわかりにくくなり、指導するのもされるのも難しいというのが現状である。

 筆者も、ほとんどのスキルはほぼ独学だ。本当はきちんと教育を受けたりすればもっと便利な使い方があるはずだと思うこともあるが、PCの使い方は目的が違えば全く異なる。分からないことややりたいことがあれば本やネットで調べるぐらいで、なかなか良い方法がない。しかし、先輩や同僚に教わったテクニックもいくつかある。内容が近い仕事をしている人からの知恵は即利用できることが多いので、役に立ち、身に付きやすい。

「PCスキルの教育」ワイヤレスマウスで簡単に

 何年も職場にいるので、筆者も教える側に回ることがあるが、なかなかスマートな方法がないのがPCだ。教わる人の斜め後ろから「ちょっと貸してご覧」と言って教える光景をよく見るが、これがなかなか教えづらかったりする。

 PCの操作手順などは、互いに同じ画面を見ていなくてはならないし、順を追ったステップを説明しながら進まなくてはならない場合がほとんどだが、PCは、そういう場合のためにはデザインされていない(もちろん複数の画面を接続するなどすればPCスクールのようにきちんとできるのかもしれないが、現場でちょっとしたテクニックを教えるのにそんなことはしない)。教える相手が私と同じ右利きの場合、左から教えるには、相手の胸の前を横切るカタチでマウスを操る必要があるし、右から教えるときはどうしても相手に半身がかぶるカタチになってしまう。

教える相手が私と同じ右利きの場合、左から教えるには、相手の胸の前を横切るカタチでマウスを操る必要があるし、右から教えるときはどうしても相手に半身がかぶるカタチになってしまう

 どちらにしろ、恋人や美人教師(イケメン教師?)でもない限り教えられる方にしてみれば、生理的にあまり心地の良くない状況である。さらに作業が複雑な場合は、「ちょっといい?」とか言って、代わりに席に座り、教えられる方は後ろから申し訳なさそうにのぞき込む格好になる。最近だと親切のつもりがセクハラ扱いされかねない。また、教える場合も、本人が作業をした方が覚えやすいので、マウスも画面の中の場所を指し示すだけで、隣からマウスを奪い取ってあれこれやってしまうのはできるだけ避けた方がいいと思っている。

 以前はレーザーポインタで画面を指しながら教えるのも試したのだが、レーザーポインタは発光するディスプレイには向いてないし、画面がツヤツヤだと、反射したレーザーがまぶしくて良くない。そこで最近使っているのが、ワイヤレスマウスだ。

 あまり知られていないようだが、たいていのPCはマウスを2台つないでも両方とも問題なく動作する(もちろん両方同時に別々の方向に動かすことはできない)。ワイヤレスなら教える相手のPCにレシーバーをプチッと挿せば、あとは隣の席からでもカーソルを“ジャック”できる。ファイル名やパスワードなどの入力、キーボードショートカットだけは口答で指示して入力させる。これでほとんどの操作は教えることができるのだ。教習所の自動車というよりは、飛行機の複座練習機といった感じである。

ワイヤレスマウスなら隣の席からでもカーソルを“ジャック”できる

 注意点としては、両者がマウスを持つと、カーソルが思わぬ動きをして混乱するので、「今どちらがマウスの主導権を握っているのか」が分かるようにしておくこと。「動かすよ」「どうぞ」といった簡単な言葉で十分だと思う。無線機の会話のように最後に「どうぞ」と言って相手に返すわけだ。

オススメはロジクールの「VX-N」

筆者お気に入りはロジクールの「VX Nano Cordless Laser mouse for Notebooks」

 筆者のお気に入りはロジクールの「VX Nano Cordless Laser mouse for Notebooks」(VX-N)だ。このマウスは普通のマウスとしても秀逸の完成度である。800dpiの高解像度レーザータイプで、横スクロールにも対応しているホイールは、クリック感のあるモードとフリー回転する高速モードを切り替えられる。ほかにも割り当てボタンも付いてる万能型で、比較的小柄な割にはホールド感抜群。操作範囲が10メートル程度と、距離が気になることはまずない。

 そして最大のウリでもある超小型レシーバーは、突出部分がたった8ミリ(実際にはもうちょっとだけ出るが)という他製品とは比較にならないほど小さい。ノートPCの場合、挿したままで閉じて移動することも十分可能だ。このレシーバーはマウス本体の内部に収納することができ、移動時など、邪魔にならず紛失しにくくなっている(本体外部にコバンザメみたいに張り付くレシーバーも邪魔だし、収納できないものやレシーバーがデカいのは論外だ)。

 このマウスにはPCを隣から操作する上で重要な隠れた便利機能が、本体の裏にある。レシーバーを挿しっぱなしにして移動することを前提にしているので、このマウスには、電源スイッチが付いているのだ。教える相手のPCにレシーバーを挿すと、ほとんどすべてのマウスは、ちょっとでも動かすと常にONになり、相手のカーソルを動かしてしまう。

 必要ないときについうっかりマウスを動かしてしまうと混乱の元だし、かといってそのたびにいちいちレシーバーを抜き挿しするのも面倒だ。このマウスならレシーバーを挿したままオフにできる。これ、教えるときには結構重要なポイントだったりする。

レシーバーは100円玉と同じくらいの大きさ。ノートPCにつけても気にならない

本体裏側には電源も。電池を入れるとこには、レシーバーの保管スペースもある

VX Nano Cordless Laser mouse for Notebooks
価格 オープンプライス(「ロジクールオンラインストア」の販売価格は9980円)
本体サイズ 61×98×34ミリ(幅×奥行き×高さ)
重さ 73グラム(バッテリー除く)/95グラム(バッテリー含む)
レシーバーサイズ 14.4×18.7×6.1ミリ
レシーバー重量 2グラム
カラー ブラック
解像度 800dpi
ボタン数 5(チルトホイールにも機能割り当て可能)
ホイール数 1
使用電池 単4電池2本
電池使用時間 約6カ月(使用環境によって異なります)
操作距離 レシーバー使用時、約10メートル
対応OS Windows XP/Windows Vista、Mac OS X 10.3.9以降

講演のライブ感をアップ、寝る人も減る

 ワイヤレスマウスは、ほかにもいろいろと便利だ。例えば講演などでプロジェクターにPCをつないだときに、会場設備が悪いと演者とプロジェクターの距離が遠くてPCが演台まで届かない、などということが残念ながらいまだに頻発する。こんなときに、スタッフの誰かにPCの近くにいてもらって目の合図でキーを押してもらうという方法も時々見るが、自分のペースで盛り上げられないし、どう考えてもこのIT時代にやるこっちゃない! と思う。

 もちろんプロジェクター用のロングケーブルを持参することは当然だが、それ以外にも、このマウスが1個あるだけでずいぶん心強い。PCまでが10メートル以内なら、演台でこのマウスを持っていればスライドの前後送りぐらいは自分の思うようにできるのだ。その場合は、左右のクリックぐらいしか使わないのだから、マウスパッドも不要だ。スライド送りのために演台に手をついてボタンを押している人も多いが、マウスを手に持って話をすれば、演台から離れて歩きながらでもスライドを送ることができるし、背筋を伸ばして聴衆に話しかけることができる。これだけでもライブ感がアップする(そして寝る人が減る)。

 と、いいことずくめの便利マウス。モバイラーならずとも1個持ってて損はない。きっとほかにも便利な使い方がまだまだありそうだ。ちなみに、10m以内の PCならジャックできるので、誰かのPCに挿しておけば全く離れたデスクから、相手のマウスの挙動を操れるのでとてもおもしろい。イタズラぐらいにしか使えないので推奨はしないが、自己責任の範囲で楽しんでいただきたい。

文具王からのお知らせ イベント<イロブンpresents「駄目な文房具ナイト」>開催!

 「セタガヤ・ブング・ジャム」の「イロブン」のきだてさん、他故壁氏さんと一緒に、またもやイベントを開催することになりました。今回は、きだてさんの「イロブン」メインの駄目な文房具大集合企画ですので、皆様のお仕事・ご学業には、まったく役に立たないこと請け合いです。

 駄目な文房具の紹介数では、おそらく今世紀最大のイベントになろうかと思います。(そして人気がなければ今世紀最後のイベントとなるかもしれません!)「生イロブン」をご存知の方も、そうでない方も是非ふるってご参加いただけることを願っております。

イロブンpresents「駄目な文房具ナイト」
概要 「ロボットに変形するボールペン」「ゼンマイ走行消しゴム」……使いやすい・便利であるのが前提なはずの文房具が、なんでこんなに駄目なのか!? 使うと頭がどんどん悪くなりそうな文房具の数々を写真と現物で大量に紹介するナイト。イロモノ文具コレクターきだてたくの解説に、TVチャンピオン“文具通選手権”3連覇の文具王こと高畑正幸と、文具メーカー勤務の文具マニア他故壁氏が文具ツッコミをギシギシといれるぜ!
日時 2月9日(土)開場18時 開演19時 21時終了予定
場所 お台場・東京カルチャーカルチャー地図:ゼップ東京2階、観覧車右横
前売券 1500円(飲食別)※ローソンチケットにて発売中!(Lコード【L:32352】)
当日券 未定
問い合わせ先 infotcc@nifty.com ※当日は03-3599-2390

著者紹介 高畑正幸(たかばたけ・まさゆき)

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 1974年、香川県生まれ。図画工作と理科が得意な小学生を20年続けて今に至る。TVチャンピオン「全国文房具通選手権」で3連覇中の文具王。現在は文具メーカーに勤務、文房具の企画開発を行っている。2006年「究極の文房具カタログ」上梓。文具サイト「TOWER-STATIONERY」を主催。


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